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Netflix のゲームへの多角化は果たして成功するのか?

最近は強みだの多角化だのを語ってきましたので、

そのコンテクストで、ちょっと気になった記事がありましたので、

講評してみたいと思います。

事業再生のカギ:考え抜かれたピボット(事業転換)を決行した Netflix

Netflix/ネットフリックスは、

ゲーム会社から役員を雇い入れ、ゲーミングインダストリーに参入した、

と報道されています。

実はNetflix/ネットフリックスは、創業時の戦略が極めて賢いもので、名前からして、

「これからはオンデマンドの時代が来る!」

と2000年代初頭にすでに予測していたと思われる向きもあるため、

のちのち特集を組んで語ろうと思っているくらいです。管理人の提唱する、

「いきなり Future PMF をとりに行くのではなく、直近は、いちばん大きなTAMをとりに行き、

日銭を稼ぎつつ、顧客を教育してピボット、長期のFPMFの達成を狙う」

という「変形ロボット戦略」を確実に決行したと思われるからです。

その Netflix が多角化に打って出ました。

Netflix Surprises Subscribers With Two New Free Games

この記事で取り上げられているのは、加入者のみが遊べるゲームを投入している、というものです。

しかし……これはいささか安易にすぎないかあ?

ヘイスティングス氏、さすがに守りに入ってきた感があります。

事業再生/事業再編でやってはいけないこと:強みに基づかない多角化

既存事業を守るための施策

2億人という、日本の人口より多い(!)加入者を全世界に抱える動画業界の雄 Netflix ですが、

プロダクトライフサイクルが進んできて、

その成長は鈍化しています。要は、オンデマンド動画業界自体が

レッドオーシャン

になっているということですね。

それを踏まえたうえで、今回の施策は、

Netflixは、既存のサブスクライバーにゲームを無償で提供するという形でゲーミングインダストリーに参入

ということで、さっそく引っかかるのは、この動きが、どうみても、

 既存の顧客の流出(解約/Churn)を防ぐ

という、後ろ向きな目的をもつとしか思えないことです。

クロスセルの対象にならない新市場に打って出るというのは、

レッドオーシャン化した、しかしキャッシュカウの目減りを防ぐためなわけで、

守りの施策であって、攻めではない。

シナジー効果が不明

さらによくわからないのは、このゲームですが、

既存のサービスとのシナジーをほとんど感じない??

という点です。

これはやばげです。

例えば、Netflixで人気ナンバーワンの“Squid Game”の、それこそゲーム版を作るというのであれば、

これは大いに意味があると思います。

が、実際にNetflixがやったことは、

新規にゲーム企業を買収して(つまりわざわざケイパビリティを獲得して)、

自分たちが持っている動画コンテンツとは直接関係のないゲームを開発、

サービスに追加することでした。

事業開発のカギ:ストーリィの強化/amazon prime との比較

この施策は、Netflixが世間に語るストーリィを強化していません。

ここで、Netflixについで動画サブスクビジネスの2位のシェアを占める

Amazon prime video

の施策と、Netflixのそれを比較することで、それを証明したいと思います。

比較すべきポイントになるのは、以下の2点だと思います。

1. Amazon.comは、動画配信を本業にしていない

Amazon.comの売上のトップはマーケットプレイス、利益のトップはAWSです。

動画はいずれでも、次点以下です。

Amazon.comが映画制作会社Amazon Studios/アマゾンスタジオを造った理由は、実は、

「プライム会員を引き付けるため」

です。それ自体で稼ごうとは、実はあまり考えていない。

世界に2億人存するというプライム会員は、通常会員の3倍、売上に貢献するという

「ポチラー」

たちであり、Amazon.comにとっては、

無料/廉価の動画で彼らを釣ることで、プライム会員層を増やそう

というのが、真の狙いです。

その証拠に、ジェフ・ベゾス氏は、

Amazon Studiosが制作した映画がゴールデングローブ賞をとったら靴が売れる

という意味の、一見、奇妙な発言をしています。

2. ゲームは、本来的に、動画の視聴と顧客の時間を奪い合っている

サブスク型のNetflixにしてみれば、

自社の提供するサービスであれば、どちらが顧客の時間を占有していようが問題ない
カニバらないから、ゲームの導入で、Netflix上で過ごす時間が増えればそれでよい

という考え方でしょうが、ここで問題は、

ゲームが本業でないNetflixのそれより顧客が面白いと感じるゲームは、すでに世の中にあまたある

という事実です。

すなわち、他人(The Pokemon Company International、Zwiftといったゲーム会社)のふんどしで相撲をとろうとしています。

にわかで参入したゲームで、いままでゲームにさほど関心のなかった顧客にゲームに対する興味を抱かせ、

「Netflixを解約して、浮いた金でたくさんポケモンを楽しもう」

という加入者を出してしまったら、本末転倒そのものですが、

それは全くありえないシナリオではない、と懸念します。

一方でprime videoのほうは、買い物という行為との間で、

この「顧客時間の奪い合い」が全く発生しません。

今後の予想と私の施策

Netflixが仕掛けるこの新たな施策は、同社のコストをかさ上げし、利益率をひっ迫させます。

そのわりに、同社のサービスのプライムユーザをとどめ続けるには、

今のどっちつかずのサービスだけでは、魅力が乏しすぎます。

私なら、以下の2つの施策を実行します。

1. 同社のゲームをプレイする動画をユーザが手軽にアップするメカニズムを導入します。

アップロードは無料、他者のプレイを見るのは、月5本まで無料、6本目以降は有料。

ビュー数が一定の閾値を超えたプレイヤーの月額サブスク料金を、逆に減額します。

ゲーマーというのは自分でゲームする、ある意味以上に、他社がゲームする様子を見たいものです。

格ゲーのような、観戦しがいのあるゲームを導入して、

それをプレイする様子のシェアを上記のようにビジネス化することは可能なはずです。

2.  ゲームのコンテンツを既存の動画のメニューと結びつけます。

たとえば、Squid Gameのゲームを作る版権を持っているのは同社だけですから、

これを

Netflix以外の、プロのゲーム業者に作らせ(その方が面白いゲームができるから)、

Netflixのプラットフォーム上で無料ではなく有料で提供し、

ユーザがプレイしたらそのフィーの一定割合をそのゲーム業者に落とすようにすれば、

版権だけで儲かるビジネスが構築できます。

これこそ、事業コア=強みに基づいた多角化です。

終わりに

今回の Netflix の施策がどの程度効果を発揮できるのか?

見守っていきたいと思っています。