ビジネスにおける「顧客の声」をどう聞くべきか?エキスパートインタビューの功罪

エキスパートインタビュー

ビジネスにおける「顧客の声」をどう聞くべきか?エキスパートインタビューの功罪

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イントロダクション「この事業は売れませんよ」と有識者はいった

私はそのエキスパートのご意見を伺って、ショックを受けました。

その方は、日本では知る人ぞ知る事業を自ら3つも起ちあげた、大企業の自社の中で新規事業開発のメンター的な立場にいらっしゃる、50代の大ベテランでした。

私はその当時、製造業が要素技術の情報を入力すると、その技術を意外な業界における事業アイデアにころりと転換するツール、AIディアソンのプロトタイプを作成したばかりで、様々な事業開発者のご意見を伺うインタビューを行なっていたのです。

これは日本の事業開発者には売れませんよ、アメリカに売りなさい

その方は断言なさいました。

この断言の理由づけについてはここに述べることはできませんが、きっぱりした口調はよく覚えています。最初のお客様からいただいた、ありがたいフィードバックから、AIディアソンの出来栄えに少しばかり自信があった私は、当然、凹みました。

その後どうなったか?

AIディアソンは、2年足らずの間に、なんと28ライセンスも売り上げるヒットを記録しました、エキスパートに売れないと保証されたにも関わらず。

ビジネスや研究開発、新規事業の開拓、マーケティングなど、迅速かつ的確な情報収集が求められる現代において、

エキスパート(有識者)インタビュー

は有効な手法として知られています。

しかし、市場の情報を探している事業開発者にとって、それが「百害あって一利なし」になってしまうケースもままあるのです。

本記事では、エキスパートインタビューの基本から、実際の活用法、そしてその限界、陥りやすい罠について掘り下げていきます。

 

エキスパートインタビューとは

エキスパートインタビューとは、特定の分野において深い知識と豊富な経験を持つ専門家、いわゆる有識者に対して行うインタビューです。これは、従来の情報収集方法では得難い信頼性の高い情報を、迅速に得られる点が魅力です。

新規事業の構想段階や、サービスのマーケティング戦略の検討などにおいて、一定の示唆を与えてくれることがあります。

ただし、注意すべきは、冒頭の例で見た通り、

専門家の知識が、常に市場全体のニーズを代弁しているわけではない

という点です。

(この記事末尾の「あわせて読みたい」に挙げた記事に書いた通り、私は「ニーズ」という言葉が好きではありませんが、この記事では、わかりやすさを優先しています。)

たとえば、自らインタビューを多数実施したこともない専門家が語る「市場の声」は、あくまでその人個人の経験に基づいた仮説でしかありません。

 

エキスパートインタビューの種類/活用シーン

エキスパートインタビューには2つの種類があります。この二つをくれぐれも混同なさらないことをおすすめいたします。

カテゴリー1 技術情報の収集

  • 自社がある技術領域に進出しようとするさいの、情報収集。
    例:東大の松尾教授に、AIを使用した新サービスを構築する際の、気をつけるべきことを伺う。
  • 新規事業の、共同開発先の意見を収集する。
    例:自動車メーカー✖︎通信事業者で5Gを搭載した、over the air (無線通信)でソフトをアップデートする車を開発しようとするとき、自動車メーカーが、通信事業者の専門家の意見を聞く。
  • ある要素技術を開発しようとしているメーカーが、それを利用して最終商品を組み立てる事業者に、専門家としての意見を聞く。

この場合の、エキスパートインタビューには、以下のようなメリットがあります。

  1. タイパが良い
    あるテーマに関して大量のドキュメントを読み込むよりも、短時間で要点をつかむ助けになります。
    ただし、この点は、生成AIをうまく使いこなせれば、ある程度までは代替が効きます。
  2. ウェブから得られる情報に比べ、はるかに信頼性が高い
    ウェブ上の情報は玉石混交で、その真偽を見定めるには、そのジャンルのリテラシーが必要になります。また、技術の最新中の最新の情報は、えてしてウエブにはまだ載っていないものです。
    この意味で、生成AIが教師データとして食べるデータもまた、最新でかつ正しいものとは限りません。その上、生成AIはでっち上げの名人です。
  3. 聞き込みを行う人数が少なくて済む
    新規事業開発の顧客インタビューだと、少なくても30人の顧客の聞き込みをしない限りは、有効な洞察が得られないとされます。
    (麻生要一氏など、桁が違う、300人は必須だと厳しく指摘しています。)
    ところが技術のエキスパートインタビューなら、せいぜいが数人の「セカンドオピニオン」を聴き込めば信頼性の高いデータが取れるでしょう。

 

カテゴリー2 市場情報の収集

新製品やサービスを検討する初期フェーズで、業界構造や過去のトレンドを俯瞰するのに、まずは数人ばかり、その業界の専門家に聞き込むことは、顧客に対するヒアリングの方向性を決めるときに、有効に働くことがあります。

特に、医療や農業のようにステークホルダーが多い、中の仕組みが複雑な市場を分析するときは、ベテランの知見が重要なヒントを与えることも多々あります。

しかし、ここで重要なのは、

決してその意見を鵜呑みにしないこと

です。その理由は、主に2つで、そのほかの原因も含め、下記で詳細に分析します。

  1. エキスパートが提供する情報は、その多くが「その人によって解釈された顧客の声」にすぎず、実際の生活者やエンドユーザーの一次的なニーズとは異なる可能性がある
  2. エキスパートの意見ほど、専門家の現状維持バイアスに満ちていて、未来に関して間違った観測をしていることがままある

事業開発初期においては、「顧客の痛み(ペイン)」や「顧客の具体的な行動パターン(ジョブ)」を直接聞き出すことが成功のカギになり、聞き込みを行う人数は、統計学上、最低でも30人を上回らないと有効とはいえないことがわかっています。([出所] 阿佐見綾香 著, 「電通現役戦略プランナーのヒットをつくる『調べ方』の教科書」, PHP研究所刊)

 

エキスパートインタビューの限界

エキスパートインタビューには、以下のような限界があります。

限界その1. エキスパートほど、現状維持バイアスの虜である

私の友人の、ある大手コンサルファーム出身のマーケットリサーチの専門家は、コンサル時代は自動車業界が専門だったそうですが、自分の上司が、テスラが世に現れたときに、それを笑いとばしたのに愛想をつかして退職したそうです。

そしてなんと、その上司は、のちにそのコンサルファームの社長になったのです。このことだけで、

その道のプロを名乗る有識者の言葉が必ず当たるという確信だけは持ってはいけない

と言うことがお分かりになるはずです。

 

大レコード会社に落とされた伝説のバンド

1962年、リバプールの4人組バンドが、デッカ・レコードのオーディションに挑みました。彼らの名はビートルズ。

しかし、デッカの重役は

ギター・グループは消えゆく運命だよ、君たち

と断言し、彼らを落としてしまいました。

想像してみていただきたい。もしビートルズが彼らの意見を鵜呑みにし、なんせエキスパートのいうことだからあきらめようとなっていたら、私たちは生田の名曲を聴くことができなかったかもしれません。

ビートルズが世界を変えた7つの偉業を立てる前に、彼らはまず「エキスパートの壁」を突破しなければならなかった、というわけです。

 

「iPhoneなんて日本で売れるわけない」という大合唱

2008年、iPhoneが日本に上陸した時、国内の携帯電話メーカーの反応は冷ややかでした。「日本の携帯も十分に多機能だ」と、彼らは口を揃えて言いました。

日本のユーザーには使いにくいとされた、具体的な理由は以下の通りです。

キーボードがついていない・ワンセグや絵文字、FeliCaがついていない・片手で使えない

……今となっては全くどうでもよい、欠点とは言えない欠点ですよね……

某ガラケーメーカーの通信システム事業本部長は

日本の携帯電話の文化として、メールを使う文化がある。ユーザーにとってもメールが使いやすいかどうかがケータイを選ぶポイントになっている。
そのため、日本ではキーボードが必須である。
これまで当社が培ってきたユーザーインタフェースと、進化した新たなインタフェース技術を組み合わせることで、iPhoneには太刀打ちできると考えている

と、自信たっぷりに語りましたが、結果はどうだったでしょうか?

 

「愚行」と専門家にバカにされた、金融業界の大イノベーション

あなたも、一度くらいは「ヴァンガード社」という会社名を聞いたことがあるかもしれません。

いまでこそ、S&P500のインデックス投資は世界中で当たり前になっていますが、その始まりは決して順風満帆ではありませんでした。

ヴァンガード社のボーグル氏が世界で初めてインデックスファンドを考案した当時、伝統的な証券会社や金融業界の有識者たちはこぞって

「そんな商品アイデアは筋が悪い」
「投資家に返金したほうがいいのでは?」

と、小ばかにし、「ボーグルの愚行」として酷評したのです。

当時の投資業界の「有識者」にすれば、

「平均的なリターンで満足するのは間違いだ」
「最高のリターンを目指すのが投資の本質だ」

というのが、業界をあげての常識だったのです。

実際、最初のインデックス投資はわずか1,400万ドルしか集まりませんでした。

しかし、設立から1年後には運用資産が10億ドルを突破、今やインデックス投資は世界中の投資家に広く受け入れられ、投資の世界でヴァンガードを知らない者はいなくなってしまいました。

想像してみてください、あなたがインデックス投資を考えついたとして、その当時の投資の専門家に、エキスパートインタビューで

このインデックス投資というスキームは成功するでしょうか?

と尋ねる光景を。

……ぞっとしませんか?

 

SPOTIFYの登場:ナップスターの二の舞?

2006年、音楽ストリーミングサービスのSpotifyが登場した時、多くの投資家は懐疑的でした。その理由は、二つ。

  1. 「レコード会社の状況はさらに深刻化していた。 (中略)音楽業界全体で見れば、1年で約10億ドルの減少が続いている。」
  2. ほんの数年前に起こったナップスターのスキャンダラスな失敗。

ナップスターに投資をつけたVCたちは、音楽業界との著作権問題で大きな損失を被り、業界内で馬鹿にされていました。

そのため、Spotifyの登場時、多くの投資家はまた同じ轍を踏むのかと冷ややかな目を向けたのです。

しかし、Spotifyの創業者ダニエル・エクは、過去の失敗から学んでいました。

彼は、音楽業界との協力関係を築き、合法的なビジネスモデルを構築することに成功、ついには音楽業界の不況すら立て直してしまいました。

結果として、Spotifyは音楽ストリーミング市場のリーダーとなり、音楽産業に革命をもたらしました。かつてナップスターに投資して失敗したVCたちを馬鹿にしていた人々は、今度は自分たちが時代に取り残されることになったのです。

[出所] スベン・カールソン、ヨーナス・レイヨンフーフブッド 著, 「Spotify――新しいコンテンツ王国の誕生」, ダイヤモンド社刊

 

なぜこれほどまでに、エキスパートの意見は、的外れになるのでしょうか?

それは、エキスパートであればあるほど、

「市場はこのままであり続けていくだろう」という、実は全く無根拠な現状維持バイアス

の犠牲になるからです。

 

限界その2. 有識者の、無意識な、極端な一般化

なぜか忘れ去られがちな、しかも重要な注意点の一つは、インタビュー対象者である専門家自身が、顧客インタビューの実践者でない限り、彼ら

有識者の「市場観」は、個人の解釈の域を超えない

と言うことです。

例えば、技術系のエキスパートが「この機能は顧客に喜ばれる」と断言しても、それはあくまで彼の会社の常識、彼の思い込みにしかすぎず、多くの顧客の声を代弁している保証はどこにもありません。

冒頭の例で言うと、確かにそのエキスパート氏が勤務している会社にはAIディアソンは売れる見込みがなかったでしょうが、この方の錯誤は、

自分が勤め上げてきた企業が全日本の製造業の、疑いもなく典型例である、うちみたいな企業以外は例外中の例外だ

と、極端な一般化をしてしまったことにあります。

この「疑いもなく」の部分が、実は、大いに疑ってかかるべき無根拠な部分であるわけです。

 

人は誰しも、自分の身の回りで起こった出来事、あるいは自分がたまたま見聞きした事象から結論を引き出し、その結論を一般論化してしまいがちだ。
たとえば以下のような発言を、日頃よく耳にすることと思う。
「私の周りにいるO型の人は、 みんなアバウトな性格だ。O型の人間がずぼらな性格だというのは、本当によく当たっている」
「去年うちの課に一時配属されたYは、A大卒を鼻にかける嫌な奴だった。今年配属されてきたA大出身のZも、さらにいけ好かない奴だ。 A大出身者は本当に嫌な奴ばかりだ」
問題なのは、こうしたステレオタイプなものの見方をいったんしてしまうと、その考えを打ち消すような情報には目が向かず、その考えを強めるような情報にのみ目を向けしてしまいやすいことだ。
[出所] グロービス経営大学院 著, 「グロービスMBAクリティカル・シンキング」, ダイヤモンド社刊

 

エキスパートが語る市場の動向は、マクロな視点での分析には役立ちます。

しかし、「その戦略で本当に商品が売れるのか?」という最終判断を下すには、やはり、最低でも30人の、実際の顧客の行動をつぶさに見る必要があるのです。

 

限界その3. インタビューの報酬がエキスパートの意見を歪める

報酬が発生している場(例:ビザスクなど)では、有識者もインタビューアの「メンツ」を保つ方向に話合わせがちであり、耳触りの良い情報ばかりが提供される傾向があります。

また、有識者が「評価されている」と感じると、反射的に「良い反応」を返そうとしてしまう心理的メカニズムが働きます。

例えば、事業開発者の「このようなニーズは市場にはあるでしょうか」という質問に対し、何万円も報酬をもらっているエキスパートが、

そんなニーズなど、とことんありません

とズバリとは答えにくいので、多少なりとも、言葉を濁すはずです。

その結果、

有識者は「顧客は買うはずだ」と保証したにもかかわらず、顧客は実際には購入しない要因

そんな最も重要と言えるギャップが、エキスパートインタビューでは、しばしば出てこないのです。

 

限界その4. エキスパートをインタビューに連れていくことなかれ

インタビューでの口約束をさんざん購入する/しないの土壇場でさんざんひっくり返された方の中には、

その道の専門家を顧客のところに連れていくという、「エキスパート『による』インタビュー」

を考えつかれる方がまれにいらっしゃいます。

これも、残念ながら、NGです。

専門家の同行や、肩書きを強調した形式のインタビューでは、インタビューイの内心に

そんな専門家が隣にいるのに、なんでまた私のところに訊きに来たのだ?

という心情が生まれ、別の意味で本音が引き出せなくなるからです。

 

エキスパートインタビューの進め方

ここでは、主に「カテゴリー2 市場情報の収集」を行うためのエキスパートインタビューの進め方を、ステップ バイ ステップで説明していきます。

この種のエキスパートインタビューの必勝法は、以下のような立て付けにすることです:

本格的な顧客インタビューの前段階で、あくまでインタビューの方向性を決めるために、有識者に市場の構造を教えてもらう

ここでは、ぴんときていただきたいので、

ある機械的な新技術を用いて、急性期の入院患者のリハビリテーションを効果的に進めるためのツールを開発したい

という想定の具体例を用いて、エキスパートインタビューを進める手順を説明していきます。

 

最初にすべきこと:業界のステークホルダーの分析

最初にすべきは基礎をかためることです。

まずはビジネスモデルキャンバスを描き(描き方は「あわせて読みたい」に挙げた記事が解説)、このビジネスの中で誰がどのような動きをとるはずなのか、頭の中をクリアにします。

私が造った「ステークホルダーキャンバステンプレート」を用いて下さってもかまいません。

https://www.slideshare.net/slideshow/v10pptx/253828624

リハビリテーションツールのビジネスでは、これらキャンバスの中に、

ユーザーである理学療法士(PT)/作業療法士(OT)/言語聴覚士(ST)などのみならず、「患者」「患者の家族」「患者の契約している保険会社」「医者」「看護師」「看護助手」「ケアマネジャー」そして忘れがちな「厚生労働省」

が複雑に絡んで登場してくることがすぐにわかります。

同時に、このインタビューで、できればこれらすべての職種にあたっておくべきだ、ということも見えてきます。

 

インタビュー対象者(インタビューイ)の募集

ステークホルダーキャンバスの中から、直接のユーザーに当たるプレイヤーを、最初のインタビュー対象者として選びます。

リハビリツールであれば、PT/OT/ST、2,3人にお声がけをします。なるべく業界に長くいるベテランで、できれば互いに専門領域が異なるほうがいいでしょう。

リハビリツールのように複雑な人間関係がないタイプのビジネスの場合、自称専門家に、ざっくりと「そのビジネスに需要があるか」を聞き取りたくなるかもしれません。

その場合、聞き取り相手を選ぶためには、以下のような視点でフィルタリングするのがおすすめです。

  • ☑ 長年、実際にその市場で事業を行っている
  • ☑ 多くの関係者、顧客の意見を聞いた経験がある
  • ☑ その領域でビジネスを展開し、手痛い失敗をしたことがある

 

インタビューの実施

初期のエキスパートインタビューでは、ステークホルダー同士の関係を浮かび上がらせることに注力します。

とくに大切なのは、以下を見定めることです。

  • 対価の支払い手は、ステークホルダーのうち誰なのか?
  • 製品を使うかどうか決めるのは、誰なのか?

リハビリツールであれば、

  • 患者の家族と保険会社が支払い手になるであろうこと
  • 製品を現場で使うかどうかを決めるのは、医者の判断が特に重要であること、ケアマネジャーは事後承認

が浮かび上がってきます。

そうしたら、ここで聞き取り対象を、患者の家族と、医者に移さないといけませんね。

そこでプロセスは上の「インタビューイ募集」に戻ることになります。

 

特に顧客の心理や行動について尋ねる場合は、専門家の意見がバイアスに満ちていないか、常に問い直す姿勢が求められます。英語でいう、

What makes you think so? /いったい何がきっかけであなたはそう考えるようになったのか?

という質問が、インタビューの深堀では有効です。

また、NLPでいうところのいわゆる「メタモデル質問」、

あなたのおっしゃる「この業界では『みんな』そう思っている」の『みんな』というのは、具体的には誰と誰と誰のことでしょうか?

も、エキスパートインタビューではフル活用したいものです。この質問は、上記の思い込み「極端な一般化」を、白日のもとにさらすことがあります。

そしてその回答は、

他人の心理状態に関する、その人個人の単なる感想

になっていることを忘れてはいけません。

テレパシストででもない限り、誰にも他人の心理の奥底などわかるはずがないのですから……

 

インタビュー後のデータ分析と活用

インタビュー後の分析では、得られた発言をそのまま鵜呑みにするのではなく、「これはエビデンスか、それとも解釈か?」を区別しながら構造化する必要があります。

昨今ではここで生成AIがフル活用できるでしょう。

 

エキスパートインタビューを成功させるためのポイント

対象者の選定とリクルーティングの際の心構え

何度も書きましたが、我々は、この有識者のご意見を顧客の声の大代表として扱わない、あくまで参考意見だ、という心構えが何より大事です。

気をつけましょう、あなたは、

  • 結果としてV字回復をもたらした日本マクドナルドの施策を、「なにをやりたいのかわからん」とさんざん嘲笑した外食産業のエキスパートたち
  • サイレント映画全盛の時代に、「誰が音の出るフィルムなんか見たいんだ」と、ワーナー・ブラザースが導入したトーキー(発声映画)を馬鹿にした、ほかの映画会社の経営陣
  • Airbnbのことを、創業時ははなも引っ掛けず無視したホテル王デビット・コング

のような「有識者」をインタビューしようとしているかもしれないのです!

自分のキャリアを針小棒大に吹聴しながら、「食い気味に」応募してくるインタビューイには、とくに気をつけましょう。

また、肩書きや知名度ではなく「その人がどのような顧客接点を持ち、何を見てきたか」に注目しましょう。

例えば、Jリーグのチェアマンが、必ずユース選手の育成現場に精通している、という保証はどこにもありませんし、オフサイドの厳密なルールも、おそらく知らないでしょう。

 

有益な Q&A

  • 「顧客がどう考えたか、感じたか」ではなく、「顧客がどう行動したのをどんな状況で見たのか」にフォーカスする
  • 「絶対」「必ず」「きっと」が出てきたら、その発言に下線を引いて、怪しいとマークする
  • 「いくらだったら買いますか?」とは聞いても参考意見程度にする、必ずと言っていいほど裏切られるため

 

インタビュー中のコミュニケーションスキル

エキスパートが語る内容を、仮説の一つとして受け止めつつも、相手が気分を害さないようにバランスを取ることが大切です。

気分を害した人間はしばしば貝のように黙り込むからです。

エキスパートがあなたの事業アイデアを遠慮なく こきおろす状況が造れたら、あなたもインタビューアとして一人前、ということになるかもしれません。

 

まとめ:エキスパートインタビューの価値と今後の展望

エキスパートインタビューは、あくまで「補助的な情報源」として活用する限りにおいては、今後も価値ある手法として機能する可能性があります。

ただし、新規事業開発において顧客の痛みやジョブを直接捉えるべき領域では、その情報の限界を理解することが不可欠です。顧客インタビューを置き換えるものでは決してありません。

その、肝心かなめの顧客インタビューのやり方を、実践マニュアル化しました。

顧客インタビューマニュアル

顧客インタビューマニュアル

今後は、生成AIとエキスパートインタビュー、そしてプロブレムインタビュー(よろず相談会)を組み合わせた「ハイブリッドな探索型仮説検証」がスタンダードになる可能性があります。

 

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