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Amazon.com 伝説はどこから生まれたのか?

イントロダクション

Is Amazon a “perfect company”? No. Is Jeff Bezos a “perfect man”? No.
Anderson, Steve. The Bezos Letters: 14 Principles to Grow Your Business Like Amazon . John Murray Press.
ジェフ・ベゾス氏は、無謬(むびゅう)のパーフェクト人間ではありません。
むしろ、自らも言っている通り、特に Amazon.com の最初のころの新規事業開発は、M&Aも含めて、
成功よりも失敗の数のほうが圧倒的に多かったのです。
このブログでもベゾス氏の世紀の大失敗として、Fire Phone の事例を上げました。

本記事では、Amazon.com の成功要因を以下の3つのそれにあるとし議論を進めていきます。

  1. 顧客に訴えるストーリーが、極めてシンプルである
  2. RoIでなく、RoRベースで考えている
  3. 創業時からずっとフリーキャッシュフローを重視している

実はときどき一貫性を欠く Alphabet/Googleのストーリー

この記事で取り上げられている通り、一般の印象とは異なって、

2020年のAlphabet社のクラウド事業の調子は必ずしも良いものとは呼べませんでした。

Google Cloud lost $5.61 billion on $13.06 billion revenue last year

クラウド事業GCPは、56億1000万ドルの営業損失。

GoogleはGCPのみならず自動運転や携帯電話、IoT、果ては量子超越まで、

コンピュータ技術が少しでもかかわる事業領域でおよそ手を出していないものがない印象があります。

同社としては鬼のようなコーダー、天才的なエンジニアばかり山のようにプールしているのだから、

事業を展開できない領域はないということなのでしょうが、

に難がある、「飛びすぎの飛び地」にも平気で線形プロダクト開発で突っ込んでいくので

管理人としてはときどき首をかしげたくなります。

上掲のGCP事業も最初に現れた時、正直、私の観点からすると、

なんでGoogleが?
と思った事業の一つです。
サーチエンジンと一体化した、Chrome と Gmail ふくめた Google Apps シリーズ、これはすこぶる一貫性を持っています。
最近ではもう Gmail アドレスを持っていない人間を発見するのが難しくなり、
Chrome でいったんログインしてしまえば、YouTubeまで含めてすべてのアカウントが一貫性をもって使えるという、
凄まじいばかりの集客エンジンです。
Gmailがデビューしたとき、最初のユーザはごく一部に限られ、大容量を享受できるテストユーザたちは
うらやましがられたなどという、今では信じられない実話を思い起こすと、隔世の感があります。
スティーブ・ジョブズ氏がUI/UXをパクられたことを恨みつらみに思って訴訟を起こした Android も、
あれを入り口として消費者をウェブ広告の縦深陣に引き込む働きをしており、一貫しています。しかし、
GCPは正直よくわからない?
まず、このビジネスは、事実上独占の to C事業ではなく、こてこての to B 事業です。
次に、Googleが最も得とするアプリケーションレイヤーの話ではない。
単にAWSが売れたのにぶつけてきた、それだけに思えます。
同種のカテゴリの製品なら、Azure の動きのほうがはるかにストーリーが一貫しています。
Microsoft は何十年も前から B to Bでサーバソフトを製造販売していたのだから、これは全く必然です。
現に、Officeの売り先をそのまま Azure に取り込むことによって大型案件獲得にかけては
GCPのみならずAWSも、Azure に水をあけてられているという指摘がこの記事にあります。

Amazon.com が顧客に語る唯一無二のストーリーとは?

それに比べて、Amazon.com の事業戦略のストーリー、これはとてもこだわった一貫性を誇っています。

Amazon.com は実は消費者に向けて、全事業合わせて、たった一つのストーリーしか語っていないのです。

いわく、

できる限り多種類の物品を、必要なときに、最速であなたのもとに届けます、マル
これ以外のことを、Amazon.com のほぼすべての事業は、主張していません。
そんなバカなって?いや、これは本当です。

ユーザ側の事業

いま私が記事を執筆している自室には、エコーがあり、kindleが四枚あり、 Amazon印のクレジットカードがあります。

全部で三基あるiPadのことごとくにkindleのアプリが入っています。

いまはアメリカのプライムユーザだけですが、Astro はアレクサを載せた家庭用ロボットです。

昔は我が家にダッシュボタンがありました、

今は Dash Replenishment Service というソフトウェアのサービスに姿を変えていますね。

これらすべてが顧客の手間暇かけない

商品選択→購買行動

に結び付いていること、これは皆さんも容易に納得されるでしょう。

日本では残念ながら見かけることができませんが、

Amazon Go や Amazon Book stores もこのサイドのサービスです。

サプライチェーンの事業

Amazon.com がチャネルとして持っている、

AmazonフレッシュやAmazonハブが上記のストーリーを強化していること、これも論を待たないかと思います。

また、自動運転のスタートアップ Zooxを買収したり、自動運転トラックのスタートアップ Plus に出資したりしているのも、

チャネルの強化、効率化の手段として全く不自然ではありません。

しかし、

AWSもGCP同様ユーザとは何の関係もないのでは?
と思われる向きもあるのではないでしょうか。
ところが、IaaS の嚆矢にして 25%のトップシェアを誇るAWS、
この鬼のようにロバスト/頑健な、全く落ちないと言い切っても過言でない
(サーバがダウンしても勝手に起ち上げなおすというのは、最初に接したときは衝撃でした)サービスが
Amazon.com の社内から切り出されたことが、
この頑健なシステムはもともとうちの社内システムです、したがって、あなたの発注は100%とりこぼしません
という盤石の保証になっているのです。
それから、ちょっとどこに位置付けるか迷うところではありますが、
Amazonワードローブなども、不要なアパレルの回収まで含めて考えると、

このサプライチェーン部分のサービスと定義してもいいかもしれません。

プロバイダ側の事業

このサイドの事業の話は、Zapposを買収して靴のオンライン販売も始めた、程度の単純な話ではありません。

ベゾス氏がマーケットプレイスを起ち上げたとき、出版社・作家はおろか、社員まで全世界を敵に回したことはこの記事に書きました。

彼がそうまでしてこの事業を起ち上げた背景には、優れてジョブ理論的なインサイトがあります。

我々(Amazon.com)は、モノを売るときにお金を儲けていない。
我々は、顧客が購入を決断する補助をするときに儲けている

とベゾス氏は表現しており、それはマーケットプレイスのコンテキストでいうと、このような意味です。

たとえば eBay でアーネスト・ヘミングウェイの「陽はまた昇る」を探すとしましょう。

たちまち、初版や第二版の稀覯本から、本屋の在庫整理の最新版の二束三文の投げ売りまで、

ずらりとオークションが並ぶことになります。

ところが、Amazon.com はマーケットプレイスを擁しているため、

発注可能なすべての版がせいぜい二画面ですべて網羅されることになり、

今日では、kindle や Audible といった別の媒体の、同一商品も並ぶことになります。

そして買い手は、この何を買うかの決断を下すとき、

抜群にシームレスなので、およそ売り手が誰なのかを意識しません。

私が楽天ブックスをほとんど使わないのは、洋書が全くおいていないことと、

新刊なのに本の品切れがしばしばあって、しかも楽天フリマとシームレスに連動していないのが理由です。

Amazon.com なら2クリック以内ですべての在庫が一望でき、

媒体と値段を問わなければ、まず確実に入手できます。

これはもちろん、ありとあらゆる商品をあなたのもとに、を大いに強化する機能です。

そしてこのマーケットプレイスこそ、

今や Anker のように、ここに依拠して事業を大きく展開するプレイヤーも現れてきて、

2020年の流通総額 驚異の33兆円(同年の楽天市場の流通総額4.5兆円)の経済圏となり、

同社の事業の中でAWSを抜く最大の稼ぎ頭となりました。

このマーケットプレイスの出店者を支える三本のピラーを、Amazon.com は用意しています。

  1. FBA/Fulfilment By Amazon
    同社の無二の強みである、効率化された在庫管理を出店者が使用できるサービスです。
  2. Amazon.com 上で出店者が広告を張れるサービス
  3. Amazonレンディング
    マーケットプレイス上のプレイヤーに資金を貸し、出店者の事業を盛り立てるスキーム。

出典:Newspicks 2021/8/31【全図解】30兆円。「アマゾン経済圏」が生む巨大なチャンス

広告はおろか資金提供までしてしまうとは、マーケットプレイス構想誕生時に、

どこの馬の骨ともわからない古本屋に軒を貸し、売上を奪われるのみならず、
そのサービスの品質が悪いのをわが社のせいにされるような事態を創り出すつもりか

と、社員から非難囂々だったことなど、今や想像がつきません。

Amazon.com はストーリーを強化しつつインフラを提供するだけで、どんどん収益と顧客満足度を上げているわけです。

同様に、kindleのコンテンツも会員制の Audible(これももともと買収したスタートアップ)も、

ありとあらゆる書籍のアベイラビリティを上げるための事業です。

プライム事業

Amazon Studiosが制作した映画がゴールデングローブ賞をとったら靴が売れる
という、ベゾス氏の一見奇妙な発言をひいて、
プライムのサービスが実はすべてヘビーユーザを釣る餌に過ぎないことは、
この記事で丁寧に解説しました。

なぜシンプルなストーリーが大切なのか?

我が家の娘たちは、小学校入学前から、

あまぞんさん
が何をしてくれる「人」か知っていました。
パパやママがPC上でボタンを押すと、自分たちが欲しいものをあっという間に届けてくれる「人」です。
(同じように「グーグル先生」がどれだけ何でも知っているかも理解していました。)
すなわち、Amazon.com が、この記事で取り上げた、
特定のジョブを果たすときに事実上一択として消費者の頭に浮かんでしまうサービス、
ポテンシャル・プロダクト
だということです。逆の言い方をすると、
小学校高学年が聴いただけで理解できないような単純明快なストーリーが語れない B to C 企業は、
フォーカスがぼけており、市場を独占するようなサービスは決して作れない、ということです。
日本の大企業には、自社のビジョンを語るときに、
パーパス
だのなんだの、50代のビジネスパーソンの私もよく理解できない難解な概念が出てくることがあるのですが
この記事であいまいさを指摘した「総合力」もしかり)、それはときに高尚すぎて、
結局、自分たちが本質的に何屋なのかわからないのでは?
と疑わしくなるときがあります。
特に B to C 事業では、シンプルな表現で自社の事業のストーリーを表現できない限り、
お客様が御社のサービス内容を事実上の一択として理解、選択することはありません。
単純なストーリーをとことん強化し、語り続けることは、コンペに対する結界、すなわち、
を創り出すのです。
私はこれが、Amazon.com がここまで成功した最大の要因だと思います。

このストーリーを強化するための Amazon.com の投資方針 RoR とは何か?

本記事のこの部分は書きかけです。

参考文献