製品開発のプロセスとは?成功に導く7つのステップと注意点を解説します

製品開発のプロセスとは?顧客から学んで成功確率を高める7つの事業開発ステップ

日本企業の製品開発では、プロトタイプであっても、いきなり造って市場に出すことは簡単ではありません。稟議を通して予算を確保しないと、原則何も進まないからです。

しかし、実は、稟議前に顧客と十分会話して、開発予算を確保する可能性と、製品が世に出てから売れる確率を同時に高める方法があります。アメリカでもごく最近出てきた、リーンスタートアップより、さらに新しい方法論です。

この記事では、日本企業でも稟議前に始められる、米国の最新製品開発プロセスを、7つのステップで解説します。

製品開発のプロセスとは?

製品開発のプロセスとは、新しい製品のアイデアが生まれてから、実際に市場に投入され、顧客の手に届くまでの一連の流れや手順を体系的にまとめたものです。このプロセスには、市場のニーズを探る調査から、具体的な製品の設計、試作品の製作、テスト、そして量産と販売に至るまでの全ての活動が含まれます。多くの企業が独自のプロセスを持っていますが、その根底にある考え方やステップには共通点が多く見られます。

なぜ製品開発プロセスが重要なのか

製品開発プロセスを明確に定義しておくことには、いくつかの重要な目的があります。第一に、プロジェクトの全体像を関係者全員が共有し、同じ目標に向かって進むための「地図」としての役割を果たします。これにより、部門間の連携がスムーズになり、認識のズレによる手戻りや非効率を防ぐことができます。第二に、各ステップで達成すべき目標や判断基準が明確になるため、意思決定の質が向上します。例えば、「このアイデアは本当に市場性があるのか」「試作品の評価は次のステップに進む基準を満たしているか」といった重要な問いに対して、客観的なデータに基づいた判断を下せるようになります。これにより、リスクを管理し、プロジェクトの成功確率を高めることにつながるのです。

 

製品開発の基本的な7つのステップ

製品開発は、アイデアにすぎなかったものを、徐々の現実の製品にしていく作業などではありません。

本来は、「何を造るか」を決める前に、顧客が達成したいこと、困っていること、望んでいることを確かめ、そのうえで、次に何にをすればアウトカム(事業目標、製品目標)に近づくのかを検証していく活動です。

以下では、一般的な7つのステップに沿って説明します。

手順1:テーマ創出

製品開発は、アイデア出しから始めると、実は危険です。なぜなら、多くの企業では「自社が造れそうなもの」「技術的に面白いもの」「会議で通りやすいもの」が、有望な製品アイデアに見えてしまうからです。

最初に見るべきなのは、アイデアそのものではありません。顧客が何を達成しようとしているのか、その途中のどこで止まっているのか、何を望んでいるのか。作業プロセスを遂行する上で、いかなる摩擦や制約を抱えているのか。そこを観察しないままアイデアを増やしても、製品開発は「(売れるかどうかわからないが)造れそうなものリスト」に追記するだけに終わるのです。

だからこの段階では、「漠然とこのテーマで製品を作りたい」というテーマ出しを行います。

手順2:市場取材と事業機会(オポチュニティ)の特定

次にそのテーマに関して、いくつかの市場に狙いをつけ、「市場を取材」しにいきます。

ここであえて市場調査という手垢のついた表現を避けたのは、ニーズ調査ではないからです。そもそも事業アイデア/ソリューション仮説がこの時点で存在しないので、ニーズ調査などやりようがありません。

顧客が実際に何をしているのか、どこで迷っているのか、何を回避しているのかを観察しにいき(ビジネスエスノグラフィ)、聞き取り調査を遂行し、顧客が遂行したいこと(ジョブ)、困っていること、望んでいることを見極め、その中で自社が取り組むべき機会を定めることです。

手順3:ソリューション仮説と事業仮説の設計

事業機会が見えてきたら、いきなり仕様を固めるのではなく、複数の打ち手を考えます。

同じ事業機会にアプローチする方法は、機能を造る、既存製品の使い方を変える、サービスを組み合わせる、導入プロセスを変えるなど、一つではありません。

この段階で必要なのは、どの打ち手がアウトカム(事業目標)により効果的に近づくのか?を明確にすることです。

手順4:アサンプション(ビジネス成立条件)テストのデザイン

次に行うべきことは、その打ち手が成立するために、正しくなければならない前提を洗い出すことです。

顧客は本当にその状況を重く見て、お金を十分支払う意思があるのか?今のやり方を大きく変えるだけの深刻な理由があるのか。使う人、決める人、払う人は誰なのか。導入や継続利用を妨げる条件は何か。

例えば、Kindleのハードウェアが日本に入って来たとき、それはいきなり飛ぶように売れたわけではありません。俗世間のリーンスタートアップなら、「電子インクのディスプレイだけをみてもらって、読みやすさを確認してもらう」「紙芝居(画面遷移図)でPoC」などとなるのかもしれませんが、その前に圧倒的に優先的にやることがあったはずなのです。それは

アメリカのペーパーバッグと違って日本の文庫本は紙質がいいので経年劣化せず、いつまで経っても美しいので読みにくくならず、また、本棚に並べておいて満足するという別の効用もある。その効用を犠牲にしてでも、日本人が電子書籍に乗り換えるための条件は何か?

と言ったような、事業仮説の根本に関わる想定確認、アサンプションテストだったはずです。

これらの前提、想定が不成立であれば、そもそもプロトタイプを造る工数すら無駄になる可能性が高いわけです。

手順5:アサンプション(ビジネス成立条件)テストの実施

プロトタイプすらろくに造らずに確認できる項目だけ、先に確認してしまいます。例えば上のKindle事業の想定確認なら、図書館に出かけて本好きの日本人の行動を観察したり、本好きにインタビューしたり、というテストです。キャッシュアウトゼロで、たいした工数もかけずに、「本業の片手間」で実施できます。

手順6:事業計画を造る

この段階でようやく、「おっとり刀」で、事業計画を策定し、稟議を通します。あらかじめ調査やアサンプションテストをしておくことで、稟議の際に「本当にニーズがあるのか?」と、従来ならこの時点ではとても答えにくい、既存事業と新規事業を混同した質問が承認者から降ってきても、余裕で対応できるというわけです。

手順7:開発して有償のPoCを行う

MVPを開発し、最初から有償で世に問います。この段階にきたら、事業化には成功しています。なぜなら、事業化とは、製品に値段をつけて売り上げを立てることだからです。

ここまでみてきた7ステップは、ご覧の通り、従来型の「アイデアを製品化する手順」からはほど遠いやり方です。

この、事業機会(オポチュニティ)見極め、打ち手が成立するための前提を検証しながら、アウトカム(事業目標)達成のために開発手法は、最新の米国のプロダクトマネジメント手法 Continuous Discovery/継続的市場探索と呼ばれます。

【関連記事】Continuous Discovery Habitsとは?実践方法・OST・インタビューの基本を解説

製品開発プロセスを成功させるためのポイント

プロセスに沿って開発を進めるだけでは、必ずしも成功するとは限りません。プロセスをより効果的に機能させるために、以下の3つのポイントを意識することが重要です。

明確な目標とビジョンを共有する

プロジェクトの初期段階で、「この製品開発を通じて何を達成したいのか」という明確な目標とビジョンを設定し、開発チームや関連部署の全員で共有することが不可欠です。ビジョンが共有されていれば、開発途中で予期せぬ問題が発生した際にも、立ち返るべき指針となり、一貫性のある意思決定を下す助けとなります。

顧客の課題解決を最優先に考える

開発者の「作りたいもの」と顧客の「欲しいもの」が乖離してしまうことは、製品開発における最も一般的な失敗パターンの一つです。開発の全プロセスを通じて、常に「これは顧客のどのような課題を解決するのか」という視点を持ち続けることが重要です。顧客へのインタビューやアンケートを定期的に実施し、顧客の声を製品に反映させる仕組みを作りましょう。

小さく始めて改善を繰り返す

最初から完璧な製品を目指すのではなく、まずは製品の核となる価値を最小限の機能で実現したMVP(Minimum Viable Product)を開発し、市場に素早く投入することが現代の製品開発では主流となっています。顧客からのフィードバックを基に、製品を継続的に改善していくアプローチ(反復型開発)を取ることで、市場のニーズとズレた製品を開発してしまうリスクを大幅に低減できます。

 

製品開発で活用できるフレームワーク

製品開発プロセスを管理し、効率化するためのフレームワークがいくつか存在します。ここでは代表的なものを2つ紹介します。

フレームワーク 特徴 メリット デメリット
ステージゲート法 開発プロセスを複数の段階(ステージ)に分け、各ステージの終わりに審査(ゲート)を設ける。 リスク管理がしやすく、大規模で複雑なプロジェクトに向いている。 審査プロセスに時間がかかり、市場の変化に迅速に対応しにくい場合がある。
アジャイル開発 計画、設計、実装、テストといった短い開発サイクルを反復して行う。 顧客のフィードバックを素早く反映でき、仕様変更に柔軟に対応できる。 全体像が見えにくく、厳密なスケジュール管理が難しい場合がある。

ステージゲート法

ステージゲート法は、製品開発のプロセスを複数の「ステージ」に分割し、各ステージの完了時に「ゲート」と呼ばれる審査ポイントを設ける手法です。ゲートでは、プロジェクトの進捗、市場性、技術的な実現可能性などが評価され、次のステージに進むか、中止するかの意思決定が行われます。この手法により、リスクの高いプロジェクトを早期に中止できるため、無駄な投資を防ぐことができます。

【関連記事】ステージゲート法/新規事業の開発プロセスを導入するだけで成功する?

アジャイル開発

アジャイル開発は、もともとソフトウェア開発の分野で生まれた手法ですが、現在ではハードウェアを含む多くの製品開発に応用されています。「アジャイル(Agile)」とは「素早い」「機敏な」という意味で、短い期間の開発サイクル(スプリント)を何度も繰り返すのが特徴です。各スプリントの終わりに動作する製品の一部を完成させ、顧客からのフィードバックを得ながら開発を進めることで、市場の変化や顧客のニーズに柔軟かつ迅速に対応することを目指します。

【関連記事】アジャイル開発はもう古い?次世代の開発手法トレンドと今後の最適解を徹底解説

【事例】成功する製品開発の進め方

ここでは、優れた製品開発プロセスを持つことで知られる2社の事例を紹介します。

Apple社のiPhone開発事例

Apple社のiPhone開発は、徹底した秘密主義と、明確なビジョンに基づいたトップダウンのアプローチで知られています。同社は市場調査に頼るのではなく、「人々は自分の欲しいものを知らない」という考えのもと、自らが市場を創造する革新的な製品を生み出してきました。デザインとユーザー体験を最優先に考え、ハードウェアとソフトウェアを緊密に統合させることで、他社には真似のできない独自の価値を提供しています。数十個のプロトタイプを作り、細部に至るまで徹底的にこだわり抜く開発プロセスが、世界中を魅了する製品を生み出す源泉となっています。

参考:Inside Apple’s 6-Month Race to Make the First iPhone a Reality

トヨタ社のカイゼン手法

トヨタ自動車は、「カイゼン」として世界的に知られる継続的改善の文化を製品開発にも応用しています。開発プロセスにおいては、「トヨタ生産方式(TPS)」の考え方に基づき、徹底的な無駄の排除と効率化が追求されます。また、チーフエンジニア(主査)制度を導入しており、一人の強力なリーダーがコンセプト立案から生産まで、製品開発の全プロセスに責任を持つ体制を整えています。これにより、一貫したコンセプトのもとで、高品質かつ顧客の期待を超える車づくりを実現しています。

参考:

トヨタ生産方式

第95回 チーフエンジニアは、担当製品の“社長”!

 

まとめ

製品開発のプロセスは、アイデアという種を、市場で価値を生む果実へと育てるための設計図です。本記事で紹介した7つのステップは、その基本的な道筋を示しています。このプロセスを理解し、自社の状況に合わせて適切に応用することで、製品開発の成功確率を大きく高めることができるでしょう。

 

プロセス導入・見直しでお悩みの企業様へ

 

もし、

  • 「自社の開発プロセスが体系化されておらず、手戻りが多い」
  • 「新しい開発手法(アジャイルなど)を導入したいが、何から手をつけるべきか分からない」
  • 「新規事業のアイデアはあるが、市場投入までの道筋が見えない」

 

といった課題をお持ちであれば、ぜひ一度ご相談ください。

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