ユーザーインタビューは、製品やサービスのユーザーから、直接フィードバックを得るための重要な方法です。この記事では、ユーザーインタビューの基本的な手法から実践まで、特にその実践の際のコツをわかりやすく解説します。
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最初に、肝心かなめの指摘をしておきましょう。それは、世間では曖昧に語られることが多いけれど、
ということです。
例として、まずは B to Cで、マクドナルドのハッピーセットのことを考えてみましょう。
- ユーザー …… おまけの中身を気にかける子供
- 顧客 …… 子供に、コスパとタイパよく昼食を食べさせたい親
ということになります。
- 「ユーザー」からは、おまけの中身、どんなアニメブランドとタイアップしたら嬉しいか?などを訊きだすべきですよね。
- 一方で、「顧客」からは、ハッピーセットのメニュー、栄養分も含めた中身、子供に手にしてほしくないおまけに関して、配慮していることを訊きだすべきです。
これが、多くの製造業が行っているビジネスであるはずの B to B もなると、その違いは、はるかに露骨になります。B to B のビジネスに関われてきたあなたは、「担当者様はめちゃくちゃ気に入られていらしたのに、稟議を通す過程で引っかかった」とか、「購買部に阻まれて失注した」という悲劇的な経験を、一度ならずご経験なさっているはずです。
では、ユーザーのインタビューと、顧客=購入者 (Purchaser) のインタビュー、どちらが大切でしょうか?……両方大事ですが、両者で異なるのは、事業開発のフェーズで、実施する時期です。
ユーザーインタビューとは?
本サイトでは、下記のように、インタビューという活動を以下のように分けています。その中で、ユーザーインタビューは、下から2番目に位置付けらる、「ユーザビリティテスティング」に属すると、このサイトでは位置付けています。
| カテゴリ | サブカテゴリ | 実行フェーズ | 実行すること | |
| 1. Expert Interview/エキスパートインタビュー | 顧客発見初期 | 市場/技術のエキスパートに、
市場の概要や技術の用途を確認 |
||
| Discovery Interview | 2. Business Ethnography/ビジネスエスノグラフィ | 顧客発見初期 | 顧客と同じことをやってみる
顧客の行動を観察 |
|
| 3. JTBD Interview (Jobs To Be Done)/ジョブインタビュー | 顧客発見初期 | 顧客の「前回とった行動」および、その行動の意図を聞き取る | ||
| 4. Problem Interview/問題インタビュー | 顧客発見初期 | JTBD実行時、顧客の行動の「盛って回ったところ」「第三者から見て(も)『かったるい』ところ」の問題点を同定 | ||
| 5. Validation Interview/ソリューションインタビュー | 顧客発見初期 ~PMF |
製品(企画)に関する、感想を訊く | ||
| 6. Usability Testing/ユーザインタビュー | MVPローンチ後 | 製品の使い勝手を聞く
マジックミラー越しに使うところを観察 |
||
| 7. Exploratory Interview/マーケ目的の聞き取り調査 | 顧客創出以降 | 製品の魅力を誰にどう訴求すべきか?を確かめるインタビュー | ||
※このほかにも、例えばフォーカスグループインタビューといった手法もありますが、カテゴライズの基準、次元が異なるため、わざと記入していません。
ちなみに上記のカテゴリ分けについて関心のある方は、詳しくは以下の参考記事をご覧ください。
【関連記事】製造業の顧客ヒアリング実践のコツ!成果につながる質問項目とは
私は顧客インタビューを類型で少なくても1,300回は繰り返した事業開発者であり、その知識と経験を体系化して、「標記貴出願 特願2025-165649 「情報処理装置、及びプログラム」」という特許を出願していますが(2026年1月時点で審査中)、その特許に書かれているメソッドは、この体系に基づいています。
「ヒアリング」という和製英語は、下表でいう、「2. Business Ethnography/ビジネスエスノグラフィ」と、「7. Exploratory Interview/マーケ目的の聞き取り調査」を除くすべての領域で使用されるようなので、この記事では
という定義で話を続けます。
【関連記事】ビジネスにおける「顧客の声」をどう聞くべきか?エキスパートインタビューの功罪
ユーザーインタビューとは、特定のプロダクト関してユーザー(そのサービスや製品を直接使用する人)から直接フィードバックを得る方法です。これにより、商品やサービスの開発/改善を行う際、ユーザーの生の声を反映させることで、製品の良いところは伸ばし、悪いところは改善していくプロセスと考えてください。
顧客インタビューとの相違
| 対象 | サービスの支払いを行う関係者 | サービスを使用する関係者 |
|---|---|---|
| 事業開発のフェーズ | 0→1 | 10→100/それ以降 |
| 検証の対象 | 事業企画(プロダクトのコンセプト) | プロダクトそのもの |
| インタビューで探るべきもの | 顧客がとる行動と、そのときに発生する問題 | プロダクトを使用していてどこに不便さを感じるか? |
| アウトプット | ジョブマップ | カスタマージャーニー |
ここで重要なのは、事業開発の初期、まだその事業が成長への階段に差し掛かっていない段階で、
ということです。
ハッピーセットのたとえに戻りましょう。私のような、SDGsセンシティブな父親が、「いくらマックに専用ゴミ箱があっても、プラゴミになるおもちゃは選ばせない、子供がわざわざマックまでおもちゃを持ってくるとは限らないから」と決めていたとします(実際に私は、親としてそう決めています)。この前提で、ユーザーである私の娘にインタビューで
と尋ねることに、果たして意味などあるでしょうか……?このように、
ことが、事業を成長させていく施策を効果的に打っていく上で、非常に重要で、ユーザーインタビュー実施に関する、最初にして最重要なコツといっていいでしょう。つまり、ユーザーインタビューを行うべきは、お金を支払ってくれる初期のファンがある程度ついているプロダクトに関してである、といえるわけです。B to B にたとえて言うと、最初の10社以上が購入を決めてから、ユーザーインタビューをおっとり刀で始めても、間に合います。そして、そのユーザー数をさらに伸ばす(≠ユーザーを新規に獲得する)ことが、ユーザーインタビューでプロダクトに対するフィードバックを頂く目的になります。
その逆に、絶対にやってはいけないのは、まだほとんど売れてもいないプロダクトに関して、
と伺ってしまうことです。この質問は、「すみません、そのプロダクトは全くほしくないです」という、いわばメタレベルの、ユーザーや顧客の本音を封殺してしまい、結局、事業開発にマイナスの影響を与えます。
顧客インタビューに関心のある方は、下記の参考記事をお読みください。
【関連記事】生成AIをフル活用した新規事業インタビュー実践マニュアル ? 2026年最新版
ユーザーインタビューの重要性
ユーザーインタビューでは、直接ユーザーと対話することで、アンケートやデータ分析だけでは見えにくい、プロダクトを使用するときの詳細な顧客の行動を浮き彫りにすることができます。例えば、ユーザーがどのようなコンテキストで製品を利用しているのか、具体的に、それを使用するうえで、何に困っているのかを知ることができます。ユーザーからの生の声は、プロダクトの改善や、「えッ、そんな使い方をしているのか!」という新しいアイデアの発見に繋がりやすく、機能強化、UXデザインやマーケティングの訴求方法を支える重要な情報源となります。ユーザーインタビューをきちんと行えば、ユーザー中心の、プロダクトの設計が可能となり、ユーザー満足度の向上や競争力の強化に寄与します。
ユーザーインタビューの種類
ユーザーインタビューには、いくつかの種類があります。それぞれの手法は、目的や状況に応じて使い分けることが重要です。以下では、各手法の特徴とメリットについて詳しく説明します。
構造化インタビュー/非構造化インタビュー
あらかじめ質問項目をかっちり決めておくのが構造化インタビュー、逆に質問を原則としてその場で思いついていくのを非構造化インタビューとして分けることができますが、私は、このカテゴリー分けが好きではありません。1,300回以上の顧客インタビューを実施してきた私に言わせれば、いつだって、その中間の「半構造化インタビュー」になるに決まっているからです。ただ、事業開発のフェーズによって、構造化/非構造化、どちら寄りになるのか?が決まるだけです。プロダクトがまだできたてで、まだあまり売れていないときは、私なら、テーマだけざっくり決めて、ほぼほぼ非構造化インタビューで臨むのが常ですし、逆にすでに売れている製品を改善するためのインタビューなら、これとこれだけは必ず訊かなければ、と重要な質問項目はすべてあらかじめ定めて臨みます。
ユーザビリティ テスティング
UI/UXの専門家はユーザーインタビューとはいわず、ユーザビリティ テスティングとこの活動を呼びます。狭い意味でのユーザビリティ テスティングは、実際の製品やシステムを使用している際のユーザー体験を評価する手法です。この手法では、ユーザーに実際の製品やプロトタイプを操作してもらい、その過程で考えたこと、感じたことについてフィードバックを得ます。例えば、「このアプリの予約機能を使ってみてください。その際に感じた点を教えてください」といった形で進めます。このインタビュー手法のメリットは、実際の使用状況に基づいた具体的で詳細なフィードバックが得られる点です。
この種のユーザーが観察されていることを意識し、通常とは異なる行動をとる可能性もあります。このため、B to Cの製造業で私も経験したことがありますが、わざわざミラーグラスで覆われた部屋でこれを実施することもあります。開発側は、部屋の外でじっとその様子を観察するわけです。これを実施する際の、最大にして最も実行が困難なコツは、
です。これを実施するとしばしば驚くのですが、往々にして、ユーザーは目の前にあるボタンに気づきません!開発者側からすると、そんな馬鹿でかいボタンをどうやって見逃すのだ、と思うほど明白なインターフェースを、初めてのユーザーはおいそれと使いこなせないのです。インタビューアがどうしても自分自身を抑えきれず「ほら、そこにあるボタンですよ、押してみてください」と思わず誘導したら、データの信頼性が一瞬で吹っ飛んでしまうため、注意が必要です。
ユーザーインタビューの手順
ユーザーインタビューの成功を収めるためには、明確な手順を踏むことが大切です。以下のステップに従って、効果的なユーザーインタビューの実施を目指しましょう。
手順1. 実施目的および終了基準を明確にする
ユーザーインタビューの手順の最初は、実施目的を明確にすることです。何を知りたいのか、どのような問題を解決したいのか、を明確にし、何を達成したらインタビューを切り上げるべきかという判断基準についても、必ず社内で合意を取り付けましょう。私がインタビューした、ある商社の新規事業開発担当者は、「なんとなくインタビューはやっているが、どこで止めていいかわからないし、何のためにやっているのだかわからなくなってしまった」と、驚くべき告白をなさっておいででしたが、そのようなことにならないように、関係者全員で、目的と完了基準をしっかり合意しておいてください。
目的が明確であればあるほど、インタビューの方向性が定まり、収集するデータの質が向上しますし、いつまでも「ためにするためのインタビュー」をだらだら実施するほど非効率なこともないわけです。
注:ただし、弊社もそうですが、最近西海岸で
手順2. 対象者の要件を決めてリクルーティング
次に、インタビューの対象者となるユーザーの要件を決めます。具体的なペルソナを設定し、それに合致する候補者をリクルーティングすることが重要です。適切な対象者の選定は、得られるインサイトの質を大きく左右します。
ユーザー条件を決める
ユーザーインタビューの対象者を決める際には、まずターゲットとなるユーザーの条件を具体的に設定する必要があります。マーケティング理論の悪影響か、この条件を決めるときに、年齢、性別、職業などでセグメントを分け、その一つを選べといっている記事がウェブ上にちらほらあるようですが、ユーザーの条件を決める際、
なぜか?例えばあなたが、QBハウスのマーケティング担当者で、ユーザーインタビューをするとしましょう。あなたの決めたペルソナが、まだ給料をたくさんもらっていない若手のサラリーマンだったとします。ファッションなんかおよそ構いつけたためしのないおじさんはどうしますか?給料はうなるほどもらっている代わりに、カットする時間も惜しいほど多忙なので、いつも通勤途中でQBハウスに飛び込む、エリートの若手のビジネスマンは?いつも夕飯はカップラーメンすする、貧乏な学生は?いつも母親に連れられてやってくる子供はどうしましょうか、その母親のご意見は、女性だから聞くに値しませんか?……こうして、あまりにも多数の、おそらく重要であろうターゲットが、ぼろぼろこぼれます。
逆に代わりに何で絞るべきかというと、B to Cの場合は、基準はたった一つでよいのです。それは使用頻度です。コアユーザーでない人をインタビューすることは、ガーベジイン・ガーベジアウト(入力情報がゴミなので、出力もゴミになる)のリスクを高めます。簡単な例で言うと、テニススクールの上級クラスに毎週かよっているテニスマニアだが、ゴルフはごく付き合い程度で、年に2,3回ある会社のコンペに内心しぶしぶ参加するためにクラブを買ったという人に、当然ながら、ゴルフ用品のユーザーインタビューは行ってはいけないわけです。
B to Bの場合は、セグメンテーションを行うとしたら、産業単位です。「いろいろ手を広げると、何が売りだかよくわからなくなるから、とりあえずこのインダストリーだけは完全攻略する」と決めたら、その産業に属する企業ユーザーに対して、徹底的に的を絞ります。
インタビューイの人数を決める
適切なインタビュー人数を決めることも重要なステップです。一度のインタビューでの人数は、得られるインサイトの幅と時間効率のバランスを考慮して決定します。インタビューの目的やリソースに合わせて適切な人数を見極めることが必要です。
[参考文献] 阿佐見綾香 著, 「電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 : あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術」, PHP研究所刊
リクルーティングを実施する
あなたの製品を用いているユーザーに特典を出すことで、インタビューを受けてもよい、という人を集めます。無償はおススメできません。なぜなら、熱狂的なファンか、ぼろぼろに文句言いたいアンチしか、手を上げない可能性が高いからです。彼らからのフィードバックは正弦曲線の端っこ、すなわち外れ値であり、統計的に信用できないデータしか得られなくなります。
したがって、有償で実施することは大事ですが、Amazonのクーポンなど、金銭の報酬もおススメできません。なぜなら、今度は「さっさと適当に回答してインタビューを切り上げよう」とか、「本音はもっと文句言いたいけど、1万円ももらっているから、お世辞を言っておこう」とか、しばしば回答にノイズが紛れ込むからです。私のおススメは、御社にしか提供できない、業界の情報を集めて作った簡単なレポートやホワイトペーパーにまとめ、インタビューに応じてくれたユーザーにだけお渡しすることです。
手順3. 事前準備を行う
効果的なユーザーインタビューを行うためには、事前準備が欠かせません。事前準備を通じて、インタビューの目的や質問内容を明確にし、スムーズな進行を確保しましょう。
質問票を作成する
上で述べた構造化インタビューに近い方針でいく、と決めたときは、質問票の作成はユーザーインタビューの成功に直結する重要なステップです。まず、インタビューの目的に基づいて、知りたい情報を明確にしましょう。次に、その情報を引き出すための質問をリストアップします。
具体的な質問例としては、
などです。具体的には、この記事の下の方の「ユーザーインタビューの成功のコツ」を参考に、質問を作ってみてください。
第三者の視点、もしくはそれがないときは生成AIであってもかまいませんが、からの質問票へのフィードバックを受けることで、質問の「イケてないところ」を修正できます。最終的に、質問の数が多すぎた場合は、それを削るのではなく、優先順位をつけておきましょう。インタビュー時間内に収めるためです。
手順4. ユーザーインタビューを実施する
ユーザーインタビューを実施する際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。まず、インタビューの場を準備し、参加者がリラックスできる環境を整えましょう。リアルで行うなら、静かで、インタビューに集中できる場所を選ぶことが大切ですが、あまりにシンと静まりかえった場所は逆に緊張をもたらすため、バランスを考えましょう。
インタビューの初めに自己紹介を行い、インタビューの目的やその重要性について簡潔に説明します。また、参加者のプライバシー保護についても触れ、録音/録画の許可を取ることを忘れずに行いましょう。録音/録画の許可が下りたときも、手書きでノートは必ずとりましょう。メモをとることでインタビューア側の脳が活性化され、質問リストになかった的確な質問を思いつくことが多々あるからです。
インタビューが終わったら、参加者へ感謝の意を伝え、改めてフィードバックが今後の改善に直結することを伝えます。
手順5. 結果を分析し、改善につなげる
ユーザーインタビューを実施した後、得られた結果を分析することが重要です。ChatGPTのGPTsにテキストや動画を入力して、「顧客大代表」のペルソナを造り、主にプロダクトの改善点をビシビシ指摘してもらいます。
次に、抽出した情報をもとに具体的なアクションプランを立てます。ユーザーがプロダクトを使用する上で最もストレスを感じていると頃から順番に、プロダクトを改良する計画を立てます。そのとき、改善のためのリソースもブックしておきます。
最終的には、改善点を明確にし、組織全体で共有することが大切です。関連部署と連携しながら、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて軌道修正を行うことが成功の鍵です。
ユーザーインタビューの結果を活用することで、ユーザーの真のニーズに応えられる製品やサービスを提供でき、企業の競争力向上に繋がります。
ユーザーインタビューの成功のコツ
ユーザーインタビューを成功させるためには、いくつかのコツがあります。以下では、その具体的な方法をご紹介します。
原則として「無前提質問」にする:オープンクエスチョンであればいいというものではない!
質問の作り方について、よく
と説かれるのですが、そこは実は本質ではありません。なぜなら、「オープンクエスチョンだが、地雷を踏んでいる質問」というのは掃いて捨てるほどあるからです。その典型例は、上で挙げた、「どんな機能がついていたら購入なさいますか?」です。これはオープンクエスチョンですが、「そもそも最初からこの製品には何の興味もないんだけど、いいにくいな……」という、顧客の本音を先回りして封殺する可能性があると、上で説明しました。以下は、AIが授業の感想を訊くというPoCの内容を報告する、ある(とても悪い意味で)驚くべき論文に書かれていた、ユーザーインタビューの質問のうち、冒頭に示されていた質問です。
これ、私が学生だったら、このように「プレッシャーをかけられた?!」と、たとえ質問者がAIであっても、解釈するでしょう。
その結果どうするでしょうか?まず間違いなく、友達のノートを慌てて見せてもらって、適当に回答しますね。……さて、こんなことで、意味のあるデータが採れるでしょうか?
いちばん重要なのは、オープン/クローズではなく、「無前提質問にすること」です。質問そのものに含まれる、質問者側の先入観のすべてを排除するのです。そうして初めて、フォルスポジティブを予防する最初の一歩が踏み出せたことになります。
例えば、「この機能は便利ですよね?」はクローズドクエスチョン(Closed-ended Question)で最初から失格だということはすぐわかりますが、オープンクエスチョンの「この機能はどんなところが便利ですか?」も、同等以上に、ユーザーに迎合を要求している「地雷質問」です。それではというので、「この機能を使ってみて率直にどうでしょうか?」などと訊いても、もしその機能が絶望的にイケてない場合であっても、あなたのメンツをつぶすことを恐れたユーザーは、「そこそこいけてますよ」程度の微温的な反応を返すでしょう。もし本気で、その機能の満足度を正確に測りたいのだとしたら、「諸般の事情により、この機能は近々システムから削除せざるを得なくなる可能性が高いのですが、そうなったらどの程度困りますでしょうか?」と訊くしかありません。この場合はほぼ間違いなく本音がかえってきます。
回答を誘導しない
ユーザーインタビューの際に気を付けるべきことは、回答を誘導しないことです。誘導的な質問は、回答者が本音を言いづらくなる原因となるためです。同様に質問の中に「例えばこんな感じ」と、回答の例を混ぜることも、原則的に厳禁です。こんなことをされたら、ユーザーは、質問されて浮かんだ「本命の答え」を差し置いて、その例に飛びつきます。
上に書いた通り、原則として「無前提質問」をしていれば、これらのフォルスポジティブを避けることはできるはずですが、実は、強固な前提があっても、確実にこれを回避できる強力な訊き方があります。自社製品の欠点について根掘り葉掘り聞くことです。例えば「この機能があることは全然知らなかったとおっしゃいましたが、普段それは、どういう使い方をなさっているからでしょうか?」とか、「この機能はほとんど使わないとおっしゃいましたが、普段どのような手順で業務をされているからでしょうか?」。このような質問なら、ユーザーは安心して本音を口にしてくれるはずです。その結果、いらない機能を削ってUIを洗練させるだけでなく、新たに必要な機能を追加することもできて、非常に意義深いインタビューになります。
これらの工夫により、ユーザーからより本音に近い意見や感想を引き出すことができ、データの信頼性が向上します。
繰り返しますが、無意識であっても、決して、ユーザーに自社製品を褒めさせようとしてはいけません(注:「お客様の声」を広報で使用したい場合は別)。
カスタマージャーニーを完成させることを目的にする
カスタマージャーニーを活用することで、ユーザーインタビューの情報を、より網羅的に実践し、もれなくインサイト(洞察)を得ることが可能です。カスタマージャーニーは、顧客が製品やサービスを認識し、興味を持ち、購入し、利用するまでの一連のプロセスを視覚化したものです。あらかじめ開発者側でプロダクトのカスタマージャーニーを、「えいや」でいいので仮説として作っておいて(そうすることで予めユーザーの動きを時系列的に整理できます)、それを、ユーザーの反応を見ながら、修正していく感じです。こうすることで、漏れなく情報を収集することができます。例えば、購入前の検討段階では、顧客がどのような情報を求めているかを詳しく聞くことで、マーケティング戦略の改善につなげることができます。また、プロダクト利用のプロセスを克明に追いかけることで、UI/UX改善のヒントを得ることも可能です。
また、この方法には、別のメリットもあって、ユーザーインタビューの進捗状況を、ある意味定量的に、上層部や周囲に共有することができます。報告に使うのであれば、仮説の部分と、複数のユーザーのご意見が一致した部分を、色分けしたほうがいいでしょう。
以下は、私が飯田橋のコンビニの中にある、テレキューブを利用したとき、私自身が体験したカスタマージャーニーです。参考にしてみてください。

テレキューブ_カスタマージャーニー2

テレキューブ_カスタマージャーニー1

テレキューブ_カスタマージャーニー3
ユーザーインタビューの結果を活用する方法
ユーザーインタビューの結果を効果的に活用することで、貴重なフィードバックを具体的なアクションに結びつけることができます。
企業戦略に反映させる
ユーザーインタビューの結果を企業戦略に反映させるためには、第一に得られたフィードバックを分析し、共通する課題やニーズを抽出することが重要です。
例えば、複数のユーザーから製品の使いにくさについて同様の指摘があった場合、それは重要な改善ポイントとして優先的に対応する必要があります。
次に、抽出した結果をもとに具体的な戦略を立てます。この際、全体のビジネス戦略や目標とも整合性を保ちながら計画を策定することが大事です。
最後に、戦略を社内に浸透させ、各部門が一体となって動けるようにすることが成功の鍵です。これにより、ユーザーの声を企業活動に直接反映させることができます。
具体的な改善点に変える方法
ユーザーインタビューから得たフィードバックを具体的な改善点に変えるためには、まずヒアリング内容を詳細に分析することが必要です。
ポイントは、単なる意見の羅列に終わらせず、各フィードバックが持つ背景や文脈を深掘りすることです。
例えば、「アプリが使いづらい」という意見があった場合、その具体的な箇所や原因を特定します。
次に、特定した改善点をもとに優先順位をつけ、リソースの割り当てを行います。
これには、影響力の大きさや改善の容易さなどの基準を設定します。さらに、改善策を具体的なアクションプランに落とし込み、進捗状況を定期的に確認・調整することで、継続的な改善が可能になります。
結果を関係者に共有する方法
ユーザーインタビューの結果を関係者に共有する際には、情報を適切にまとめ、理解しやすい形式で提供することが重要です。まず、インタビューの要点や主要なフィードバックを簡潔にまとめた報告書を作成します。この報告書には、具体的な事例や引用も含めることで、フィードバックの信憑性と緊急性を伝えやすくします。次に、報告書を社内の関係者全員に配布し、共有します。この際、ミーティングを開いて直接説明することで、重要なポイントがしっかりと伝わるようにします。
定期的に進捗状況を共有し、フィードバックを求めることで、全員がインタビュー結果に対して主体的に関与できる環境を作ります。そして、あらかじめ定めておいた完了基準を満たしたら、得られたインサイトを、最終報告書にまとめます。
まとめ:ユーザーインタビューの実施で得られるメリット
ユーザーインタビューを実施することで得られるメリットは非常に多岐にわたります。
まず、ユーザーのニーズや要求を直接把握することができるため、製品やサービスの改善点を的確に見つけることが可能です。これにより、ユーザーエクスペリエンスの向上が期待でき、顧客満足度も高まります。
さらに、ユーザーインタビューを通じて得られたフィードバックは、企業戦略にも活用できます。具体的なデータを元にした意思決定が可能になり、より効果的なマーケティング戦略の立案にも役立ちます。チーム内で共有することで、全員の理解を深め、一致団結してプロダクトの改善に取り組むことができます。
最後に、ユーザーインタビューは長期的な関係性の構築にも寄与します。ユーザーとのコミュニケーションを通じて信頼関係が深まり、リピーターやブランドロイヤルティの強化につながります。これらのメリットを最大限に活用するために、事前準備や適切なフィードバックの分析が不可欠です。
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イントラプレナーとして、合計8つの新規事業開発を経験。1,300回に及ぶ顧客インタビューの実施経験を持つ。生成AIによるアイディエーションの世界初のサービスである、「AIディアソン」を、2023年の1月に上梓。それ以降も次々とAIサービスをローンチしている。
翻訳書の発行される前の版の、The Four Steps to the Epiphany (邦訳「アントラプレナーの教科書」、リーンスタートアップの下敷きになった本)を所持するほど、古くから事業開発の方法論を考究。最近はアメリカで最新とされるプロダクト開発のメソッドである、継続的発見(Continous Discovery)手法を取り入れ、エフェクチュエーションと組み合わせて事業開発に応用。
