「新しいプロダクトの開発に着手したいが、需要やユーザー視点での価値を明確にできていない」と悩む企業は少なくありません。その結果新しいプロダクトがユーザーに受け入れてもらえるのか、確信を得られずにいるでしょう。
そこでおすすめするのが、「MVP開発」によるプロダクト開発です。本記事ではMVP開発の基本的概要やメリット、具体的な手順などについて解説します。
MVP開発とは
MVPとは「Minimum Viable Product」の略称で、一般的にはいきなり開発をせずに必要最小限の機能を備えたプロダクトのイメージを提示することをいいます。
あるハードウェアプロダクトが売れるのか、最小限の検証をするために行うことが基本です。ここでいきなりこだわった完成度の高い製品を作成してから、売れるのか検証すると、失敗した際に企業の財務にダメージを与えるリスクが高いので「最小限」で行うプロセスがMVPの本質といえます。
このようにMVP開発はプロダクトではなくプロダクト完成までの「プロセス」です。最小限必要な形のみで整えたプロトタイプを短期間で製作し、実際にユーザーに使用してもらい、ユーザーのフィードバックを参考に、プロダクトの改善を繰り返して正規品としての完成を目指す点が特徴です。
このようにプロダクトの価値を最小限で検証することが、MVP開発の目的といえます。
MVP開発におけるプロトタイプとは
プロトタイプとは、建造物で例えるとモック(模型)のことです。たとえば公共施設などに行くとモックが飾られていますが、まさにそのモックがプロトタイプ、つまり雛形という意味になります。
プロトタイプがあることで、実際に完成のイメージが湧きやすくなるため、顧客・デザインチーム・エンジニアチームのそれぞれがコミュニケーションを取りやすくなる点がメリットです。MVP開発ではいきなり多額の予算をかけて綺麗な完成形を作らずに、まずはプロトタイプを作成することでユーザーの需要を満たしながら開発ができます。
また、プロジェクトスポンサー・コンセプト・最終成果物のおおよその形が決まっているとプロトタイプは作れてしまいますが、その場合は目的が成果物のデリバリと変わってしまうため注意しましょう。
MVP開発の具体的な手法・事例
MVP開発の真の意味は、サービスローンチまでの「プロセス」にあります。ここでは以下3点の具体的なMVPの手法を紹介するため、MVP開発を取り入れたい企業はぜひ参考にしてください。
ランディングページ
ランディングページ(LP)とは、一般的に製品の販売のために作られた1ページのHTMLを指します。サービスの形もない状態でそのプロダクトが売れるか検証するために、ランディングページを作成して、問い合わせ後に「売り切れ」「準備中」などメッセージを表示させるという手が使われることがあります。
これは、リーンスタートアップの開祖エリック・リース氏が考え付いた手法です。
サービスの実態はなく、存在しないプロダクトのランディングページですが、上記を実施することでその製品が売れるのか最小限で検証ができます。また、ランディングページへの流入や導線を作るために、Facebook広告などSNS広告を利用することも多いです。
クラウドファンディング
製品販売型のクラウドファンディングでは、実際にはまだ製品が存在しない段階で資金を募ります。クラウドファンディングにて認知をさせて実際に売れるのか、金を出したいと思うユーザーがいるのか最小限で検証できます。
クラウドファンディングのページ作成には、多く時間をかけても数週間もかかりません。そのため資金を募るまでスピーディーに進められる点が、クラウドファンディングの魅力です。
自社メディアでサービスを掲載する
自社のオウンドメディアにて、まだ存在しないプロダクトを発信してお問合せフォームを設定することで、どれくらいのユーザーが関心を示すか、お問合せするか最小限で検証ができます。
自社のオウンドメディアを使用するため、余分なコストがかからずすぐに対応できる点が魅力です。狭い範囲でユーザーも絞り込めるうえに、徐々にMVPのステップを上げて検証できます。実際の反響もすぐに見えるため、最小限でしっかり検証できるMVPです。
MVP開発を活用するメリット
MVP開発を活用するメリットについて、以下2点を解説します。
プロダクトの開発におけるコストを削減できる
MVP開発を導入することで、最小限の開発コストで需要や必要機能の把握が行えます。開発計画の段階で「〇〇の機能が必要になる」と考えても、需要と合致せずに無駄になるケースは珍しくありません。
MVP開発における最小限のプロダクトで先にユーザーの意見を聞ければ、最短ルートでプロダクトを完成に近づけ、機能の必要性を確認できます。そのため時間・人など、無駄な開発コストを削減できます。
ユーザー視点による開発が行える
MVP開発では、プロダクトの仮説を検証しつつ、ユーザーからのフィードバックを得られます。
完成までユーザーの声が聞こえない従来の開発スタイルとは異なり、複数回ユーザーの意見を聞く機会があるため、ユーザー視点を意識した開発を実行しやすいです。
ユーザーの使用感や指摘を参考に、プロダクトへの機能追加や削除といった改善・検証をユーザー目線で行えます。ユーザーが本当に求める機能だけを残すため、ユーザーとしても運営としても必要最低限です。
MVP開発における3つの原則
MVP開発においては、以下3つの原則があります。実際にMVP開発を行う際は、ぜひ重要視してください。
安い
まず安いMVPを作成して、価値仮説の検証をします。
安く仕上げることが重要で、高くても数十万円程度でプロトタイプを作成することが重要です。MVPを行う時点でコストをかけてしまうと、失敗した際に大損害の可能性があります。少ない損害で最低限の検証を行うためにも、安くMVPを作成することが重要です。
早い
1ヶ月以上かけていては、MVPとはいえません。
ハードウェアを素早く作るのはプロトタイプであれ大変ですが、クラウドファンディングであれば容易に可能です。たとえばPebbleはクラウドファンディングにて、1100億ドルの資金を集めてプロダクトを作成しました。
Pebbleクラファンでは、ます目標金額、クラウドファンディングの種類を決定し、製品サイト制作・クラウドファンディングのページを作成・WebなどでPR・資金調達・リターンのプロセスを数ヶ月で実施し、価値の検証ができた実績があります。
Pebbleの製品がよくなかったという評判はありますが、製品を実施に作る前にMVPを実施して資金を集めたため、赤字などを出さずに済みました。つまり誇りより命を選んだといえます。
美味い
「美味い」を達成するためには、その時点で最も重要な仮説の検証が必要になります。MVPは段階的にステップを分けて、価値検証をするプロセスです。
ステップを分けた検証により「美味い」を達成したサービスとして、エアビーが挙げられます。
1.赤の他人に家に金を払ってそもそも泊まる人間がいるのか
結果:WIFI、ベッド、朝食付きならお金を出す人がいることが判明
2.自分達以外に赤の他人を自分の家に泊めてもいい人はいるのか
結果:自分たち以外にも相当数いた
3.出張や旅行の際に利用できるサービスにするため機能を増強する
上記のように、最小単位で価値の仮説検証を繰り返すことがMVP開発では重要になります。
MVP開発を成功させるために注意すべきこと
MVP開発を成功させるために注意すべきことについて、解説します。
MVPに多くの機能を搭載させて検証する
MVPの検証段階で、顧客インタビューにて「このプロトタイプのどの機能にいくらぐらい払いますか?」と質問することは厳禁です。
価値検証の際には、一つの機能・特徴に価値があるかどうか検証することを推奨します。上記の検証方法ではそもそも、機能が多く、ついていてもその製品自体がいらないという仮説を飛ばしてしまう点に注意が必要です。顧客は不要であることを直接伝えることができません。
MVPに多くの機能を搭載するのではなく、段階的に検証しましょう。
プロトタイプでも無償提供しない
プロトタイプ作成は安く行うことが重要ですが、プロトタイプを無料で提供することは絶対にやめましょう。無償提供した場合、顧客の本気度がわからなくなります。どんなに品質の悪いMVPであっても、必ず有償で価値検証することが大切です。
素早く作り、こだわりを入れすぎない
MVPの目的は価値仮説の検証にあり、MVPとは市場にプロダクトが受け入れられるか検証することが本質です。MVPで情熱を注ぎすぎて予算をかけすぎると、価値が市場や顧客に不要だと分かっても捨てられなくなる恐れがあります。このイケア効果と呼ばれる減少に、注意が必要です。
MVPにより仮説検証することは「ゴール」でなく「小テスト」程度に捉えましょう。MVPごと
の成功は全く必要がありません。小成功を繰り返しておいて、最後に大した成功が勝ち取れないのでは意味がないことが理由です。
たとえばクラウドファンディングで資金が集まらなければ、それはそのプロダクトに対する需要がなかったのだから製品化をストップし、ピボットかイテレーションで改良すればいいだけとなります。
まとめ
この記事では、MVP開発の特徴・メリット・注意点について解説しました。MVP開発はプロダクトを安く早く作り、最小限のコストで検証するプロセスです。
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