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ビジネスモデルキャンバス(BMC)は、企業や新規事業の戦略や構造を視覚的に整理するための効果的なツールです。
この記事では、ビジネスモデルキャンバスの、従来の使われ方とは一味違う、生成AI時代の使い方を詳しく説明します。例えば、
理由がお分かりになりますか?書いたら最後、そのビジネスモデルキャンバスは役に立たなくなるからです。
是非とも「明日からの実務に活かせる」キャンバスの使い倒し方をこの記事で学んでください。
ビジネスモデルキャンバスとは?
ビジネスモデルキャンバス(BMC)は、企業や新規事業の戦略や構造を視覚的かつ簡潔にまとめるためのツールです。オスターワルダー氏とピニュール氏によって提唱され、その実用性とシンプルさから多くのビジネスシーンで活用されています。
ビジネスモデルキャンバスは以下で説明する9つの基本要素から構成されています。これらの要素はビジネスの異なる側面を網羅しており、それぞれが互いに関連し合い、全体としてビジネスモデルの理解とその改善に役立ちます。
しかし、各ボックス (building blockと英語では呼びます) の中に要素をお作法として配置していくだけだと、
のままです。たとえば、顧客のリアルな行動パターンや購入動機、チャネルに潜む制約、顧客との関係構築コストの種類まで想定し、事業の実像をあぶり出す必要があります。さらに重要なのは、
しておくことです。ビジネスモデルキャンバスとは、実は非常によくできたリスクのチェックリストなのです。
以下では各要素を、この記事のアイキャッチ画像に掲載した iPad のビジネスモデルキャンバスの実例とともに深掘りしながら、底に潜むリスクの暴き出し方を説明していきます。
新規事業の起ち上げのときばかり注目されるこのツールは、実は、既存事業の改善(事業再生)においても非常に効果的です。線形プロダクト開発の典型的な失敗例イリジウム(イリジウムについてはこちらの記事で詳しく解説しています)は、私に言わせれば、モトローラの幹部たちが真剣に頭をひねりながらビジネスモデルキャンバスさえ描いていれば開発が始まらなかったはずのプロジェクトですし、チャプター11の後に事業が再生されたそのやり方もまた、ビジネスモデルキャンバス上でその妥当性が証明できます。
ビジネスモデルキャンバスの9つの基本要素
ビジネスモデルキャンバスは、9つの基本要素で構成されています。それぞれの要素が特定のビジネス機能をカバーし、事業の全体像を明確にします。顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客との関係、収益の流れ、リソース、主要活動、パートナー、コスト構造の各要素を理解することで、ビジネスモデルの強化と成功へとつながります。
顧客セグメント(Customer Segments: CS)
顧客セグメント(Customer Segments: CS)は、ビジネスモデルキャンバスの中で、ダントツに重要な要素です。企業がターゲットとする顧客のグループを定義するためのボックスです
ここを埋める際に大切なのは、B2BでもB2Cでも、以下の2点です:
- この顧客は支払いをしてくれるか?
従来のBMCの書き方から乖離してしまうのですが、私に言わせれば、CSにフリーミアムのサービスの享受者を書くのは意味を成しません。時々そうしたBMCをみかけて、その場合は、CRに「フリーミアム」と記入されているのですが、それで商売が成り立つわけがないのです。例えば Meta のビジネスモデルなら、CSに広告を出稿する企業側の担当部門、KPに一般のSNSユーザーを書き込むべきでしょう。利用者と顧客を混同しないことが非常に重要なのです。 - 顧客がサービスを使用する際の行動パターンが、克明にアニメーションとして頭の中で描けるか?
iPod は、単に音楽を聴くだけでなく、ファッションとして身に着けたい、という使われ方をされました。単に「音楽好きの若者」というセグメンテーションだけでは、こうした顧客の具体的な行動パターンが見えてきません。この行動パターンについては、この記事「ジョブ理論で、他社を寄せ付けない オンリーワンのプロダクトを開発する」で説明しています。
価値提案(Value Propositions: VP)
価値提案(Value Propositions: VP)は、ビジネスモデルキャンバスの中心に位置する重要な要素です。これは、企業が顧客に提供する独自の価値を明確にする部分であり、他社との差別化要素となります。
具体的には、価値提案には製品やサービスの品質、価格、利便性、デザイン、ブランドイメージなどが含まれます。企業はこれらの要素を組み合わせて、顧客にとって魅力的なオファーを作り上げます。iPodの価値提案を一発で理解したければ、以下の動画をご覧ください:
技術革新に強みを持つ企業であれば、その技術を生かした高機能の製品を提供すること、低価格を武器にする企業の場合は、コスパの優れた商品を提供することが価値提案の一部となります。(イノベーションのタイプについては、こちらの記事をご参照ください。)
このボックスで非常に重要なのは、
です。ターゲットが本当に悩んでいるポイントに価値提案が直撃しているかが鍵になります。たとえばiPodは「技術」ではなく、「デザイン」に価値を感じる層に刺さることで、単なる音楽プレイヤーではなく自己表現の道具として認識されました。価格や機能だけでなく、感情的価値を明文化できているか?という問いを常に意識するべきです。さらに、複数の価値を並べる場合は「誰にとって何が嬉しいのか」を明確に分ける必要があります。そうでなければ、ただの機能羅列になってしまい、顧客の心に刺さりません。
顧客との関係(Customer Relationships: CR)
顧客との関係(Customer Relationships: CR)は、企業が顧客と どのように関わり、どのように関係を維持していくかを定義します。
もっと具体的には、このボックスは「顧客とサービスとの課金に関する契約形態」ととらえるべきです。選択肢は、したがって、単発売り、サブスクやリース、リカーリング、ライセンス供与、広告収益、仲介手数料などが入ります。そして重要なのは「価値提案とチャネルとの一貫性」です。誰に、どんな形式で、どれくらいの距離感で付き合う(課金する)かを設計することが、収益モデルにも直結します。
iPodの事例では、単なる製品購入にとどまらず、iTunesというエコシステムを通じて
が巧みに構築されていました。実にこの関係性は、iPhoneにいたるまで継続するわけです。
このように、顧客との関係を適切に管理し、強固なつながりを築くことが、ビジネスモデルの成功において非常に重要です。
チャネル(Channels: CH)
チャネル(Channels: CH)は、企業が価値提案を顧客に届けるための経路を示す重要な要素です。適切なチャネルを選定することで、顧客は製品やサービスに簡単にアクセスでき、企業は顧客へのリーチを最大化することができます。
チャネルには、直接的な販売チャネルと間接的な販売チャネルが存在します。直接的な販売チャネルでは、企業が自身のウェブサイトや店舗を通じて商品を直接販売します。これには、Eコマースサイト、直営店、カスタマーサポートセンターなどが含まれます。一方、間接的な販売チャネルでは、代理店やパートナー企業を通じて商品を流通させます。これには、リセラー、ディストリビューター、オンラインマーケットプレイスなどが該当します。
このボックスでは「サービスが顧客に出ていく導線」を実態レベルで設計しておく必要があります。たとえばiPodのケースでは、Apple Storeや家電量販店だけでなく、iTune Store経由でコンテンツを売るというチャネルも忘れてはなりません。さらに、「魅力がない商品を広告で押し売りしていないか?」というチェックも必要であり、チャネル戦略と価値提案の整合性が不可欠です。ハイタッチ営業から自社EC、アプリ内導線まで、実際に顧客にサービスにどのように出会って頂き、価値提案をこのチャネルを経由して顧客セグメントに対して送り届けるか?を念頭に設計することがポイントです。
収益の流れ(Revenue Streams: RS)
収益の流れ(Revenue Streams: RS)は、企業がどのようにして収益を得るかを示す重要な要素です。この要素を明確にすることで、ビジネスモデルの持続可能性と収益性を評価することができます。
このボックスと「顧客との関係(Customer Relationships: CR)」は一対一対応の関係になっているべきで、CRで設定された収益がどのような形でいくらぐらい流れ込むか、がイメージできるように書かないといけません。
iPodはもちろん商品ひとつひとつは買い切りでしたが、その後の進化ではiTunes経由の“曲ごとの販売=継続課金モデル”が導入され、これが真の成功を支えました。つまり、単なる収入手段ではなく、「関係性の深さを反映した収益構造」こそが鍵なのです。iPodのBMCでは、LTVとCACの関係や、ストック型/フロー型の回収期間設計を明示しており、特にリカーリング収益は単発売り切りにはない、継続的にレベニューをもたらす力を持ちます。価格体系や収益手段を検討する際は、「顧客が感じる価値に見合ったかたちで金を取っているか?」という観点から組み立てることが重要です。
また、最重要な視点は、この記事に書いた通り、
です。ですので、収益の流れ(Revenue Streams: RS)にもコスト構造(Cost Structure: CS)にも、フェルミ推定でいいので、具体的な金額を書いておく必要が必ずあります。
キーリソース(Key Resources: KR)
キーリソース(Key Resources: KR)は、企業がビジネスモデルを実現し、価値を提供するために必要な主要な資産を示す要素です。これには、物理的、知的、人的、財務的な資源が含まれます。
物理的なリソースには、製造設備、物流システム、店舗などが該当します。これらのリソースは、製品やサービスの提供を支え、ビジネスの運用に不可欠です。一方、知的リソースには特許、ブランド、データ、業界知識などが含まれます。知的財産は競争優位性を持つための重要な要素となります。
人的リソースは、企業のスタッフや専門家に関するもので、彼らのスキルや経験がビジネスの成功に直結します。優秀な人材を確保し、育成することが重要です。財務的リソースは、資金や投資資源の管理を指します。企業は十分な資金を確保し、適切に運用することで、持続的な成長を図ります。
大切なのは、KRの中には必ず、
が入っているべきだ、ということです。デビューを飾った当時の iPod の最大の強みは、すでに iTunes 上に積みあがっていた膨大な楽曲数でした。こればかりは競合他社がパクりようのない強みです。逆に言うと、ここに、他社にもふんだんにあるリソースしか入っていないようだと、そのビジネスモデルははなはだ安定感を欠くものになります。
このように、ビジネスモデルにおけるリソースを適切に管理し、最大限に活用することで、企業は競争力を維持し、成長を続けることができます。
主要活動(Key Activities: KA)
主要活動(Key Activities: KA)は、ビジネスモデルを成功させるために企業が行うべき重要なアクションや作業を示す要素です。これらの活動は、価値提案の提供、チャネルの運用、顧客関係の維持、収益の創出などに直結します。
具体的には、主要活動には製品の研究開発、製造、販売、アフターサービスの提供などが含まれます。たとえば、技術革新を重視する企業であれば、研究開発活動が主要となります。一方、製造業の場合、効率的な生産体制の構築が重要です。
注意事項の一つは、ここに
ことです。なぜなら、定義が曖昧過ぎて、具体的にどういうアクションを起こしたらいいのかわかりませんし、そのための予算をコスト構造(Cost Structure: CS)内に確保することができなくなるからです。「マーケティング」と曖昧な表現を書き込みたくなったら、「市場ニーズ」の把握なのか事業の初期に勢いをつけるための広告なのかを見定めてください。
販売活動なら、顧客との接点を増やし、購買の促進を図ります。アフターサービス活動では、顧客満足度を高めるためのサポート体制を整えます。
このように、主要活動を適切に実行し、継続的に改善することで、企業はビジネスモデルの強化と持続的な成長を実現することができます。
パートナー(Key Partners: KP)
パートナー(Key Partners: KP)は、企業がビジネスモデルを効果的に実現するために協力する外部の組織や団体を示す要素です。戦略的なパートナーシップを結ぶことで、リソースや知識の共有、リスクの軽減、スケールメリットを享受できます。
イメージとしては、
ということになります。イリジウムのように自社で全部をやり切ろうとすると、往々にして破滅へ向けて一直線だからです。
パートナーシップの種類はさまざまです。たとえば、サプライチェーンにおける重要な供給業者との協力は、安定して質の高い原材料を確保するために不可欠です。また、技術提携や共同研究開発を行うことで、新しい技術や製品の開発が促進されます。さらに、販売代理店やディストリビューターとのパートナーシップを結ぶことで、広い市場へのリーチが可能となり、販売チャンネルの拡大が期待できます。これにより、製品やサービスの認知度が向上し、売上の増加につながります。
iPodの成功においてFoxconnとのEMS提携は重要であり、Appleは設計に集中し、製造を外部に任せることで資源の効率化を実現していました。
また、例えばUberの例では、タクシーの規制当局と長期間法廷で争ったという障害がありましたので、Uberのビジネスモデルキャンバスを創業者が書いたとしたら、理想的には、ここにその規制当局を記入しておくべきだった、となります。ですので、パートナーという名称は少し妥当ではなく、ステークホルダーと呼ぶべきボックスかもしれません。
サプライヤー、販売代理店、流通網、あるいは連携企業の存在は、“自社の強みを何倍にもレバレッジする”触媒になり得ます。逆に、信頼できないパートナーはビジネス全体を崩壊させかねません。だからこそ、「誰と組むべきか」は戦略の根幹になります。
このように、パートナーシップを通じて企業の強みを強化し、ビジネスモデルの成功を支えるため、適切なパートナーを選定し、協力関係を構築することが重要です。
コスト構造(Cost Structure: CS)
コスト構造(Cost Structure: CS)は、ビジネスモデルを運用するために発生する主要なコストを示す要素です。この要素を理解し、管理することは、ビジネスの収益性を確保し、コスト効率を最大化するために不可欠です。
企業はコスト構造を把握するために、固定費と変動費に分類します。固定費は、事業規模や生産量に関わらず発生するコストで、例えば、賃貸料、給与、保険料などが含まれます。変動費は、事業活動や生産量に応じて変動するコストで、原材料費、輸送費、販売手数料などが該当します。
よくある間違いの一つは、主要活動(Key Activities: KA)の中に「広告活動」と記入しておいたにもかかわらず、ここにそのコストを積み上げないケースです。これは後になって致命的な事態を招くので、気を付けたいところです。
また、コスト構造を最適化するために、企業はコスト主導型と価値主導型の戦略を採用することができます。コスト主導型の戦略では、可能な限りコストを削減し、競争力を維持します。一方、価値主導型の戦略では、顧客に高い価値を提供するために、コストをかけることもあります。この二つの戦略は、この記事で説明した、イノベーションの種類にも関係してきます。すなわち破壊的イノベーションや効率性イノベーションは前者、ポテンシャル・プロダクトは後者、という視点です。
このように、コスト構造を適切に管理し、効率的な事業運営を実現することで、企業は持続的な成長と収益性を確保することができます。
ビジネスモデルキャンバスの作成ステップ
ビジネスモデルキャンバスを効果的に活用するには、以下の順序で各ステップを進めることが重要です。CSがVPが埋められず取り急ぎKAを埋めてみた……などというBMCは、断言しますが、描かない方がマシです。逆に言えば、上の方がこれ以上なくリアルに、きっちりと埋まっていれば、BMCを埋めきらずに顧客インタビュー(この検証活動については「ユーザーインタビューの手法:基本から実践まで」で説明しています)などを始めても問題ありません。
ステップ1: 顧客セグメント(Customer Segments: CS)を決める
ビジネスモデルキャンバスを作成する最初のステップは、顧客セグメントを正確に見定めることです。顧客セグメントとは、対価を支払って、価値提案を享受するターゲット顧客のグループを指します。B2Bならどんな産業の、どの程度の売上と従業員数のいる企業の中のどんな部署か、B2Cならどんな年齢層・性別・職業/趣味のセグメントかを、最低限、書き込んでおく必要があります。
[チェックリスト]
- 漠然とした顧客像や、妄想100%のペルソナ(詳しくは別記事「なぜデザイン思考はIBMを救わなかったのか?(なぜペルソナは役に立たないのか?)」参照)ではなく、実際の知り合いが顧客像として頭の中にあるか?
- その顧客の行動パターンを、頭の中でアニメーションに描けるか?
ステップ2: 価値提案(Value Propositions: VP)を書き出す
次に取り組むべきは、価値提案を明確にすることです。具体的には、以下の質問に答えることで価値提案を洗い出すとよいでしょう:
[チェックリスト]
- 顧客はどんな行動をとるとき、その行動プロセスの どのステップでいかなる問題に直面するか?
- その問題は、もし誰かが解決してくれたら顧客が熟睡できるようになるほど深刻な問題か?
- その問題に対してどのような解決策を提供し、その結果、その問題はその効果が無視できないほど軽減するか?
ステップ3: キーリソースを整理
キーリソースを決定する際のチェックリスト:
- 他社ではまねできないような、自社だけの強みが入っているか?
- その強みから、(主要活動を行うことによって)初めて価値提案が可能になる構造になっているか?
具体的なリソースの挙げるにあたっては、この記事「製造業における事業戦略:新規事業で新たな成長を創出する」で扱った、バリューダイナミクスの手法を用いましょう。
ステップ4: 顧客との関係(Customer Relationships: CR)とチャネル(Channels: CH)を整理
まず、顧客との関係を考える際には、以下の要素に注目します:
[チェックリスト]
- 最も楽して儲けるための課金モデル
- リテンション戦略(顧客維持戦略)
例:iPodは、これはiPhoneにも引き継がれた方法ですが、iTunesに買いためた楽曲をほかのプラットフォームに移すのが面倒なため、確実にリカーリングとなるところが強みでした。
次に、チャネルを選定する際には、以下の点を考慮します:
[チェックリスト]
- いかなる手段で、そのサービスを最も欲しがっている顧客の目の前に、製品/サービスを「ポンと置く」か?
例:私は弊社のサービス「AIディアソン」を開発したとき、顧客がありとあらゆるWeb広告メディアで狙い撃ちできないことに苦しみました。最終的には、SEOで集客するように変形しています。 - 「マーケティング」なる、鵺のような要素が記入されていないか?
- どのチャネルが最もコスト効率が良いか?
- 顧客の購入プロセスに適したチャネルは何か?
例:ディーラーという「不要な仲介業者」をバイパスしたことで、イーロン・マスク氏は、テスラで革命的なビジネスモデルを築きました。
ステップ5: 収益の流れ(Revenue Streams: RS)とコスト構造(Cost Structure: CS)を検討
次に、収益の流れとコスト構造を検討します。収益の流れとは、どのような方法でビジネスが収益を得るかを示すものです。コスト構造は、ビジネスを運営するために発生する主要なコストを示します。
収益の流れを考える際には、以下のポイントを確認します:
[チェックリスト]
- CRの各形態で、どの程度のLTV(生涯価値、顧客一人/一社が一年間に落としてくれる金額)が見込めるか?
- 価格設定戦略はどうするか?
一方、コスト構造を検討する際には、以下の要素を明確にします:
[チェックリスト]
- 主要活動のすべてのコストが考慮されているか?
- 固定費(CAPEX)と変動費(OPEX)はどの程度か?
- OPEXは確実に収益の流れのLTVを下回るか?
- スケールエコノミーを達成する方法は何か?
ビジネスの収益性を最大化するためには、収益の流れとコスト構造をバランス良く設計することが重要です。これにより、持続可能な成長戦略を構築することが可能となります。
ステップ6: 主要活動、パートナーを整理
主要活動、パートナーを整理します。主要活動はビジネスを成功させるための主要な作業、パートナーはビジネスに協力してくれる組織や個人を指します。
主要活動を整理する際のチェックリスト:
- 「こればかりは自社でやらざるを得ない」活動ばかりになっているか?
- ほかのボックスに出てきた要素はすべて網羅されているか?
例:よくあるミス、チャネルに「広告」とあるのに、主要活動に「広告活動」を書き込みそびれ、その結果、莫大な額の広告費をコスト構造に含まれない、というのは致命的です。
パートナーシップを考える際のチェックリスト:
- ビジネスに欠かせない外部の協力相手は誰か?
- パートナーシップによってどのようなシナジー効果が得られるか?
- パートナーでは必ずしもないが、サービス開始後、あとあとになって重大な影響を及ぼすステークホルダーは誰か?
これらの要素を整理することで、ビジネスの運営が効率的になるだけでなく、リソースの有効活用にも繋がり、全体的なビジネスモデルの強化を図ることができます。
ビジネスモデルキャンバスの使用例
ビジネスモデルキャンバスの使用例として、NetflixやUberなどの成功した企業があります。
Netflixのビジネスモデルキャンバス
Netflixは、オンラインストリーミングサービスを提供する企業として、ビジネスモデルキャンバスを効果的に活用しています。顧客セグメントとして、広範な年齢層や多様な興味を持つ人々をターゲットにしています。価値提案としては、多様なコンテンツの提供やオリジナル作品の制作が挙げられます。チャネルは主にウェブサイトやアプリを通じてサービスを提供し、顧客との関係はユーザーフレンドリーなインターフェースで築かれています。収益の流れは主に月額サブスクリプションモデルに依存し、安定した収益を得られるよう設計されています。主要なリソースとしては、技術インフラや膨大なデータを管理するサーバーが必要です。主要活動にはコンテンツの制作、ライセンス取得、マーケティング戦略の立案などがあります。パートナーとしては制作会社や配信プラットフォームが挙げられ、コスト構造にはコンテンツ制作費や技術インフラの維持管理費があります。
Uberのビジネスモデルキャンバス
Uberは、ライドシェアリングサービスを提供する企業として、ビジネスモデルキャンバスを活用して事業を成功させました。顧客セグメントとしては、移動手段を必要とする一般消費者や配車サービスを提供するドライバーが含まれます。価値提案としては、短時間での配車や料金の明確性、アプリの利便性が挙げられます。チャネルは主にモバイルアプリを通じてサービスを提供し、顧客との関係はリアルタイムでの配車状況の確認や評価システムで構築されます。収益の流れは乗車料金の一部を手数料として受け取る方式であり、ドライバーの稼働状況によって収益が変動します。主要なリソースとしては、アプリの開発や運用、膨大なデータの管理が挙げられます。主要活動にはアプリのメンテナンス、ユーザーサポート、マーケティング活動が含まれます。パートナーとしてはドライバーや車両提供業者があり、コスト構造には技術インフラの維持管理費やマーケティング費用などがあります。
ビジネスモデルキャンバス作成のポイント
ビジネスモデルキャンバスを効果的に作成するためのポイントを押さえましょう。
少なくても書き始めは完成を目的にしない
ビジネスモデルキャンバスを作成する際、最も重要なのは、
ことです。顧客セグメント・価値提案・キーリソースがびっしり「濃く」書き込まれて残りのボックスは空っぽのBMCは、キーパートナーズ、主要活動、キーリソースまで書いて力尽きたBMCの百倍価値があります。
思い出しましょう、BMCはリスクのチェックリストなのです!そして上に詳細に書いた記入の順番は、ボックスを、「そのボックスに重大な問題があった場合はアウト」のランキングで並べたものなのです。
BMCは「旅の恥は搔き捨て」だと心得る
もう一つきわめて重要なのは、
ということです。私はかつて、ビジネス企画部がきれいに造り上げた(実は私から見て内容がバグっている)ビジネスモデルキャンバスが事業企画の一環として稟議承認に使用され、その後、開発が進んでも一向に改訂されず、
例を目にしています。つまり、美しく書き上げられ、額縁をつけて神棚にあげられたのです。……これではBMCを作った意味が全くないとは思いませんか?BMCは、
ことが最も重要です。事業計画書に比べてシンプルな構造になのは、ナプキンの裏にサラサラと書いて、いざとなったら心置きなく破り捨てれるようになっているのです。
安易に生成AIに描かせない
なぜなら、旧来のビジネスモデルキャンバスのテンプレートは、実務に役に立たない部分が多々あるからです。これについてはおって詳細な記事を起こします。
リーンキャンバスとの違い
ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスは、どちらもビジネスの設計や分析に用いられるツールです。しかし、目的や重点を置く箇所には明確な違いがあります。ビジネスモデルキャンバスは、主に既存の事業者の事業の改善や新規事業の全体像を把握するために使用されます。
一方、リーンキャンバスは、例えばスタートアップのような、新規事業だけフォーカスを当てて考えていればいい企業にとってのツールです。特に不確実性の高い初期段階で使用されることが多く、問題提起から始まり解決策、独自の価値提案、顧客セグメント、収益の流れなどを重視します。リーンキャンバスは、価値提案を重点的に検証することに重きが置かれます。
このように、ビジネスモデルキャンバスがビジネス全体の構造に重点を置くのに対し、リーンキャンバスは仮説検証と迅速な改善に重きを置いている点が大きな違いです。両キャンバスをうまく使い分けることで、ビジネスの成功に向けた柔軟性と包括性を高められます。
ビジネスモデルキャンバスを作成する3つのメリット
関係者間で共通理解を持つ
ビジネスモデルキャンバスを活用することで、事業に関わるすべての関係者が同じビジョンや戦略を共有できるのが大きなメリットです。関係者全員が同一のフレームワークを用いることにより、情報の齟齬や誤解を減らすことができます。たとえば、新規事業の立ち上げ時に各部門からの意見を集約しやすくなり、共通の目標に向かって協力しやすくなります。
事業開発に失敗しにくくなる
上記で述べた通り、ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを「デバッグ」するためのツールです。チェックリストとしてフル活用しましょう。そして事業開発の旅程上で「旅の恥は搔き捨て」で、どんどん容赦なく書き直していきましょう。サービスはいったん完成してしまったらおいそれとは捨てられませんが、顧客インタビューの結果、ダメなBMCを燃やすのなら、コストになるキャッシュはせいぜいが10円です。
事業再生に役立つ
リスクのチェックリストであるがゆえに、BMCは、今あるサービスを改めてこの形に落とし込んで、「デバッグ」することで、改善点を容易に見つけ出すことができます。
まとめ:ビジネスモデルキャンバスの重要性と活用方法
ビジネスモデルキャンバスは、事業構造を簡単に視覚化し、重要な要素を整理するための強力なツールです。このフレームワークは、新規事業の立ち上げや既存事業の改善、競合分析にも最適で、企業の戦略的な決定を支援します。特に、企業の内部コミュニケーションを円滑にし、全員が共通の理解を持つことで、効果的な戦略実行が可能になります。
ビジネスモデルキャンバスを使用することで、顧客ニーズに寄り添った価値提案を明確にし、効果的なチャネルと関係構築方法を考案できます。また、収益の流れやコスト構造を見直すことで、ビジネスの持続可能性と成長性を確保する役立ちます。テンプレートを活用すると、迅速にフレームワークを実行でき、効率的にビジネスを進められます。
ビジネスモデルキャンバスはあらゆるタイプのビジネスにおいて、戦略を可視化し、持続的な成長を目指すための非常に有用な手段です。ぜひ、このツールを活用して、ビジネスの成功に繋げてください。