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新規事業のヒントになる事業戦略の違い:あなたはコーヒーショップで何をしたいですか?

イントロダクション

ミーティングの合間に時間ができたので、ベローチェでお茶してきました。西新宿にある店舗です。

ベローチェといえば、2018年には堂々の顧客満足度1位を記録していましたが、

COVID-19で売上が落ち込み、親会社のシャノアールは、

20年3月期の決算公告によると

最終損益は21億円の赤字

を出しました。

今年の4月には、この赤字のシャノアールを、

香港の投資会社ロングリーチが買収したことが話題になりました。

なぜ香港投資ファンドは、わざわざ赤字の「カフェ・ベローチェ」運営会社を買収したのか?

事業開発の理想的でない例/ベローチェの場合

以下は、COVID-19をしばらく横において、考察します。

あらためて店舗のサービスを体験し、観察してみて思ったのですが、

今となっては、ベローチェが顧客に何をしてもらいたいのか
(=いかなる jobs to be done を遂行してほしいのか)わからない??

というのが、シャノアール社には申し訳ないのですが、率直な感想です。

ベローチェといえば、

①一杯200円台の格安コーヒーのイメージがあり、

実際、200円にしては、ブレンドは悪くない味でした。

しかし、店内には、

②「サンドイッチは店舗で手作りしています」

と書かれています。

「えっ?ウリはそこなの???狙いは格安(disruption)じゃないの?」

と、戸惑うわけです。

店で手作りの方が高くつくでしょうから。

(↑これはもしかしたら間違っているかも。間違いでしたら、どなたかエビデンス付きで、

どのように間違っているか、ぜひお教えください。)

そして、これも正直言って、

③店内があまりきれいでない……。

壁が古ぼけて薄汚れていますし、テーブルも、汚くはないけれど、古い。

他のカフェチェーンのこざっぱりした店内になれている顧客だと、長居をあまりしたくないと感じる空間です。

(実際、私も20分足らずで出てしまった。)

ベローチェの競合と呼ばれている他社が、顧客に果たさせたい jobs to be done と比較してみましょう。

ここでマーケティング理論だと、このような分析結果しか出てきません

https://www.ryutsuu.biz/strategy/l070145.html

事業開発の成功例/「空間を含めた体験としての価値を届ける」Starbucks/スターバックスの場合

ハワード・シュルツ氏がその感動的な自伝 “Pour your heart into it” の中でアツく語っている通り、

スタバは、Starbucks Experienceすなわち、

『うまいエスプレッソを飲める、自宅でも会社でもない場所』という空間そのもの
=the 3rd place サードプレイス

を売っています。

コーヒーを売っているわけでは、実はない。

当時は米国で珍しかったスペシャリティコーヒーの豆を売る中小企業だった

Starbucks に入社したシュルツ氏は、

イタリアに旅行してカフェバーで直に体験してきた「サードプレイス」を

Starbucks で実現しましょう!と、経営陣に持ち掛けます。

しかし、

それは私たちの進みたい方向ではない

と断られたので、独立起業してカフェバーチェーンを創り(しかし Starbucks 社はシュルツ氏に投資)、

ビジネスをスケールさせたのちに、経営危機に瀕していた Starbucks をブランドごと買収します。

シュルツ氏のメッセージはしたがって明確で、

「最高のおもてなしをしますから、Starbucks の快適な店舗で、グランデ飲みながら、
読書にふけるなり、PCで作業するなり、ゆっくりご自由に」

といっており、

顧客の遂行すべきジョブ/a job to be done

は明確です。

これを、すこし別方向へ究極まで推し進めたのが、

「コーヒーに関する体験すべてを、エンタメとして徹底的に味わっていただきたい」

と、これもメッセージが明確な、「スターバックス リザーブ」です。

下記は、中目黒のスターバックス リザーブで私が撮影してきた写真です。

豆選び、焙煎、いくつかの手法のドリップ、はては袋詰めに至るまで、

視覚と嗅覚で体験できるコーヒーのテーマパークといった趣ですね。

ちなみにこの中目黒のスタバリザーブ、カフェのくせに入場券が必要、

コーヒー淹れていただくと一杯1000円超えるというとんでもない店です……。

ここでは、③のベローチェは全く勝負になりません。

事業開発における明確なビジョン/「コーヒーだけの真っ向勝負」COSTA/コスタの場合

私はこのブランドのコーヒー店が好きなんです。

みなさんあまりお馴れそみないかもです、もともとヨーロッパのカフェチェーンで、

私はヨーロッパの空港でこの店を見かけると

スタバでなくこちらに躊躇いなく入店していました。

何より、エスプレッソが抜群に美味しいのですね。

とても嬉しいことに最近、このチェーンが日本に入ってきました、しかも、自宅の近くにです。

いいえ、うちの近くには、店舗はないです。

キッチンカーで店舗がやってきて、駅前のスペースに止め、
そこに車がいるときだけ、COSTAの美味しいコーヒーが飲める

という塩梅てす。

私はヨーロッパが好きなのですが、ずっとおいそれと渡航できる状況ではなかったので、

キッチンカーを見かけた瞬間に、飛び込んでしましました。

久しぶりにあのコクのあるエスプレッソを自宅で堪能でき、幸せでした。

このCOSTAは、空間でなく、もう、コーヒーだけの真っ向勝負です。

しかもメニューもさほど色とりどりでなく、抹茶ラテとか余計なものを省いて、

ヨーロッパで成功している自信のある限定されたメニューを、ほぼそのまま持ち込んでいるようです。

しかも、お値段は、ヨーロッパの店舗同様、かなり、はります、正直。

これもメッセージはすこぶる明確で、

「本当に美味いコーヒーを淹れます、感動させます。
自宅なりオフィスなりでごゆっくり召し上がりください」

ですね。

オススメします、本当に美味しいので、お近くでキッチンカーを発見したときは是非飲んでみてください。

事業再生の可能性/ところでキッチンカーの話

少し話が逸れますが。

このキッチンカー、日本ではもっと注目されて良いリソース、チャネルだと思います。

キッチンカーベースの、こんなスタートアップも登場してきています。

東洋経済:「1日40万売る」フライドポテトベンチャーの正体

私はだいぶひねくれ者なので、

デリバリーとかゴースト ✖✖✖✖ ※とか、

もはや新規性を欠いて面白みがない思えてなりません。

(※以下のようなビジネスのことです。

  1. ゴーストキッチン:デリバリー専用飲食店のために、キッチンスペースを貸すサービス
  2. ゴーストカフェ:吉祥寺に、曜日ごとに出店店舗が変わるカフェがあります。
  3. ゴーストショップ: 入店する店舗を定期的に入れ替える、ショップスペース。
    京阪ストアが、駅の一角に、出店するスイーツの店舗が定期的に入れ替わる一画を造っています。)

せいぜいが、「DOORDASHがようやく仙台から日本に入ってきたから経験してみたいな」程度。

まず、

キッチンカーは、ゴーストキッチンの次にコストがかからず、リーンに向いています。

(まあ、私が French Fries のスタートアップ ASOMBROSO/アソンブロッソをたちあげるなら、

まずは、自宅で作って近所で売ってみると思いますが、

北海度はあまりに広く邸宅の密度が低いので、初期投資したのでしょう。)

次に、

店舗のスペースのなかなかない都会、

コンパクトシティ化に失敗した地方、

どちらでもフレキシブルに売れそうな場所に店を出現させられます。

そんなわけで、私が起ち上げようとしている会社も、もしかしたら、シェアオフィスを借りるのではなく、

「スタートアップが集積している場所にいきなり出現するフルEVのオフィスカー」

に依拠してもいいのかもです。

コメダ珈琲の場合

このチェーンについては最近ビックリさせられたので、別途詳細にレポします。

スタバ、タリーズ、ドトールいずれも苦戦する今、

一人気を吐いている理由がピンとくる体験をしました。

事業再生において重要な”体験のデザイン”:ベローチェの場合に戻ると

結論を申し上げると、ベローチェの場合は、

ベローチェがデザインした顧客の経験するオリジナルなストーリーが明確でなく、
マーケティングファネルの深いところまで引き込みにくいのがつらいです。

読者の方は、自社の事業を設計する際、

「いかに顧客に明確な体験をさせるか?」

に重きを置いていただきたいと思います。