用途開発の事例

用途開発の成功事例5選!新規事業を生み出す、具体的な進め方を解説

2026.03.03

自社の優れた技術や素材をもっと広く活用できないだろうかと悩んでいませんか。既存市場での競争が激化する中で、多くの企業が新たな収益源を求めて「用途開発」に注目しています。しかし、実際にどのように進めればよいのか、具体的なイメージが湧かずに立ち止まってしまう担当者は少なくありません。

この記事では、用途開発を成功させるためのヒントを探している方に向けて、有名企業やBtoB企業の具体的な成功事例を5つ紹介します。事例から学べるポイントに加え、ゼロから用途開発を進めるための実践的な5つのステップや、失敗を避けるための注意点についても詳しく解説します。この記事を読み終える頃には、自社の技術を新たな市場へ展開するための明確な道筋が見えているはずです。

 

なぜ今、多くの企業で用途開発が求められるのか?

かつてのように良い製品を作れば売れる時代は終わり、現在は市場環境の急速な変化に対応しなければ生き残れない時代です。多くの企業が既存事業の延長線上だけでは成長を描けなくなっており、今ある技術資産を活用して新しい価値を生み出す「用途開発」の重要性がかつてないほど高まっています。ここでは、なぜ今企業がこぞって用途開発に取り組む必要があるのか、その背景にある3つの要因について解説します。

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既存市場の成熟による成長の鈍化

長年収益を支えてきた主力製品の市場が成熟し、売上の伸びが期待できなくなっていることが最大の要因です。国内市場においては少子高齢化による需要の縮小が顕著であり、海外市場でも新興国企業の台頭によって価格競争が激化しています。既存の顧客だけを相手にしていては、現状維持すら難しくなる可能性があります。そのため、今持っている技術やノウハウを、これまでとは全く異なる業界や顧客層に向けて提供し、新しい市場を開拓することが急務となっているのです。

技術革新の加速と製品ライフサイクルの短期化

デジタル技術やAIの進化により、技術革新のスピードが劇的に速まっています。これまでは10年かけて回収できていた研究開発投資が、わずか数年で陳腐化してしまうことも珍しくありません。一つの製品を用途開発によって複数の市場へ展開できれば、投資回収のリスクを分散させることができます。せっかく開発した技術を一つの製品で終わらせるのではなく、形を変えて様々な分野で使い倒すことが、技術投資の効率を最大化するためには不可欠です。

新たな収益源の確保と事業の多角化

企業の持続的な存続には、一本足打法からの脱却が必要です。特定の業界の景気変動に左右されない経営基盤を作るためには、複数の収益の柱を持つことが求められます。用途開発は、ゼロから新しい技術を開発する新規事業に比べて、既存の技術資産を活用できるため、比較的低コストかつ短期間で新しい事業の柱を構築できる可能性があります。既存事業のリソースを有効活用しながら多角化を進める手段として、用途開発は非常に合理的な戦略です。

 

有名企業の用途開発成功事例5選

具体的な事例を知ることは、自社の技術をどう転用できるかを考える上で最も参考になる教科書です。ここでは、用途開発によって新市場を切り拓いた5つの事例を紹介します。

日東電工:既存製品の新用途を開拓する「三新活動」

日東電工は、既存製品の新しい用途を開拓し、新技術・新機能の開発と組み合わせて新需要を生む考え方を「三新活動」として説明しています。展開例として、電気絶縁用途のビニルテープが、住宅や自動車など新たな顧客・業界へ需要を広げてきたことが示されています。

旭化成:生成AIで「新規用途探索」を効率化

旭化成は、既存材料や新材料の新たな用途候補を見つける「新規用途探索」を対象に、用途の自動抽出AIと有望候補を抽出する生成AIを開発したと公表しています。文献データから6,000以上の用途候補を考案し、ある材料では候補選別の時間を従来の約40%に短縮できたと記載されています。

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ダイキン工業:成長分野へフッ素の用途を拡大

ダイキン工業は化学事業において、半導体、ICT、新エネルギーなどの成長分野でフッ素の用途が広がっていると説明しています。新しい用途として、他素材との結合による新製品開発や、非フッ素素材の拡充も進め、産学連携や他社連携で市場開拓に取り組む方針が示されています。

三菱ケミカル:PVOHの新用途として掘削向け塞栓材などを提示

三菱ケミカルはPVOH(ポリビニルアルコール)について、環境ニーズに対応する素材として紹介しつつ、従来用途に加えて「シェールオイル・ガス掘削に使う塞栓材」といった新たな用途への活用が進んでいると記載しています。既存素材の機能を別領域へ展開する用途開発の具体例として確認できます。

住友化学:アドバンストアルミナの用途拡大(半導体製造治具など)

住友化学の技術資料では、アドバンストアルミナ「スミコランダム」について、セラミックス用途で半導体製造治具関係の用途が増大している旨が述べられています。具体的には、CVD、ドライエッチング、熱処理、腐食性溶液を用いる工程などで使われる部材への用途拡大が進む、と説明されています。

 

用途開発を成功に導くための具体的な5ステップ

成功事例を見ると、偶然の発見や天才的なひらめきが必要なように思えるかもしれません。しかし、用途開発には再現性の高い進め方が存在します。自社の技術を客観的に見つめ直し、市場と結びつけるための標準的な5つのステップを紹介します。この手順に沿って検討を進めることで、闇雲にアイデアを出すよりも遥かに効率的に、有望な用途を見つけ出すことができます。

手順1:自社技術の強みと可能性を棚卸しする

まずは、自社が持っている技術や素材が「何であるか」ではなく、「何ができるか(機能)」を言語化することから始めます。例えば「高性能なドリル」ではなく「硬い素材に正確な穴を開ける機能」と定義します。さらに、「熱に強い」「水に浮く」「電気を通さない」といった特性レベルまで分解してリストアップします。このとき、開発者だけでなく、営業や製造現場のメンバーも交えて多角的な視点で棚卸しを行うと、思わぬ強みが見つかることがあります。

手順2:ターゲットとなりうる市場のニーズを調査する

次に、視点を社外に向けて、世の中で解決されていない課題や伸びている市場のトレンドを調査します。環境問題、高齢化、労働力不足といった社会課題や、自動運転、IoT、ヘルスケアといった成長産業に目を向けます。ここで重要なのは、まだ自社の技術と結びつけようとせず、純粋に「市場が何を求めているか」を知ることです。競合他社の動向や、異業種のニュースリリースなどを幅広くチェックし、情報の引き出しを増やしておきます。

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手順3:MFTフレームワークで技術と市場を機能で繋ぐ

自社の技術と市場ニーズをマッチングさせるために有効なのが「MFTフレームワーク」です。これは、Market(市場)、Function(機能)、Technology(技術)の3要素を整理する思考法です。まず自社のTechnology(技術)から導き出されるFunction(機能)を定義し、その機能が価値を持つMarket(市場)を探します。あるいは逆に、Marketの課題から必要なFunctionを考え、それが自社のTechnologyで実現できないかを検討します。技術と市場を直接結ぶのではなく、「機能」という翻訳機を挟むことで、飛躍した発想が可能になります。

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手順4:Webサイトで技術情報を公開しフィードバックを得る

仮説としての用途が見えてきたら、あるいは用途が思いつかなくても、技術情報をWebサイトや専門メディアで公開してみることをお勧めします。技術のスペックだけでなく、「こんな課題を解決できる可能性があります」「〇〇の実験データがあります」といった応用可能性を示唆するコンテンツを発信します。すると、その課題を持ったユーザーの方から検索エンジン経由で問い合わせが来ることがあります。これを「インバウンド型の用途開発」と呼び、自社では思いつかなかった用途を顧客が教えてくれるケースは非常に多いです。

手順5:試作品で市場の反応を素早く検証する

有望そうな用途が見つかったら、時間をかけて完璧な製品を作る前に、簡易的な試作品(プロトタイプ)を作成して顧客の反応を見ます。用途開発はあくまで仮説から始まるため、実際に顧客に使ってもらわなければ本当の価値は分かりません。最低限の機能を持ったサンプルを提供し、「使い勝手はどうか」「価格は適正か」「他にどんな機能が欲しいか」といったフィードバックを早期に得ます。このサイクルを素早く回すことで、大きな失敗を防ぎながら製品の完成度を高めていくことができます。

 

用途開発で陥りがちな3つの失敗パターン

用途開発は魅力的な戦略ですが、やり方を間違えると時間とコストを浪費するだけで終わってしまうこともあります。多くの企業が陥りやすい典型的な失敗パターンを3つ紹介します。これらを事前に知っておくことで、プロジェクトが迷走するリスクを大幅に減らすことができます。

技術起点で顧客の課題を無視してしまう

最も多い失敗は、「うちの技術はすごいから売れるはずだ」というプロダクトアウト(作り手視点)の思考に固執してしまうことです。どれだけ高度な技術であっても、顧客の困りごとを解決していなければビジネスにはなりません。技術の優秀さをアピールするのではなく、「顧客にとってどんなメリットがあるか」という視点が欠落すると、独りよがりの製品が生まれてしまいます。常に「誰の、どんな課題を解決するのか」を主語にして考える癖をつける必要があります。

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既存事業との衝突を恐れてしまう

新しい用途を開拓しようとすると、既存の主力事業と顧客が重なったり、社内のリソースを奪い合ったりすることへの懸念が生じることがあります。社内政治を気にして思い切った提案ができず、当たり障りのない用途案に留まってしまうケースです。しかし、既存事業を守ろうとして変化を拒めば、いずれ外部の競合他社に市場を奪われることになります。カニバリゼーション(共食い)を恐れず、会社全体としての成長を優先する経営判断や組織風土が求められます。

探索範囲を狭く限定してしまう

「うちは自動車業界の会社だから」といった固定観念に縛られ、近い業界の中でしか用途を探さないことも機会損失につながります。真のイノベーションは、遠く離れた異業種との組み合わせから生まれることが多いです。業界の常識を疑い、全く関係がないと思われる医療、食品、農業、宇宙といった分野にも視野を広げることが重要です。自分たちの業界地図だけで考えず、広く社会全体の課題に目を向ける柔軟性が成功の鍵を握ります。

 

新たなビジネスチャンスを掴むための重要な視点

最後に、用途開発を単なる一時的なプロジェクトではなく、持続的なイノベーションのエンジンにするために必要な視点をお伝えします。技術と市場のマッチング作業を超えて、組織としてどのような姿勢で取り組むべきか、心に留めておいてほしいポイントです。

顧客自身も気づいていない潜在ニーズを探る

顧客に「何が欲しいですか」と聞くだけでは、既存製品の改良版しか出てこないことが多いです。顧客自身も、まさかその技術で自分の課題が解決できるとは思っていないからです。現場観察や対話を通じて、顧客が諦めている不便や、当たり前だと思って我慢している工程を発見することが重要です。「そういえば、ここには困っていたんだ」と顧客に気づかせるような提案こそが、大きな付加価値を生み出します。

失敗を許容し小さく試す文化を醸成する

用途開発は「千三つ(せんみつ)」と言われるほど、多くのアイデアを出しても成功するのは僅かです。一度や二度の失敗で評価が下がるような環境では、社員は挑戦を避けるようになります。失敗は「この用途ではなかった」という貴重なデータが得られた成功の一歩であると捉え、小さく安く数多くの実験を行うことを称賛する文化が必要です。経営層やリーダーが率先してこのマインドセットを持つことが、現場の活力を引き出します。

社外の専門家や他社の知見を積極的に活用する

自社の中だけで考えていても、知識や発想には限界があります。技術コーディネーター、大学の研究者、異業種のパートナー企業など、外部の専門家の知見を積極的に取り入れる「オープンイノベーション」が有効です。自分たちにとっては当たり前の技術でも、外部の人間から見れば「魔法のような解決策」に見えることがあります。社外との接点を増やし、客観的な意見をもらう機会を設けることで、用途開発のスピードと質は格段に向上します。

 

まとめ

本記事では、既存技術を新たな市場で活かす「用途開発」の成功事例や実践的な手順、失敗を避けるための注意点を解説しました。

  • 自社技術を「製品名」ではなく「機能・特性」として定義し直し、市場ニーズと照らし合わせる
  • MFTフレームワークを活用し、技術と市場の間に「機能」という翻訳機を介して発想を広げる
  • 完璧を目指さず、試作品を用いた早期の市場検証(プロトタイプ検証)でリスクを最小化する
  • Webサイトでの技術情報発信や外部専門家の知見を取り入れ、自社にない視点を補完する
  • 既存事業とのカニバリゼーションを恐れず、全社的な成長を優先する組織風土を醸成する

自社の技術資産に眠る「新たな価値」を掘り起こし、次なる収益の柱を構築するための第一歩を踏み出しましょう。

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