事業開発/事業再生のエンジン:顧客インタビューの種類
①IBMへの顧客インタビューによるMicrosoftのピボット
②キーエンスのソリューション営業は顧客インタビューを徹底的に行う
事業開発/事業再生のエンジン:顧客インタビューの種類
プロブレムインタビューでどんな質問をすればいいのか?
イントロダクション
日本の新規事業開発界隈で、すなわち、この
の界隈では、麻生要一さんや石川明さんはじめ、リクルート出身の方々の活躍がとみに目立ちます。
それは日本の大企業ではリクルートのみが
優秀な会社だからなのですが、その中に、
同社で人事系の大きな、当時は先駆的なサービスを起ち上げられ、
おかげでビジネスモデル構築方法で有名になってしまった、
とかいう、
をなさっていた方と同一人物です。 この方はほかにもいくつかピンボケ発言をしているのですが、
その中のアクーラ級戦略原潜なみの破壊力を持つピンボケ発言の一つに、
事業開発/事業再生のエンジン:顧客インタビューの種類
いや、笑ってすみませんね。だって、
んだもの。
じゃあ、偉大な新規事業を開発したあなたに聞きますがね。次のエピソードはどう解釈なさるんですか?
IBMへの顧客インタビューによるMicrosoftのピボット
Microsoft創業時の事業をご存じですか?
OSでもアプリケーションでもないですよ。
そもそも、このアルテア8800とは、エド・ロバーツが起こした会社MITS社が開発し製造したものでした。
アルテア8800の記事を雑誌で読んだ、当時ハーバード大の学生で、 プログラムを組むことが3度のメシより大好きだったピル・ゲイツは、友人のポール・アレンと共に、アルテア8800用のプログラム言語「BASIC」を作り上げます。
そして、すぐに彼らはアルバカーキにあるMITS社に飛び、 自分たちが開発した「BASIC」を売り込み、まんまと成功を収めます。
さて、ここで質問です。
そんなわけがないわけです。
する、この大胆かつ最高のピボット(事業転換)をゲイツ氏とアレン氏が決断できたトリガーこそ、
です。
ゲイツ氏は、IBMにBASICを売り込もうとしてうまくいかず、
むしろ同社がコンピュータ市場の開拓にOSを必要としていることを聞き取って、
このピボットを決断し、アレン氏の知り合いから、Disk Operating System を二束三文で買い付けます。
これこそ、Microsoftの本当の始まりなわけです。
それ以降の同社のスムーズなキャズムの超えっぷりを、うっかり参考にしてはならない例外中の例外だとして、
ジェフリー・ムーア氏はこう巧みに評しています。
Microsoft社はIBMが創り出した需要の竜巻の中で生まれた、そして同社のそれに続くマーケット開発は、その資産から潤沢に受け継がれたものに依拠しているのである。
ちなみにこの歴史的ピボットは、
スタートアップの最初のアイデアなどどうせイケてないからこだわるな
という趣旨のポール・グレアム氏のブログにも
と、とりあげられています。これでも、
キーエンスのソリューション営業は顧客インタビューを徹底的に行う
「機器サイズを今の半分に」
「ペットボトルの不良を検知できるカメラが欲しい」
など、営業マンがヒアリングした顧客の悩みを詳細に記載。
開発担当者は膨大なデータを基に「まだ世の中にない機能」をキーワードに開発を進める。
これが顧客の心をつかむ。ある中国企業は
「他社がカタログベースの説明に終始するなか、キーエンスだけはニーズを捉えた提案を自らしてくる」
と評価する。
顧客がニーズを知らないからではなく、
あなたの顧客インタビューのスキルが「ナシよりのナシ」だからです
事業開発/事業再生のエンジン:顧客インタビューの種類
なにゆえこんな勘違いが起こるか?
日本という、このスタートアップのパラディ島では、
と、
とがしばしば、ごちゃごちゃに語られるからです。
というかですね、殆どのアーントラプレナー/イントラプレナーが、①をまともにやっていないんだな………。
そして、YコンビネーターのCEOマイケル・サイベル氏がいみじくも指摘している通り、
なわけですね。
But now, looking back, I think we had it backwards. We were the classic Silicon Valley startup in search of a problem.
(Y-combinator CEO Michael Seibel)
出典:Should You Follow Your Passion? ? Dalton Caldwell and Michael Seibel
この二つを、アッシュ・マウリヤ氏は、名著 Running Lean の中で明確に分けて定義しています。
①プロブレムインタビュー
プロブレムインタビューでは、以下のリスクに取り組むようにする:
- プロダクトリスク: どんな問題を解決しようとしているのか?顧客はトップ3の問題をどのようにランク付けしているか?
- マーケットリスク: 既存の代替手段は何か?現段階で、顧客はどのようにこの問題を解決しているか?
- 顧客リスク: 誰がその悩み事を持っているか?それは、事業のスケールが見込める顧客セグメントか?
出典(一部、意訳しています):
②ソリューションインタビュー
You will start by double-checking your learning from the Problem interview, then look to test the following additional risks:
- Customer risk: Who has the pain? How do you identify early adopters?
- Product risk: How will you solve these problems? (Solution) What is the minimum feature set needed to launch?
- Market risk: What is the pricing model? Will customers pay for a solution? What price will they bear?
出典:上掲書
簡単に言ってしまうと、①は、
達成前、②は、達成後、ということになります。
①をするときに、
顧客が自分のニーズを知らないことを盾に使いたくなるのです。
プロブレムインタビューでどんな質問をすればいいのか?
The Lean Startup Method/リーンスタートアップの基礎である顧客開発ランチパッドの生みの親、
スティーブ・ブランク氏は、プロブレムインタビューでは究極的には二つの質問だけすればよい、
という趣旨の発言をしています。
仕事をするときに、いちばん大きな悩みは何ですか?
(2) If you could wave a magic wand and change anything, what would it be?
魔法の杖が手元にあってなんでも変えられるとしたら、何を変えたいですか?
確かに、私なんぞは、顧客インタビューをやっていると、これらの質問しか事実上していないことがままあります。
……みなまで言わなくてもよいです、言わんとしていることはわかります。
これ、日本人が日本人の顧客に対してまじめな顔して訊くのは、ぶっちゃけ、
ですよね?だから私はいつもこうしています。
まず、断られる前提で、既存のソリューション/それに毛が生えた程度の新ソリューションを提案します。
そうするとお客様はまず、断ってきます。断ってきたら、しめたとばかりに、
(1) それでは参考までにお聞かせください、今一番お困りのこととは何でしょうか?
(2) 今回のご提案や、弊社のケイパビリティは、いったんすっかりお忘れください。弊社が
何でも屋でどんなお手伝いもできると仮定して、何をして差し上げたらいちばん助かりますか?
と訊くわけです。
このやりかたでサクッと訊いて、
と戸惑われたことは何度かありますが、眉をしかめられたことは一度もないです。
皆様もぜひお試しください。
終わりに
今回は、プロブレムインタビューのやり方を説明しました。
次回は、
を達成する前に、ソリューションインタビューを始めてしまうことに伴う、甚大な弊害を説明します。