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【新規事業開発のDONT’s】顧客の潜在ニーズなど、探しに行くな1.

 

事業開発やっているとよく聞く、知ったかぶりのセリフ。

事業を成功させるためには顧客が自分でも知らないうちに抱えている潜在ニーズを探りださないと!

……いや、ってさ、言うだけなら簡単ですよ、あなた。

私だけですかね、

そんなこたぁ百も承知だ、こっちが知りたいのは、
『誰でも、どんな時でも、潜在ニーズとやらを探り出せる方法』
なんだよ!

といいながら、相手の襟髪つかんでガタガタ揺さぶってやりたくなるのは?

大丈夫です(←なにが?)、こう言い返してちゃんとした答を用意できる人物は、

マーケティング理論に詳しい経営学者にも、

いつもクライアントに偉そうな口きいているコンサルファームのコンサルの中にも、

一人もいません

から。

潜在ニーズを再現可能かつ汎用的な方法で探り出す方法がないのはなぜでしょうか?それは、

潜在ニーズという概念が、科学的にはちっとも定義の役割を果たさない、役に立たない代物だから

です。

事業開発のトラブルのもと:コロコロ変化するニーズ

サツキのミッション:お父さんに、七国山病院に電話連絡してもらう

昨日はかぜっぴきの娘に付き合って「となりのトトロ」をもう一度見てしまいました。

子育てを経験した後だと、

いや、宮崎駿監督ってホントに子供動作や表情を見てる!

と、そんなところに変に感心してしまう作品です。

電話中のサツキ
管理人の娘画のサツキ

シーン ver 0. 特定の世帯にしか、固定電話がない

さて、サツキのところにカン太が

電報

を持ってきます。電報、知ってますか?

いや、おじさんの私も、さすがに葬儀の時ぐらいしか目撃したことないですわ。

舞台が昭和30年代ですからね。

七国山病院が、入院中のお母さんのことで話したいから、電話をかけてくれ、というメッセージです。

このとき観客は、

なるほど、 昭和30年代の田舎というのは、固定電話すら、一家に一台なかったのだ

とわかります。

サツキは知り合いのうちに駆け込んで、いま大学で勤務している、お父さんに電話します。

サツキのミッション遂行の利便性を高めていってあげよう

時代を進めて、段階的に、文明の利器で、サツキの遂行するミッションを簡単にしていきましょう。

シーン ver 1. 全世帯に(引越ししたばかりのサツキのうちにも)固定電話がある

まず、

サツキ「うちにも電話があってお父さんに連絡できたらいいなあ」

これはもう、顕在ニーズといっていいでしょう。

そうすると、シーンはこう書き変わります。

カン太がサツキのところへ来て、

おい、お前んちの電話、ずっと鳴ってたぞ

そして、サツキは自宅へ飛んで帰り、またかかってくるのを待つ。

シーン ver 2. 小学校高学年でもポケベルを持っている

え?

ポケベル

を知らない?まあ、若い人はわからないかあ。。。

携帯電話網が今みたいに全国展開していなくて、馬鹿みたいに高価だったころ、

短いメッセージだけを短く伝える機器が、中高生の間で流行ったのです。

いまでも、ケータイを持たせられない小学生向けの安全ポケベルみたいの、あります。

サツキ「誰かに電話しなきゃならないとき、どこにいても、機械が知らせてもらえないかしら」

ここから「潜在ニーズ」とやらの出番です。

サツキがこの種の機器の必要性を自分から明示的に知覚することがほぼ不可能だから。

シーンはこう書き変わります。

カン太「オマエンチノ デンワ ナッテタ」
サツキ「アリガトウ」

そして、サツキは自宅へ飛んで帰り、留守電をチェックする。

シーン ver 3. 小学校高学年でPHSを持っている

え?なんですと、PHS(ピッチ)を知らないですとー。

PHSとは「ポークひれステーキ」の略です。

↑というのは「こち亀」の両さんのギャグです。

本当は、

Personal Handyphone System

といって、固定電話への着信を家のどの部屋にいても受けられるシステムを

戸外まで拡張したケータイがあったんですよ。

というか今でも、医療従事者など、

「ケータイを使ってはまずい場所」

で働く人たちがインドアで使用していますね。

サツキ「どこにいてもかけられる電話って、作れないものかしら」

ポケベルもっている小学生にとっては、これは顕在ニーズでしょう。

シーンはこう書き変わります。

カン太から電話で「おい、お前んちの(固定)電話、ずっと鳴ってたぞ」
サツキ「ありがとう!」

そしてサツキは、家へ飛んで帰り、留守電をチェックする。

シーン ver 4. 小学校高学年でガラケーを持っている

ここからは機器の解説の必要がないと思いたいですね……

「東京リベンジャーズ」の中に、昔の自分に主人公が戻って、ガラケーを懐かしがるシーンが出てくるし。

サツキ「どこにいてもメッセージングしあえる機械って作れないものかしら」

これは潜在か顕在かビミョーなところですが、まあ、ニーズであることは間違いない。

カン太からメールで「おい、お前んちの(固定)電話、ずっと鳴ってたぞ」
サツキ「ありがとう!」

というかここまでくると、たぶん、このシーン自体が成立しないですね。

なぜなら、七国山病院は直接草壁タツオさんのケータイに電話すればよくなっているから。

そして、これも 「東京リベンジャーズ」 のように、

メイが行方不明にならなくて済む!すなわち、ストーリーが書き変わってしまう!

ニーズは変化するが、ジョブは全く変化しない

シーンニーズニーズの
種類
ジョブ/Her job to be done
1自宅にいながら、誰かと話せる顕在お父さんに七国山病院の人と話してもらう
2どこにいても、電話がかかってきたら、それと判る潜在お父さんに七国山病院の人と話してもらう
3どこにいても、誰かと話せる顕在お父さんに七国山病院の人と話してもらう
4(どこにいても、誰かとメッセージングできる)潜在/顕在(お父さんに七国山病院の人と話してもらう)
サツキのくるくる変化するニーズと変わらないジョブ

上の表を見て下さい。

ニーズ

とやらは、ころころ変化します。

しかし、ジョブは、最初から最後まで、一貫して全く変化しません。

これが将来、

「頭蓋に何か機器をつけて思念でコミュニケーションする」

という時代が来たとしても、

お父さんに七国山病院の人と話してもらえれば、極端な話、
カン太とわたし(サツキ)がいっさい介在しなくても、用事はすむ

ということ自体は、全く変わりません。

これは、以下を意味します。

ジョブの定義の方法をしっかり理解してしまえば、どんな状況でも、確実に同じジョブが顧客から引き出せる

さて、潜在ニーズに対する批判は、続きます

顧客の潜在ニーズなど、探しに行くな 2.