新規事業開発・事業再生の必修科目:ジョブ理論とはそもそも何か

新規事業開発・事業再生の必修科目:ジョブ理論とはそもそも何か

2021.11.10

なぜドトールで傘が売られているのか?

ついさっき、非常に面白いものを目撃したので、思わずレポします。

ドトールが傘を売り始めた!

これを従来の戦略論の専門家に評させたら、

COVID-19で売上の下がったドトールコーヒーが、多角化に乗り出した!

とか大げさなことになったら、面白いですね(笑)

私はこれを見たとき、

へえ、これはなかなかうまい手を考えたものだな

と、少し感心してしまいました。

しなじぃ効果

とかなんとか、七面倒くさいことを考える必要はないです。

これを売ることでドトールは何を顧客にさせたいのでしょうか?

以下のような「ジョブ」をお客さんに推進させることで、回転を速めたいのです。

 

ジョブの要素 要素の値
Progress/推進したいこと 店から出ていく
Conditions/おかれた状況 急に雨が降ってきた
Obstacles/その状況での障害 傘の持ち合わせがない
Imperfect Solution/イマイチの解決策 COVID-19で長居がしづらい中、お冷だけで店内に何時間か粘る
Quality/妥協できる、下辺の品質基準 とりあえず濡れなければ傘がダサくてもよい
ドトールの傘が推進してくれる the Job To Be Done

ドトール側には、この傘で儲けたいという意図は、恐らくほとんどない

と思います。緊急事態宣言の中でも図々しく長居する客が多い中、雨を言い訳として与えなければ、それで御の字なのです。

ミッション:U.S.A. を本番までにかっこよく踊れ!
(BGM:ミッションインポッシブルのテーマ)

数年前のことです。

ほとんど毎日のように、YouTubeのある動画をテレビに映して、私はコツコツ踊ってました。

いい年こいて、DA PUMPの U.S.A. を毎日練習していたのですね。

あるお祝い事のイベントでの出し物で、30代以上の男性ばかり集まってなんちゃってDA PUMPを結成、

U.S.A. を(なるべく)かっこよく踊るということになり、

皆さん働いている身ですし、COVID-19が流行する前の話であっても、

集まって練習できるタイミングが限られているため、各自で家での自主練はきっちりお願いします、という感じでした。

私はもともと運動神経悪いうえ、

バリバリの40代で回りに比べ動きの切れが悪いのに、タッパが足りないので一番前で踊ることになり、

我ながらめちゃくちゃ時間かけて練習しました。

このときの私の

U.S.A. の振付を練習する

こそ、私の片づけるべき用事、ジョブ/a job to be done です。

ジョブの定義とはとても単純

日本語のネットにはときどき誤った定義が転がっているので気を付けていただきたいのですが、

ある「ジョブ」とは、要するに、

現在の、不満のある状態(ダンスなど躍ったことがない💦)

を、

理想の状態(U.S.A.を人前で踊れる!)

まで、面倒くさかろうが何だろうが、用事を片付けて(練習)もっていくということです。

ジョブ a job to be done の定義

ジョブという概念は、

作業部分(上図でコツコツ山を登っていく行為)

のみをカバーします。

このとき、登っていく人は確かに

大変だな💧

と感じるでしょうが、ジョブの定義自体には、その

七面倒くさい💧感覚=困りごと = ペイン/Pain を含みません

曲が始まってすぐのAメロがいきなり超難関で、

どんなに練習してもダメだったので、

おじさんチームで合議、なかったことにして本番で踊らなかった

とか、Bメロ途中の

数十年でリレーションシップ♪

あたりが何度練習してもできず、

駐車場で踊っていたら女子高生に怪訝な顔で見られた

とか、いろいろなペインを、

何がなんでもUSAを踊れ!

というジョブは、いっさい関知しないわけ(泣)です。

だから、バリュープロポジション・キャンバスに書き起こしたときは、

右端のカスタマー・ジョブ Customer Job 部分のみ記述することになります。

ジョブにはコンテキストが必ずある

ジョブの定義自体はこれだけなのですが、ジョブは、

そのジョブを発生させているコンテキストを、誰にでも再現可能な形で定義する
ことが非常に重要です。
U. S. A. だと、下図のようになります。
DA PUMP U.S.A.の振付を覚えて踊れるようになるための ジョブ/the job to be done

このとき、この「即製DA PUMP」が採用した自主練の方法は、

YouTubeに上がっている、プロのダンサーが鏡の前でU.S.A.をすべてのパートをステップごとに踊っている様を自画撮りしたものを見ながら、

踊り方を覚えていくという、泥臭いがこれしかない、という方法でした。

U.S.A. 踊り方練習問題を解決した、バリュープロポジションキャンバス

日本語のサイトをジョブ理論でググって出てきたページだと

ジョブを中心にしてサービスを考えていく

とか、と四の五の面倒くさそうな話が出てきますが、

すでにバリュープロポジション・キャンバスを習得された方なら、

そのカスタマージョブ/Customer Jobsに転記すればいいのだ

とだけ覚えておけばよいわけです。

マックのモバイルオーダーが顧客に推進させるジョブ

もう一例、ビジネスで上げておきましょう。

本日は一日ホテルでテレワークの予定なのですが

ついさっき、会議の合間に、マックの「濃厚白ダブチ」でサクッとランチを済ませました。

テレワーク@ホテルのランチ

なにせ「合間」が30分を切っていたため、

午前中の会議の最中にあわただしくモバイルオーダー、

アプリの画面で資金の店に注文しておいて、

30分の休憩中に、店にダッシュ!

途中、BURGER KING もあったのですが、案の定並んでおり、やはり、これはなかったなと。

店員さんが待ち構えているマックでさっとピックアップして、ホテルに帰って次の会議まで7分あまり。

午後一のズームの背後でこそこそバーガーを食べる私がそこにいました。

すなわち、下記のようなジョブをマクドナルドのモバイルオーダーは果たさせてくれたわけです。

 

ジョブの要素 要素の値
Progress/推進したいこと ランチを買ってくる
Conditions/おかれた状況 仕事中
Obstables/その状況での障害 ランチタイムが30分と限られている
Imperfect Solution/イマイチの解決策 まずいコンビニ弁当
Quality/妥協できる、下辺の品質基準 値段はそこそこで、温かく、まずまずの味
栄養価などは考慮しない
モバイルオーダーが推進してくれる The Job To Be Done

このように、はっきりとコンテキストを浮かび上がらせることができるのが、ジョブ最大の美点です。

このページだけだとジョブがなぜ重要か?今一つピンとこないと思いますので、

ジョブという概念が、『潜在ニーズ』なんて考え方の言葉の10000倍役に立つ」

ということをこれから丁寧に解説していきます。

<参考文献>

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