イントロダクション
先日、某金融機関の次長レベルの方々のデザインスプリント2.0をファシリテートしてきました。
(デザインスプリントとは、Googleの the venture firm/ベンチャー企業※である
Google Ventures/グーグルベンチャーズのジェイク・ナップ氏が、
主に新規事業開発向けに開発した、ミーティングを効率的に進める手法です。)
※ a venture firm とは、投資側を指します。
その中でやはり参加者の皆様が苦吟なさっていたのが、
でした。
私は新規事業開発を生業としてきましたので、ここに書いた通り、
3分に一個くらいのスピードで事業アイデアを思いつくことができます。
そのくらいはできないと、顧客にその時点でのビジネスモデルを拒否されたときにピボットできないので。
むろん一朝一夕にその域までたどり着いたわけはなく、トレーニングとして、
例えば、街を歩いていて、住宅に花の植木鉢がずらりと並んでいるのを見かけたら、
と自分に命じて一所懸命に考えるわけです。
若き日の大前研一氏が、電車に乗ったら車内吊りを見て、
そこに取り上げられている企業の経営を自分だったらどう切り回すか考えたというのと一緒ですね。
このような訓練をしている人間からすると、
「イミテーションで何が悪い!インプルーブメントで何が悪いのか!
結果として、イノベーションにつながっていく変化を、トヨタに起こしていきたい」
出典:片山修「豊田章男」東洋経済新報社.
とかトヨタ社長におっしゃられても、正直、どうだかなーと思います。
豊田社長、Airbnbが世界にビジネスをスケールさせようとしていたとき、
ハゲタカみたいなドイツの起業家に脅されたエピソード、ご存じですか?
Airbnbの創業者は、その事業を完コピしたその「パクリ専門起業家」のオフィスに招待され、
Airbnbの画面を見ながら、全く同じデザイン、UXをもつSaaSを
もくもくと開発しているエンジニアの集団の様子を見せられて、「買収しろ」と脅されたのですよ。
ちょっと話がそれましたが、いずれにせよ、事業アイデアを速射するのは一朝一夕ではできないです。
しかし、素人が、陳腐なアイデアを突飛で、大ヒットを狙えるアイデアに化けさせることは、これは十分に可能です。
それが本記事で取り上げる、日本の誇るイノベーター、濱口秀司氏による
です。
事業アイデア逆転の発想:
USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド ~バックドロップ~は、天才マーケター森岡 毅氏が発案した、
です。
ここに動画上がっていますが、いやあ、これは私には無理だわ、男としては情けないことに高所恐怖症なもので……
このローラーコースター、もともとはまともに前向きに走るものでした。
森岡氏はしかし、予算のない中で大ヒットアトラクションを生み出すために頭をひねりにひねって、ある日突然、
と思いつきます。そして技術陣に相談したら、そんなことは前例がないし安全上無理と、にべもない即答。
森岡氏は「ろくに調べもしないでなにをいう!」と怒り狂って侃侃諤諤の議論をし、
ついに技術陣に、このローラーコースターならもともとロバストな設計だから
背後へ落としても問題なし、と突き止めさせます。
このくだりは、下記の森岡氏の自著の白眉です。とても面白いし勉強になる本なので、オススメ。
さて、ここで、森岡氏の発想は、天才的にもかかわらず、実は単純ということに誰でも気づくはずです。
言ってしまえば、単なる逆落としですから。
なぜこの発想が天才的なのかといえば、
というバイアスをブレイクしたからです。それだけで、このアトラクションは異常にヒットした。
同じことを確信犯的にやったすごい芸能人を紹介します。
某クラウドソーシングのスタートアップの経営陣に加わったりして
芸能人という以上にアントレプレナーとして名を成してしまったキングコング西野氏の
です。
おみくじ箱の中には『理由もなくプロボクサーに殴られます』『水を飲んでも太ります』などが書かれた『ゲロ凶』『ブタ凶』など、ハズレしか入っていない。
しかし、こいつが大ヒット。現在、クソおみくじは、イベント会場で引っ張りだこ。
お客さんは『ハズレしかない』と分かっているのに、次から次へとクソおみくじを引き、『なんだよ、ふざけんなよぉ~』と言いながら、自分が引いたクソおみくじをSNSにアップするスットンキョウを繰り返している。
皆、お金を払って不幸を買っているのだ。』
私はこのくだりを読んだとき、「さすが西野さん!」と膝を打ちました。
これも、「幸運をひきあてる」という、おみくじの概念を逆転させただけです。しかし、めちゃくちゃ当たっている。
よく考えれば、たとえば、渡辺直美氏もこの類かもしれません。
昔私は、一時期、もと読モの女性と付き合ったことがあるのですが、
読モ時代は、厳しいダイエットを指定て、激しく頬がこけていたそうです。
それくらいでないと、写真に写ったときまるまるとしたイメージになってしまう。
しかし、渡辺直美氏はこれをひっくり返しました。
というキャラで売り出し、いまはキレイモのイメージキャラクターを堂々と張っている。つまりは
です。私も、彼女はとてもかわいいと思います。
このように、陳腐なアイデアを軸に沿ってひっくり返すだけで、大ヒットアイデアが生まれてしまう。
これこそ、濱口秀司氏による
です。
事業アイデアの発案手法:SHIFT/バイアスブレイク
濱口秀司氏のSHIFTを簡単に説明するには、氏自身による解説を参考にするのが至当です。
上掲本は少し高いですが、特に大企業にお勤めの方々にイノベーションを起こしていただく際、オススメ本となります。
確かにこの書物を読むと、デザイン思考やデザインスプリントの、事業アイデア選定の際の投票形式が滑稽に思えてきます。
この中で氏は、自ら創出したイノベーションである、USBメモリをバイアスブレイクの例として説明します。
あるイスラエルのコンパクトフラッシュメモリー企業から依頼され、未来のメモリの形を考えた濱口氏の思考の展開です。
事業アイデアの発案:試しにSHIFTしてみた!
ニューファミリーが多い場所では、パパママと子供たちがばらばらに食べることで
育児中の親に休息を与えるが、保育スペース・保育サービスつきなので値段は張る、洋食中心店舗
地方では、高齢者の方々向きの健康メニュー、ドリンクバーなし、
現金払いのみの代わりに、リーズナブルな、年金生活者むけ和食中心店舗
終わりに
今回は、事業アイデアの発想法のうち有効なものの一つである、
を取り上げました。
事業アイデアで画期的なアイデアを生み出せずじりじりしているあなたは、
是非一度試してみて下さい。