製造業において、顧客の声を製品開発や営業戦略に活かすことは、企業の成長に不可欠です。その最も効果的な手段の一つが「顧客ヒアリング」です。しかし、ただ闇雲に話を聞くだけでは、本当に価値のある情報を引き出すことはできません。本記事では、製造業の担当者が顧客ヒアリングを成功させ、具体的な成果に繋げるための準備、実践的な質問項目、そしてヒアリング後の活用法までを体系的に解説します。
目次
そもそも顧客ヒアリングとは何か?
そもそも、「顧客ヒアリング」という言葉、和製英語であって、英語では Hearing とは言いません。語の定義とその違いにはたいした意味はありませんが、新規事業開発などの現場で、以下の「インタビュー In-depth interview」と「ヒアリング Discovery call」がごちゃごちゃに語られることで現場に混乱をもたらしている現状があり、一度整理しておきましょう。
| 英語 | (和製)英語 | 主な目的 | マインドセット | 具体的なアクション |
| In-depth interview (IDI) | インタビュー | 発見・深掘り (Why?) |
「相手も気づいていない本音や文脈を探りたい」 | ・相手の回答に対して「なぜ?」と深掘りしていく ・仮説検証やインサイト発掘 ・形式張った取材やユーザー調査 |
| Discovery call | ヒアリング | 確認・聴取 (What?) |
「相手が欲しいものや現状の条件を正確に把握したい」 | ・要望、仕様、予算、スケジュールの聞き取り ・現状の課題リストの回収 ・営業や要件定義の初期段階 |
製造業で顧客ヒアリングが重要視される理由
現代の製造業において、顧客ヒアリングは単なる情報収集の手段にとどまりません。プロダクトライフサイクル(一つの製品カテゴリが栄枯盛衰をたどる時間)が劇的に短くなり、顧客が望むものに対するアプローチが多様化する(「顧客のニーズが多様化している」という、科学的に意味をなさない表現は、このブログでは使いません)中で、企業の行く末を左右する重要な、戦略的な活動と位置づけられています。
なぜ、これほどまでに顧客ヒアリング--ここではより上位の概念として「聞き取り調査」という言葉を提案させていただきますが--が重要な活動なのでしょうか。その本質的な理由を掘り下げていきます。
【関連記事】生成AIをフル活用した新規事業インタビュー実践マニュアル – 2025年最新版版
世界初:聞き取り調査(顧客ヒアリング/インタビュー)の体系化
まずは、おそらく世界初となる、特に新規事業開発に関連する、この種の顧客の意向を聞き取る調査活動の体系化を行います。私は顧客インタビューを類型で少なくても1,300回は繰り返した事業開発者であり、その知識と経験を体系化して、「標記貴出願 特願2025-165649 「情報処理装置、及びプログラム」」という特許を出願していますが(2026年1月時点で審査中)、その特許に書かれているメソッドは、この体系に基づいています。
| カテゴリ | サブカテゴリ | 実行フェーズ | 実行すること | |
| 1. Expert Interview/エキスパートインタビュー | 顧客発見初期 | 市場/技術のエキスパートに、
市場の概要や技術の用途を確認 |
||
| Discovery Interview | 2. Business Ethnography/ビジネスエスノグラフィ | 顧客発見初期 | 顧客と同じことをやってみる
顧客の行動を観察 |
|
| 3. JTBD Interview (Jobs To Be Done)/ジョブインタビュー | 顧客発見初期 | 顧客の「前回とった行動」および、その行動の意図を聞き取る | ||
| 4. Problem Interview/問題インタビュー | 顧客発見初期 | JTBD実行時、顧客の行動の「盛って回ったところ」「第三者から見て(も)『かったるい』ところ」の問題点を同定 | ||
| 5. Validation Interview/ソリューションインタビュー | 顧客発見初期 ~PMF |
製品(企画)に関する、感想を訊く | ||
| 6. Usability Testing/ユーザインタビュー | MVPローンチ後 | 製品の使い勝手を聞く
マジックミラー越しに使うところを観察 |
||
| 7. Exploratory Interview/マーケ目的の聞き取り調査 | 顧客創出以降 | 製品の魅力を誰にどう訴求すべきか?を確かめるインタビュー | ||
※このほかにも、例えばフォーカスグループインタビューといった手法もありますが、カテゴライズの基準、次元が異なるため、わざと記入していません。
「ヒアリング」という和製英語は、下表でいう、「2. Business Ethnography/ビジネスエスノグラフィ」と、「7. Exploratory Interview/マーケ目的の聞き取り調査」を除くすべての領域で使用されるようなので、この記事では
という定義で話を続けます。
【関連記事】ビジネスにおける「顧客の声」をどう聞くべきか?エキスパートインタビューの功罪
顧客ヒアリングの目的1:顧客の「潜在的ニーズ」を正確に把握するため
この目的は、上の表でいう「3. JTBD Interview (Jobs To Be Done)/ジョブインタビュー」・「4. Problem Interview/問題インタビュー」での目的と考えてください。
顧客が明確に言語化できる要望は、多くの場合、すでに競合他社も認識している顕在的なニーズです。しかし、市場をリードする革新的な製品やサービスは、顧客自身も気づいていない
に応えることから生まれます。
ただし、この潜在的ニーズ???なる謎の用語には、このブログのいろいろな箇所で繰り返し指摘しているとおり、皆が合意できる、科学的な定義がありません。科学的に定義ができないということは、
などと申し上げたところで、これは属人的であり、再現性がないので、現場レベルでは意味がありません。ともあれ、ここはその話に深入りせずに、世間一般で漠然といわれている「潜在ニーズ」を見つけ出し、もってそれを競合他社にはない強みに転換するのだな、と、概論的に程度にとらえていただければ十分です。
なお、「潜在ニーズ」を見つけ出す聞き取り調査に関しては、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】事業開発に必須:「潜在ニーズ」を見つけ出す顧客インタビュー
顧客ヒアリングの目的2:製品開発(事業アイデア/MVP段階)・改良の精度を高めるため
この目的は、上の表でいう「5. Validation Interview/ソリューションインタビュー」・「6. Usability Testing/ユーザインタビュー」での目的と考えてください。
思い込みや仮説だけで製品開発を進めることは、大きなリスクを伴います。顧客ヒアリングは、開発の初期段階で顧客のリアルな反応を探るための羅針盤です。事業アイデア段階もしくはMVPの段階でヒアリングを行えば、市場投入前に致命的な設計ミスや方向性のズレを修正できます。また、既存製品に対するヒアリングは、改良すべき点の優先順位を明確にし、開発リソースを最も効果的な箇所に集中させるための重要な判断材料を提供してくれます。
顧客ヒアリングの目的3:顧客との長期的な信頼関係を築くため
この目的は、上の表の活動すべての重要な目的のひとつといっていいでしょうが、あえて絞るなら、「5. Validation Interview/ソリューションインタビュー」・「6. Usability Testing/ユーザインタビュー」・「7. Exploratory Interview/マーケ目的の聞き取り調査」での目的と考えてください。
顧客ヒアリングは、企業が顧客の意見に真摯に耳を傾けているという姿勢を示す絶好の機会です。自分の声が製品やサービスに反映されたと感じた顧客は、企業に対して強い信頼感とロイヤリティを抱くようになります。このような関係は、価格競争に巻き込まれにくい安定した取引基盤を築きます。顧客を単なる「買い手」ではなく、共に価値を創造する「コアなファン」として捉える姿勢が、長期的なビジネスの成功に繋がるのです。
顧客ヒアリングを始める前の準備ステップ
顧客ヒアリングの成否は、その8割が準備段階で決まるといっても過言ではありません。場当たり的な質問では、得られる情報も表層的なものに限られてしまいます。ここでは、実りあるヒアリングを実現するための、不可欠な準備ステップを具体的に解説します。
ヒアリングの目的を明確に設定する
まず最初に、「何のためにヒアリングを行うのか」という目的を具体的に定義することが重要です。目的が曖昧なままでは、質問が発散し、有益な情報を得られません。例えば、
- 「新製品Aの開発に向けたニーズの探索」(「3. JTBD Interview (Jobs To Be Done)/ジョブインタビュー」・「4. Problem Interview/問題インタビュー」)
- 「既存製品Bの顧客満足度向上」(「6. Usability Testing/ユーザインタビュー」)
- 「ターゲット市場Cにおける事業拡大戦略の立案」(「7. Exploratory Interview/マーケ目的の聞き取り調査」)
といったように、具体的かつ明確なゴールを設定してください。この目的が、以降の全ての準備プロセスの指針となります。
対象となる顧客を選定する
次に、設定した目的に最も合致する顧客は誰かを考え、ヒアリングの対象者を選定します。全ての顧客が同じ意見を持っているわけではありません。例えば、長年の優良顧客、最近取引が始まった新規顧客、あるいは失注してしまった元見込み顧客など、異なる立場からの意見はそれぞれ貴重です。目的に応じて、どのような属性の顧客から話を聞くべきか、戦略的に選び出す必要があります。
| 顧客セグメント | ヒアリングから得られる情報の例 |
| 優良顧客 | なぜ自社製品を選び続けてくれるのか、ロイヤリティの源泉 |
| 新規顧客 | 購買決定のプロセス、競合製品との比較ポイント |
| 不満を持つ顧客 | 製品やサービスの具体的な問題点、改善へのヒント |
| 失注顧客 | 自社に足りなかった要素、競合の強み |
仮説を基にした質問項目リストを作成する
目的と対象者が決まったら、ヒアリングで聞くべき質問項目をリストアップします。この時、ただ質問を羅列するのではなく、「顧客は〇〇という課題を抱えているのではないか」「自社の△△という特徴は、□□という点で評価されているのではないか」といった仮説を立てることが極めて重要です。仮説を持つことで、ヒアリング中にその仮説を検証したり、深掘りしたりすることが可能になり、会話に一貫性と深みが生まれます。
【目的別】製造業の顧客ヒアリングで使える質問項目集
効果的なヒアリングを行うには、状況や目的に合わせた適切な質問を投げかけることが鍵となります。ここでは、製造業の現場で役立つ具体的な質問項目を、4つの異なる目的別に分けて紹介します。これらの質問リストをベースに、自社の状況に合わせてカスタマイズしてください。
既存顧客向け|満足度と改善点を探る質問
既存顧客は、製品やサービスを実際に使用しているからこそ分かる、貴重な情報源です。関係性が構築できているため、比較的本音を引き出しやすいでしょう。
- 「私たちの製品を導入いただいてから、業務にどのような変化がありましたか?」
- 「製品の機能や性能について、特にご満足いただけている点はどこでしょうか?」
- 「逆に、もう少しこうだったら良いのに、と感じる点があれば教えていただけますか?」
- 「弊社のサポート体制や営業担当の対応について、率直なご意見をお聞かせください。」
見込み顧客(プロスペクト)向け|課題とニーズを引き出す質問
まだ取引のない見込み顧客に対しては、彼らが抱える課題やニーズを深く理解することが目的です。自社製品の話は控えめにし、まずは相手の状況を理解することに徹します。
- 「現在、お客様の業務において最も時間やコストがかかっているのはどのような部分ですか?」
- 「その課題を解決するために、過去にどのような取り組みをされましたか?その結果はいかがでしたか?」
- 「もし、その課題が解決されたとしたら、どのような状態が理想的だとお考えですか?」
- 「新しい製品やサービスを検討する際、どのような情報を最も重要視されますか?」
製品開発に活かすための質問
新製品の開発や既存製品の改良に繋げるためには、より具体的で踏み込んだ質問が必要です。顧客の業務フローや、製品が使われる前後の文脈を理解することが重要になります。
- 「(特定の作業工程を指して)この業務は、どのような手順で行われていますか?」
- 「その中で、非効率だと感じたり、ストレスを感じたりする瞬間はありますか?」
- 「その瞬間を前回感じたときの様子を詳しく教えていただけますか?」
- 「競合他社製品の使用を含めて、いまは、どのようにその問題を解決していますか?」
提案の質を高めるための質問
特に営業担当者が顧客に対してより的確な提案を行うためには、顧客の意思決定プロセスや評価基準を把握することが不可欠です。
- 「製品の導入をご検討される際、最終的な決定権はどなたがお持ちでしょうか?」
- 「導入にあたり、どのような部門の方々と調整が必要になりますか?」
- 「価格以外に、製品選定で重視されるポイントは何ですか?」
- 「弊社からの提案に、どのような情報が含まれていると、社内でのご説明がしやすいですか?」
これは実は製品開発の際にも非常に大切な質問です。
顧客ヒアリングを成功させる実践的な進め方
優れた質問リストを用意しても、ヒアリング当日の進め方次第で、得られる情報の質は大きく変わります。顧客に心を開いてもらい、本音を引き出すためには、単なる質疑応答ではない、コミュニケーションの技術が求められます。ここでは、ヒアリングを成功に導くための4つの手順を紹介します。
手順1:アイスブレイクで信頼関係を築く
ヒアリングの冒頭では、いきなり本題に入るのではなく、まずは雑談などを交えて場の空気を和ませることが重要です。これをアイスブレイクと呼びます。相手の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気を作ることで、その後の会話がスムーズに進みます。ヒアリングの目的を丁寧に説明し、相手への敬意と感謝を伝えることも、信頼関係の構築に繋がります。
【関連記事】事業開発を成功させる顧客インタビュー:その実行に必要な「瞬間ラポール」とは?
手順2:「無前提クエスチョン」で会話を広げる
ウェブをサーチしていてぶつかるヒアリング/インタビューのマニュアルにはよく、
と書かれているのですが、決して騙されないでください、このようなことを書いている書き手は、百戦錬磨のヒアリング/インタビューの達人からはほど遠い、えせインタビューアマスターです。
私がかつて、ある顧客インタビューで、以下のような「オープンクエスチョン」をしてしまったことがあります。
いま考えれば恥ずかしいくらい当然の話ですが、相手はむっとしました。この質問は、この後に「5W1H」でいくらでも深掘りしていける、オープンクエスチョンです。しかし、その相手は二度と本音で語ってくれなくなりました。オープンであっても、あからさまに「そんな施策などうまくいくわけないだろう?」という、こちらの皮肉な思いを前提にしているからです。
オープンである以上にはるかに重要なのは「こちらが無意識に前提している条件に基づかない質問をする」ことであり、クローズドクエスチョンはこの「無前提」には当たりませんので、自動的に排除されるだけです。このような質問をして初めて、こちらが想定していなかったような新しい視点や情報を引き出すのに役立ちます。
製造業における現場における例:
〇「御社が本当に造りたいものはなんですか?」
✖「御社が弊社のこの素材で造れるものはなんですか?」
上記の✖質問は、私が実際に、ある金属加工メーカーのランディングページで見たことがある質問です。正確には、このように書かれていました。
私がこれを見た時にとっさに思ったのは、「そんなこと知るか!なんで私がそんなこと考えなければならないんだ?」でした……
手順3:「なぜ?」を繰り返し深掘りする
顧客の発言に対して、一度で満足せずに「なぜそう思われるのですか?」「もう少し具体的に教えていただけますか?」といった形で質問を重ね、深掘りしていくことが極めて重要です。このプロセスを通じて、表面的な意見の裏にある、本質的な理由や背景、価値観を探ることができます。トヨタ生産方式で知られる「なぜなぜ5回」のように、繰り返し問いかけることで、課題の根本原因にたどり着くことができます。
| 質問の段階 | 質問例 | 顧客の回答から得られる情報 |
| 第1段階 | 「この製品の納期に不満はありますか?」 | 表面的な満足・不満足 |
| 第2段階 | 「なぜ、納期に不満を感じるのですか?」 | 納期遅延が引き起こす具体的な問題 |
| 第3段階 | 「なぜ、その問題が重要なのでしょうか?」 | 顧客のビジネスにおける優先順位 |
手順4:ヒアリング内容を要約し認識を合わせる
ヒアリングの最後や、各トピックの区切りで、「つまり、お客様のお話は〇〇ということですね」と、こちらが理解した内容を要約して確認する作業を行いましょう。これにより、お互いの認識にズレがないかを確認できます。また、顧客は「自分の話を正確に理解してくれている」と感じ、さらなる信頼感を抱くでしょう。このひと手間が、ヒアリングで得た情報の精度を大きく高めます。
顧客ヒアリングで注意すべきポイント
顧客ヒアリングは、デリケートなコミュニケーションを要する場です。良かれと思って取った行動が、かえって顧客の本音を引き出す妨げになることも少なくありません。ここでは、ヒアリング担当者が陥りがちな失敗を避け、より良い関係を築くために心に留めておくべき3つの重要なポイントを解説します。
【関連記事】事業開発の基本:こんな顧客インタビューは絶対やってはいけません
売り込みをしない
ヒアリングの最大の目的は「聞く」ことであり、「売る」ことではありません。顧客が課題について話している最中に、性急に自社製品の紹介を始めるのは厳禁です。このような態度は、顧客に「結局は売り込みか」という不信感を抱かせ、心を閉ざさせてしまいます。まずは顧客の状況を完全に理解することに徹し、製品の話は、もし求められたとしても最後にするくらいの心構えが重要です。
相手の話を遮らない
顧客が話している途中で、自分の意見を挟んだり、次の質問を投げかけたりして話を遮ることは、絶対に避けなければなりません。相手は話す意欲を失い、本当に伝えたかった重要な情報が語られないままになってしまいます。たとえ話が長くなったり、少し本筋から逸れたりしても、まずは最後まで傾聴する姿勢を貫きましょう。忍耐強く聞くことで、思わぬ本音や貴重なヒントが明らかになることがあります。
沈黙を恐れない
会話の中に沈黙が生まれると、気まずさからつい何か話さなければと焦ってしまうことがあります。しかし、ヒアリングにおける沈黙は、顧客が考えを巡らせ、言葉を選んでいる貴重な時間です。この沈黙を恐れずに待つことで、顧客はより深く内省し、表層的ではない、考え抜かれた意見を話してくれる可能性が高まります。質問を投げかけた後は、焦らずにじっと待つ勇気を持ちましょう。
ヒアリング後の結果を最大限に活用する方法
顧客ヒアリングは、実施して終わりではありません。むしろ、ヒアリングで得た貴重な情報をいかにして具体的なアクションに繋げるかが最も重要です。情報という「原材料」を、企業の成長という「製品」に加工するプロセスについて解説します。
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回答内容を整理・分析する
ヒアリングが終わったら、できるだけ早く録音やメモを基に内容をテキスト化し、整理します。単なる文字起こしで終わらせず、顧客の発言を「課題」「ニーズ」「要望」「不満」などのカテゴリーに分類することが有効です。複数の顧客から共通して挙がったキーワードや、特に印象的だった発言をハイライトすることで、重要なインサイトが浮かび上がってきます。
関係部署と情報を共有する
整理・分析した結果は、必ず関係部署と共有しましょう。例えば、製品の品質に関する意見は開発部門へ、サポート体制に関する意見はカスタマーサービス部門へ、といったように、適切な部署に情報を届けることが重要です。ヒアリングの結果をまとめたレポートを作成し、共有会などを開くことで、全社的に顧客への理解が深まり、一貫した顧客対応が可能になります。
| 情報の種類 | 共有すべき部署の例 | 期待されるアクション |
| 未知のニーズや機能要望 | 製品企画・開発部門 | 新製品・新機能の開発検討 |
| 競合製品との比較情報 | 営業・マーケティング部門 | 営業資料の改善、訴求ポイントの見直し |
| サポートへの不満 | カスタマーサポート部門 | サポートプロセスの改善、FAQの充実 |
製品開発や営業戦略に反映させる
最終的なゴールは、ヒアリングから得た学びを具体的な施策に反映させることです。例えば、「多くの顧客が〇〇という作業に手間取っている」というインサイトが得られたなら、その作業を自動化する新機能を開発する、といったアクションに繋げます。施策を実行した後は、その結果を再び顧客にフィードバックしたり、新たなヒアリングを行ったりすることで、継続的な改善のサイクルを生み出すことができます。
顧客ヒアリングは、生成AIを活用して代替できないのか?
以前、私がITコーディネータフォローアップ研修でリーンスタートアップの顧客インタビューを講じていたとき、ある、製造業で新製品開発に携われている参加者が、鼻先でせせら笑うような口調で、こうおっしゃいました。
これは私の勘繰りだったら申し訳ないのですが、おそらく、「いまどき、そんな泥臭い、非効率なことなんかする必要ないだろう?時代遅れだよ」というニュアンスだったのでしょう。これに対して私は、自社で生成AIソリューションを開発している者として、
顧客ヒアリング(聞き取り調査)を全的に生成AIで代替するのは不可能
と断言できます。根拠は以下の記事を参照してください。
【関連記事】なぜ生成AIに「この商品は売れますか?」と素で訊いてはいけないのか?
まとめ
本記事では、製造業における顧客ヒアリングの重要性から、準備、実践、そして活用に至るまでの一連のプロセスを網羅的に解説しました。顧客ヒアリングは、一度行えば終わりというものではなく、継続的に実施することでその真価を発揮します。顧客の声に真摯に耳を傾け、それを製品開発や営業戦略に活かすサイクルを確立することが、変化の激しい市場で勝ち残るための鍵となります。この記事で紹介した手法や質問項目を参考に、ぜひ明日からの顧客との対話に活かしてください。
製造業における顧客ヒアリングは、単なる要望の聞き取りではありません。それは、顧客自身さえ気づいていない現場の潜在課題(インサイト)を掘り起こし、技術が解決すべき「真の問い」を定義するための、最も重要なR&Dプロセスです。
もし、貴社の営業や企画の現場において、以下のようなジレンマをお持ちでしたら、ヒアリングのアプローチを根本から見直す必要があります。
- 「顧客の声を聞こうとしても、『価格低減』や『短納期』といった要求ばかりで、付加価値提案のヒントが得られない」
- 「既存製品のスペック説明は得意だが、新規テーマ探索のための『課題抽出型』の対話ができる人材がいない」
- 「技術シーズはあるが、それが顧客の製造工程や業務フローの中で具体的にどう役立つのか、仮説の解像度が低い」
「Start up, Scale up.」は、製造業特有の商流や技術背景を熟知しています。私たちは単にヒアリングシートを作成するだけではありません。誰に、何を、どのように聞くべきかという「仮説設計」から、得られた生の声を製品仕様や事業戦略へと落とし込む「翻訳」のプロセスまで、貴社のチームと一体となって伴走します。
会議室の議論だけでは見えない、現場のリアルな「解」を求めて。 貴社の技術を必要とする本当の顧客を、共に探しに行きませんか。
