(アメリカの最新プロダクトマネジメントメソッド Continuous Discovery 継続的市場探索メソッドを体系化した、テレサ・トーレス)
新規事業_インタビューでググると、必ずと言っていいほど。
と出てきます。
確かにある意味そうなのですが、この言葉が放言(さかしげに言葉を言い放っただけ)
そのうちの典型例が、相手の欲しいものをストレートに訊いてしまうというものです。
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顧客の欲しいものを訊いてはならない
典型的なNG質問
顧客インタビューでしばしば頂く、典型的なNG質問とは、こんなものです。
この2つの質問があまり有効ではないことを指摘するには、ジョブズの有名な言葉を引けば足ります。
お客様に何が欲しいかをただ尋ねて、それをそのまま提供しようとしても上手くいかない。製品が完成する頃には、彼らが欲しいものは、すでにもっと新しい何かに変わってしまっている。
このジョブズの名言は、別の、もっと有名な名言
とまとめて、
と意訳されることが多いのですが、それははっきりと誤訳です。
顧客は、この、科学的に定義不能な曖昧な用語「ニーズ」の裏にある
は、明確に自覚している/していないの差はあれ、誰よりもよく知っているからです。
太古の昔、人類が火を発見したときのエピソードでこれを喩えてみましょう。火が登場する前の人間は、動物の中では、顎の力が弱く、消化器官も劣っていたため、一日中、生の食物を咀嚼していました。火が登場してから、食事の時間が圧倒的に短くなり、両手が使えることも相まって、食事以外の様々なクリエイティブな活動を行うことにより、大脳が異様に発達することになります。このとき、
などという、わけのわからない「潜在ニーズ」など、あったわけがありませんが、しかし、
はずですよね?したがって、太古の人類にとり、ジョブズのいう「見せられるまで分からなかった」ものとは、
のほうです。
要するに、「ニーズを知らない」のではなく、どんなプロダクトがあったらその自分のやるべきこと(ジョブ)を、よりスムーズに効率よくこなせるか、あるいは自分の期待を超えた何かが実現できるのか、が、想像の外にあるのです。
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もしFacebook創業時にこのNG質問が訊かれていたら
Facebook創業前に、それが製品としてデビューを飾ったハーバード大学の学生にインタビューを実施して、
このウェブサイトがほしいとしたら、1から10のリッカート尺度で何点ぶんほしい?
と訊いたとしましょう。おそらく、反応として、
という戸惑いと、適当に点数を付けた、いい加減きわまるスコアしか得られないことは、想像に難くありません。しかし、このときも、顧客である学生は、ニーズを知らないということはありえません。誰しも、久しぶりに会った友人知人とお互いの近況報告で盛り上がった経験が、少なからずあるはずだからです。
ここで想像してみると面白いケースをあげます。男子学生から、いまアメリカで大変な人気になっている OnlyFans のように、
が欲しいという要望がでてきた場合、ザッカーバーグ氏らは、いったい どうすればよかったのでしょうか……?
このタイプの質問で顧客の本音が出てくるものがあるとすれば、それは、製品化した後に、自社サービスのユーザーに対して問う
という、Eメールソフト Superhuman の創業者ラフル・ヴォーラ氏が考えた質問だけでしょう。
ポイント:企画されたソリューションに対する感想を最初から訊いてはならない
要するに、自分たちの念頭にあるソリューションを最初から前面に押し出して、その感想を訊くのはNG、ということになります。ほかのNG質問のパターンをあげてみたいと思います。
行動パターン把握インタビュー
新規事業開発の最初の段階では、自分たちのソリューションに対する感想を訊くよりもはるかに、顧客の行動パターンを把握する方が重要となります。
そのタイプのインタビューの中での、NG質問とOK質問をあげてみます。
典型的なNG質問
- ✖私たちが企画しているこの製品を、あなたなら、どのように使いますか?
- △この競合製品を購入する前に、どのような問題を解決しようとしていましたか?
①は、私が聞かれている側(インタビュー相手)なら、すぐにこう考えると思います。「いったい、なんで自分がそんなこと考えて答えなきゃいけないんだ?!」
②は、一見自分たちのソリューションを前面に押し出していないのでOKに見えますが、その実、その効果はそうとうに微妙といわざるをえません。あなたがiPhoneユーザーだったとして、「iPhone 16 を購入する前にどのような問題を解決しようとしていましたか?」と訊かれたと思ってください、一瞬、回答につまりませんか?
この質問が有効なのは、新規事業のアイデア段階フェーズにおいてでなく、自社サービス購入後の感想を訊くときなのです。(余談ですが、この二つの質問は、生成AIが「インタビューではこれをぜひ訊け」と推してきた質問なので、一般に正解とされているのでしょう…。)
OK質問
- 〇普段、どのような状況で、何が理由で、その特定の作業をこなさないといけないんでしょうか?
- 〇普段その作業は、どんなプロセスで、誰とどう関係しながら こなしていますか?段階に分けて説明してください
- 〇この競合製品(代替手段)の助けを借りて、普段どのようにお仕事をなさっていますか?
これらの質問により、顧客の「潜在的なニーズ」や行動パターンを把握し、新たな製品やサービスの開発に活かすことができます。
顧客の問題発見を発見する
上記の「行動パターン把握インタビュー」を実行するときに、
ということを突き止めるのが問題発見インタビューです。ここで肝要なのは、フォルスポジティブ(顧客の本音を自分に都合の良いように誤解すること)を誘導しないこと、です。
典型的なNG質問
- ✖ 現在使用している製品にどのような不満がありますか?
- ✖ 理想的には、どのような機能があれば助かりますか?
- ✖こんなことを不満に思ったことはありませんか?
①は、いま使っている製品に心の底から満足している顧客は少ないので、顧客から出てきたフィードバックは、「そこは修正しても大して嬉しくない」という、どうでもいい不満まで出てくる可能性があります。あなたが女性なら、スキンケア製品について考えると想像がつきやすいでしょう。
②はもっと致命的で、顧客は自分の問題そっちのけで、自分なりの、想像上の解決策を話し始めてしまうからです(その典型例が、上で取り上げた「推しのセクシーショット」です)。
③は、事実上、自社製品へのニーズを訊いているのに等しいです。明らかにこのインタビューアは、「そんな不満がある」と顧客に認めさせるために誘導しています。
顧客インタビューの大目的は、
ことであるということを忘れないで下さい。でなければ、ありもしない問題を問題と認識し、最終的に事業は失敗することになります。
OK質問
- ⚪︎ 普段その作業は、どんなプロセスで、誰とどう関係しながら こなしていますか?段階に分けて説明してください
- ⚪︎そのプロセス上のどこで、どのようなストレスを普段感じていますか?
うまいインタビューを有効に実践する方法:Continuous Discovery
要するに、最初から自分たちのソリューション案を見せて感想を尋ねるやり方では、顧客の本当の行動も、そこで生じている切実な問題も見えてきません。必要なのは、「どんな機能が欲しいですか?」と尋ねることではなく、顧客が普段どんな状況で、どんなプロセスをたどり、どこで面倒やストレスを感じているのかを、ファクトベースで聞き取ることです。
しかし、ここで多くのチームが次の壁にぶつかります。インタビューで顧客の行動や問題を聞き出せたとしても、それをどう整理し、どう仮説に変え、どう継続的に検証していけばよいのかが分からないのです。
この問題に対する、いま最も有力な実務上の答えが、Continuous Discovery Habits(継続的市場探索)です。顧客との対話と小さな検証を継続しながら、市場機会を見つけ、Opportunity Solution Tree(オポチュニティ・ソリューション・ツリー)で仮説を整理していく方法です。単発の「顧客の声集め」で終わらず、売れるプロダクトに近づくための具体的な進め方を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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イントラプレナーとして、合計8つの新規事業開発を経験。1,300回に及ぶ顧客インタビューの実施経験を持つ。生成AIによるアイディエーションの世界初のサービスである、「AIディアソン」を、2023年の1月に上梓。それ以降も次々とAIサービスをローンチしている。
翻訳書の発行される前の版の、The Four Steps to the Epiphany (邦訳「アントラプレナーの教科書」、リーンスタートアップの下敷きになった本)を所持するほど、古くから事業開発の方法論を考究。最近はアメリカで最新とされるプロダクト開発のメソッドである、継続的発見(Continous Discovery)手法を取り入れ、エフェクチュエーションと組み合わせて事業開発に応用。
