新規で取り扱いたい技術やアイデアがあるが、事業として実現可能なのか判断に迷うこともありますよね。
そんなときはPoC(Proof of Concept)を活用して、検証を行うことがおすすめと一般にいわれますが、本当にそうでしょうか。「PoC祭り」「PoC疲れ」といった不毛な事態が生じる理由はどこにあるのか解説します。
PoC(Proof of Concept)とは
PoC(Proof of Concept)とは、元々は創薬の言葉です。
「ある分子が創薬の標的であると考えて,その標的に作用する物質が疾患の治療薬になり得るという仮説(コンセプト)を設定した場合,その物質が患者に対して実際に治療効果を示すことを,適切な指標を用いて直接的(場合によっては間接的)に実証すること」
出典元:https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?Proof_of_concept
ビジネスでは、一般論として「概念、技術、理論、アイデアといった要素が実現可能なのか、目標とする結果を達成可能なのかを検証する手法」「「概念実証」とも呼ばれ、計算や理論などで検証するのではなく、実際の製品やシステムを活用して実験的な検証を行うのが特徴」であるとされます。
商品の開発にお金はかかりますが、PoCは無償で行われることが多いです。
ほとんどのPoCが失敗に終わる理由・デメリット
PoCを実施しても、ほとんどが失敗に終わります。
考え方として「実現可能性」を見出す手法が「PoC」であり、「市場性」(市場に需要がどれくらいあるのか)を図る方法ではないためPoCを実施する意味はほとんどありません。新規事業の事業化がどれくらいスケールするかを測るには、
Desirebility Study/市場性調査
をあらかじめ行っておく必要があるのです。
売れないものをいくら実現可能であるからといって製造しても意味がないでしょう。
世の企業では、PoCに人材や多額の予算をかけて、新規事業に無意味であるPoCを実施していることが多いです。売れるかわからないものを実現可能だからといって製造するのがPoCであり、メリットはありません。
新規事業の重要度は「市場性」>「実現可能性」
「市場性」を検証することが重要であって、「実現可能性」であるPoCを実施するメリットが非常に薄いです。市場性を検証する方法としては、最小限で売れるかどうか検証するプロセスのMVPなどが挙げられます。
PoCに従い売れないものを製造しても市場性を図れず、市場性の検証ができなかった結果事業として失敗するケースが多いです。そのためMVPなどの有効性と比べると、PoCという概念自体が新規事業に向いていません。
ほとんどのPoCが失敗に終わるまでの流れ
実際にPoCを行う際は、数ヶ月間かけて多額の予算でプロトタイプの開発を行い、半年〜1年間かけて無償でPoCを実施する流れです。
価格を付けて販売開始され、プレスリリースが発表されて多少話題にはなります。しかし誰も購入しませんが、購入されない理由は不明瞭です。進捗報告はしっかり行えるため「結果としてうまくいかなかったけどよく頑張ったね」と社内で評価されることがあっても、開発コスト・時間・情熱が水の泡になります。
PoCを実施する手順
PoCはここまで紹介したようにあまり意味はありませんが、一般的に実施されているPoCの流れについて以下5点紹介します。
PoCの目的を明確にする
何のためにPoCを実施するのか、どんなことを知るために検証を行うのか、どんなデータが必要なのかを明確にします。目的が明確でなければ、指針や方向性が安定せずPoCを有効活用できなくなってしまうことが理由です。
ゴールのイメージを具体的に想定し、方向性を定めることで無駄な検証を削減してコストを最小限にできます。
PoCで実施する検証方法を決める
具体的な検証方法を決めて、PoCの計画を立てます。PoCを実施する流れ収集するデータなどを明確にして、必要最低限のものを作りましょう。
より効果的かつ具体的な結果をえるためには、検証方法や実施する内容はユーザー視点を意識し、開発者の視点に偏らないように注意する必要があります。PoC実施前にユーザーのいる現場などを確認すると、ユーザーと目線が近づくでしょう。
PoCで使用する試作品を製作する
PoCの実証で使用するシステムや、製品の試作品を製作します。
最小限の機能だけを搭載するが、きちんと目標を達成できるだけのクオリティは必要です。
このときの試作品はプロトタイプと混同されることが多いですが、プロトタイプは改良を重ねて完成を目指すプロセスで作られるのに対し、PoCでは検証を目的としたシステムとなるので少し異なります。
PoCによる実証をはじめる
ここまで決めた内容に沿って、PoCによる実証を開始します。
さまざまな属性を持ったなるべく多くの人たちに参加してもらい、データを収集することが大切です。また顧客アンケートやインタビューを行って、数多くの情報を集めます。環境によってデータに差が出ないように、基本的には実際に使用する環境と同様の状態を作って実証することが重要です。
PoCで獲得したデータを評価する
実証によって収集したデータを整理して、評価します。
実現性や必要なコスト、実現にあたってのリスクや課題などを確認し、改善点を見つけ出すことが大切です。いい結果が出た際は本格的な開発に進み、悪い結果の場合は評価した内容をもとに、改善やゴールの修正などを実施し再度PoCを行いましょう。
無償でPoCを行う3つの欠点とは
無償でPoCを行うと、以下3つの欠点が出る可能性が高いです。PoCが失敗する理由でもあるため、詳しく解説します。
売れるかわからない状態で開発コストを投じる
PoCではあくまでも実現可能性を基に製品を開発するため、市場性つまり市場に需要があるか検証しない状態で開発が進みます。
無駄なコストを削減できるPoCですが、そもそもユーザーが求めていなければ実現ができないため、PoCの最低限で製造したサービス自体が無駄なコストです。通常は市場性(需要)を確認してから、搭載機能などの実現可能性を考慮していくプロセスがスムーズであるが、PoCの概念ではそれができません。
無償であるため、価値のあるデータを得られない
無償でPoCを行い、顧客インタビューを行う場合は、無償だから協力しようとお世辞のデータが集まることが多いです。
無償では顧客の熱量がほとんどないことが多いため、PoCに限らず正確なデータを集める際には、どれだけプロトタイプの品質が悪くても有償で行う必要があります。「お金を払うならいらないけど、無償だったら付き合う」といった本気度のない顧客からデータを収集しても、需要がないのに評価だけは高くなる可能性があるため、データ自体に価値がありません。
このようにその製品やサービスが魅力があるのか、無償で行うと分からなくなります。
社内では「頑張った」と評価される
PoCでは開発コスト・人的資源・情熱をフルに使って検証するため、結果に関わらず上司への進捗報告を定期的に行えます。
結果的に価値がないデータを検証していたとしても、使ったコストが莫大なため社内では「頑張った」と評価されるケースが少なくありません。
無償のPoCの身近な事例
無償で行われるPoCの身近な事例について、紹介します。実際にPoCの顧客となった経験をもとに、PoCの有効性について考えてみましょう。
デパートや百貨店の無料の試食販売
デパートや百貨店の無料の試食販売は、20年〜30年前まで頻繁に実施されていましたが現在は少なくなっています。
人材とコストを利用しますが、無償の場合はユーザーが本気にならないため購入されづらい傾向が高いです。デパート・百貨店の無料試食販売のように、無償のPoCはユーザーが本気になりづらいため、コストパフォーマンスが悪いことが多いです。
まとめ
本記事では、PoCの概要・流れやデメリットについて解説しました。売れるか分からないものを製造して検証するPoCは、市場性が図れないため失敗するケースが多いです。デメリットが多いPoCは実施せず、MVPなど成功しやすい検証プロセスを実施するようにしましょう。
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