もちろん、みなさんご存じヘンリー・フォード氏の至言です。
このセリフを引いて、スティーブ・ジョブズ氏がおっしゃったセリフが、
と言ったというエピソードも有名でしょう。
……え?ご存じない?
このスティーブ・ジョブズ氏の名言は、
初代 Mac が市場投入時にどのように苦戦、事実上、失敗したか?
iMac 、 iPod、iPhone、iPadがそれぞれどのような紆余曲折を経て開発、成長していったか?
を克明にたどっていかないと、本当のところ腹落ちしないのですが、
それはまたの機会に譲ります。
シャーロックホームズのジョブ
辻馬車の時代のホームズ
自動車の時代のホームズ
ポストCOVID-19のホームズ
ニーズの中には、解釈する側の思い込みが含まれる
キーエンスが「潜在ニーズ」を捉えられたのはなぜか?
シャーロックホームズのジョブ
このフォード氏の至言のマーケティング理論による解釈、これがまた、
はっきりいって。また、比較表つくってみましょう。
あなたは、シャーロックホームズです。
今日中に、というか今すぐ、どうしても、ある事件の関係者の話を緊急で聞きたいとします。
もしかしたらその人物が犯人かもしれないと、あなたは疑っています。
ホームズであるあなたのことです、こちらが話す言葉に対するその人物の微細な反応をうかがうために、
必要があります。電話は避けたいところです。
辻馬車の時代のホームズ
あなたは帽子をとって、その人物の邸宅へ赴くため、さっそうと部屋を飛び出します。
事象/表彰 | 英語のカテゴリ | 日本語のカテゴリ | 説明 |
馬車 | Good(s) | 物品 | ただのモノ |
品種改良を加えた速い馬の馬車 | Wants / Product | ウォンツ/プロダクト | 顧客の捉え方で変化する、ニーズを 満たすための特定のプロダクト |
速く移動したい | Needs | (潜在)ニーズ | 本当に顧客が欲しいもの 生き残るために必要な大事なもの |
自動車の時代のホームズ
さて、ここで、あなたのために、時代を進ませます。
この世界では、辻馬車の代わりに、タクシーがけっこうロンドン市街を走っています。
事象/表彰 | 英語のカテゴリ | 日本語のカテゴリ | 説明 |
車両 | Good(s) | 物品 | ただのモノ |
馬車/自動車 | Wants / Product | ウォンツ/プロダクト | 顧客の捉え方で変化する、ニーズを 満たすための特定のプロダクト |
速く移動したい | Needs | (潜在)ニーズ | 本当に顧客が欲しいもの 生き残るために必要な大事なもの |
あなたは帽子をとって、犯人の邸宅へ赴くため、さっそうと部屋を飛び出します。
(私も2,3度乗りましたけど、ロンドンのタクシーは、自費負担ようできんお値段です。)
ポストCOVID-19のホームズ
さらに時代は一気に進みに進んで、このブログを執筆している、2021年です。
背景の解説は不要ですよね。
事象/表彰 | 英語のカテゴリ | 日本語のカテゴリ | 説明 |
車両 | Good(s) | 物品 | ただのモノ |
馬車/自動車 | Wants / Product | ウォンツ/プロダクト | 顧客の捉え方で変化する、ニーズを 満たすための特定のプロダクト |
速く移動したい | Needs | (潜在)ニーズ | 本当に顧客が欲しいもの 生き残るために必要な大事なもの |
表情見ながら、 相手から話を聞きたい |
job to be done | ジョブ | 顧客が片づけるべき用事 |
「いや、ホームズ、それくらい自分でやんなよ。うち、あんたの雑用係ちゃう」
「………………」
ニーズの中には、解釈する側の思い込みが含まれる
はい、もうお分かりかと思いますが、
なわけです。ここでイタいのは、
という、極めて大きな弊害が、顕在だろうが潜在だろうが、
にはつきまとう、ということ。そう、ここで最も大切なのは
vs.
ということです。「ニーズ」には、いわば、
が働くのです。
キーエンスが「潜在ニーズ」を捉えられたのはなぜか?
いきなり余談から入りますがね。
マーケティング理論を私に教えてくださったくだんの経営学のセンセも思い切り誤読していたのですが、
「捉える」の読みは、「とらえる」
でも、
「捉まえる」の読みは「つらまえる」
ですからね。
とらまえるじゃないです。
学者とかコンサルファームの執行役員とか、
とか、日々うっかり呼ばれちゃっている人が国語を正確に使えないと、こっちが恥ずかしくなります。
さて、本題。
この本に、キーエンスが蛍光顕微鏡BZシリーズをどうして開発できたのか?という秘話が載っています。
キーエンスの蛍光顕微鏡が導入される前までは、顧客はシグナルとバックグラウンドのコントラストを損なわないように、顕微鏡を暗室のなかで使わなくてはいけなかった。
そこでキーエンスは、顕微鏡全体をプラスチックの筐体で囲み、本体のなかに暗室を作った。
(上掲書、第6章「価値創造の実際」)
キーエンスの(たぶん技術営業さんの)動き自体は、これは、もう、さすがというしかないです。
こんなことを徹底してやるのは、日本の大企業では、ほぼキーエンスのみでしょう。
しかし、この本の著者はこれを、
顧客を細かく観察し、既成概念にしばられず考え抜いて、潜在ニーズを発掘した
と、ジョブ理論を知らないゆえに、解釈してしまいます。
で、ここで読者は、
と、はたと困るわけです。実際にはキーエンスの技術営業が実施したのは、
で、これには定式化されたやり方があり、誰でも再現可能なのです。(おいおい紹介していきます)
事象/表彰 | 英語のカテゴリ | 日本語のカテゴリ | 説明 |
蛍光顕微鏡・暗室 | Good(s) | 物品 | ただのモノ |
暗室で利用する蛍光顕微鏡 | Wants / Product | ウォンツ/プロダクト | 顧客の捉え方で変化する、ニーズを 満たすための特定のプロダクト |
シグナルとバックグラウンドの コントラストを損なわずに、 顕微鏡で蛍光性もつ試料を観察する |
Needs | (潜在)ニーズ | 本当に顧客が欲しいもの 生き残るために必要な大事なもの |
研究を進めるため、対象を拡大して 分析的に、蛍光性もつ試料を観察する |
job to be done | ジョブ | 顧客が片づけるべき用事 |
ジョブの要素 | 要素の値 |
Progress/推進したいこと | 研究を進めるため、対象を拡大して分析的に蛍光性もつ試料を観察する |
Conditions/おかれた状況 | 研究仲間のいる研究室で |
Obstacles/その状況での障害 | 既存の蛍光顕微鏡を使うとなると、通常の研究室では明るすぎる |
Imperfect Solution/イマイチの解決策 | 暗所に蛍光顕微鏡を移動する |
Quality/妥協できる、下辺の品質基準 | シグナルとバックグラウンドのコントラストを損なわず観察できれば良い |
キーエンスをさすがだとほめるしかないのは蛍光顕微鏡で観察するのはあくまで研究の一環だから、、
と、そこまで、なぜなぜで、ジョブを浮き上がらせたことです。
この部分は、なかなかできることでは確かにないです。しかし、
の知識を身に着け経験を積めば、顧客の、わざわざ暗所に行くというこの行動を、省かせることはできないだろうか?
と思いつくことは、決して不可能ではありません。
以降は、この方法について詳説していきます。