ユーザーインタビューの手法:基本から実践まで

ユーザーインタビュー

ユーザーインタビューの手法:基本から実践まで

ユーザーインタビューは、製品やサービスのユーザーから直接フィードバックを得るための重要な方法です。この記事では、ユーザーインタビューの基本的な手法から実践までをわかりやすく解説します。具体的なステップを踏むことで、ユーザーの真のニーズを引き出し、プロダクトの改善に役立つ情報を得られます。 まず、ユーザーインタビューの目的を明確にすることが重要です。なぜユーザーインタビューを実施するのか、その目的を明確にすることで、インタビューの設計が容易になります。 次に、対象者のリクルーティングです。適切な対象者を選ぶことで、得られるデータの質が向上します。必要な準備を整え、質問票を作成した後は、インタビューの実施に移ります。実施中は、オープン・エンド型の質問を心掛け、回答者の本音を引き出すための工夫が必要です。 最後に、インタビュー結果を分析し、具体的な改善点に反映させる作業が待っています。結果をチームや関係者と共有することで、組織全体の理解を深め、ユーザーエクスペリエンスの向上に繋げましょう。 このガイドを参考にすることで、ユーザーインタビューの手法を効果的に活用し、製品やサービスの質を向上させることができます。

ユーザーインタビューとは?

ユーザーインタビューとは、特定のサービスや製品に関してユーザーから直接フィードバックを得る方法です。これにより、ユーザーのニーズや期待を詳細に理解することができます。

ユーザーインタビューの重要性

ユーザーインタビューは、製品やサービスの改善において非常に重要な役割を果たします。直接ユーザーと対話することで、アンケートやデータ分析だけでは見えにくい微細なニーズや課題を明確にすることができます。例えば、ユーザーがどのようなコンテキストで製品を利用しているのか、具体的に何に困っているのかを知ることができます。また、ユーザーからの生の声は、プロダクトの改善や新しいアイデアの発見に繋がりやすく、UXデザインやマーケティングの意思決定を支える重要な情報源となります。ユーザーインタビューをきちんと行えば、ユーザー中心の設計やサービス提供が可能となり、ユーザー満足度の向上や競争力の強化に寄与します。このように、ユーザーインタビューを通じて得た洞察は、企業全体の成功に直結する重要なデータです。

ユーザーインタビューの種類

ユーザーインタビューには、問題発見インタビュー、解決策確認インタビュー、ユーザーエクスペリエンスインタビューの3種類があります。それぞれのインタビュー手法は目的や状況に応じて使い分けることが重要です。以下では、各手法の特徴とメリットについて詳しく説明します。

なお、問題発見インタビューと解決策確認インタビューの違いに関しては、公私を分けて考えなけば、累計でゆうに1,300回を超えるインタビューを実施してきた私の視点から顧客インタビューで陥りがちな罠とその回避策を丁寧に具体的に説明した記事「事業開発に必須:「潜在ニーズ」を見つけ出す顧客インタビュー」をご覧ください。

問題発見インタビュー customer discovery interview

問題発見インタビューは、ユーザーが抱える問題を探るための手法です。このインタビュー手法では、ユーザーの日常的な行動パターンや、行動する際に発生する不満、課題などを深く掘り下げることを目的としています。

注:このインタビューは「(潜在)ニーズ」の発見を目的としません。なぜなら、それを俗人的にならず再現性をもって実行する方法論はいまだ確立されていないから、です。詳しくは、ジョブ理論を詳説した記事「【新規事業開発のDONT’s】顧客の潜在ニーズなど、探しに行くな」をご覧ください。

特に新しい製品やサービスを開発する初期段階で非常に有効です。例えば、「日常生活でどのような不便を感じていますか?」といった質問を通じて、ユーザーの本質的な問題を理解することができます。このアプローチの長所は、市場に存在しない新たな価値提案を発見できる可能性がある点です。

解決策確認インタビュー solution interview

解決策確認インタビューは、提案した解決策がユーザーのニーズを満たすかを確認するための手法です。このインタビュー手法は、製品コンセプトや、モックアップなどの具体的なプロトタイプをユーザーに提示し、その反応や評価を収集することに焦点を当てています。例えば、「このサービスを使うことで、先ほど話していただいた問題は解決できそうですか?」といった質問をすることで、解決策の有効性を検証できます。この手法のメリットは、開発リソースを本格投入する前に、解決策の方向性を確認できる点です。ただし、ユーザーからのポジティブなフィードバックが必ずしも実際の購買行動に繋がるとは限らないため(いわゆるフォルスポジティブ)、結果の解釈には注意が必要です。

ユーザビリティインタビュー User experience interview

ユーザビリティ インタビューは、実際の製品やシステムを使用している際のユーザー体験を評価する手法です。この手法では、ユーザーに実際の製品やプロトタイプを操作してもらい、その過程での思考や感情、使いやすさなどについてフィードバックを得ます。例えば、「このアプリの予約機能を使ってみてください。その際に感じた点を教えてください」といった形で進めます。このインタビュー手法のメリットは、実際の使用状況に基づいた具体的で詳細なフィードバックが得られる点です。しかし、テスト環境と実際の使用環境が異なる場合もあるため、その差を考慮した分析が必要です。また、ユーザーが観察されていることを意識し、通常とは異なる行動をとる可能性もあります。さらには、インタビューアがどうしても自分自身を抑えきれず「ほら、そこにあるボタンですよ、押してみてください」と思わず誘導して、データの信頼性を低下させてしまうこともしばしば起こるため、注意が必要です。

フォーカスグループインタビューとその注意点

フォーカスグループインタビューは、複数のユーザーを同時に集めて行うグループディスカッション形式のインタビュー手法です。多様な意見を短時間で収集できる効率性がメリットですが、いくつかの重要な欠点があることを認識しておく必要があります。

第一に、集団でインタビューを実施するため、同調圧力により、自分の本音がなかなか口にできないという欠点が挙げられます。グループ内で出た意見がそのグループの中でメジャーになってしまうと、他の参加者は自分の本来の考えを抑制し、多数派の意見に合わせてしまう傾向があります。これにより、本当の個人の意見が隠れてしまい、得られたデータの信頼性が低下します。

第二に、最新の心理学的研究で、人は周囲の人の意見を自分自身の意見だと錯覚してしまう現象が報告されています。つまり、グループディスカッションで他者の意見を聞いた後、それが最初から自分の考えだったと誤って認識してしまうことがあるのです。そして、インタビューが終わって帰宅し、いざそのサービスを使おうとする段になると、自分の本音を思い出して使用しようとしない、となるわけです。

第三に、上下関係による発言の抑制です。特に上司と部下が同じグループに含まれる場合、部下は上司の意見に反する発言をためらい、本音を語らない傾向があります。これは企業内で実施するインタビューで特に問題となります。

これらの欠点を考慮すると、フォーカスグループインタビューは補助的な手法として位置づけ、個別インタビューと組み合わせて活用することが望ましいでしょう。

ユーザーインタビューの手順

ユーザーインタビューの成功を収めるためには、明確な手順を踏むことが大切です。以下のステップに従って、効果的なユーザーインタビューの実施を目指しましょう。まず最初に実施目的を明確にし、次に対象者の要件を決めてリクルーティングを行います。さらに事前準備を行い、実際のインタビューへと進んでいきます。最後に結果を分析し、今後の改善点に活かします。

手順1. 実施目的を明確にする

ユーザーインタビューの手順の最初は、実施目的を明確にすることです。何を知りたいのか、どのような問題を解決したいのかを明確にしましょう。目的が明確であればあるほど、インタビューの方向性が定まり、収集するデータの質が向上します。

手順2. 対象者の要件を決めてリクルーティング

次に、インタビューの対象者となるユーザーの要件を決めます。具体的なペルソナを設定し、それに合致する候補者をリクルーティングすることが重要です。適切な対象者の選定は、得られるインサイトの質を大きく左右します。

ユーザー条件を決める

ユーザーインタビューの対象者を決める際には、まずターゲットとなるユーザーの条件を具体的に設定する必要があります。この条件には、年齢、性別、職業、使用している製品やサービスの頻度など、インタビューの目的に応じた項目が含まれます。たとえば、スマートフォンアプリのユーザビリティ調査を行う場合は、アプリの利用頻度や過去の使用経験などが重要な条件となります。また、複数の条件を組み合わせることで、より具体的なターゲット設定が可能です。

インタビューイの人数を決める

適切なインタビュー人数を決めることも重要なステップです。一度のインタビューでの人数は、得られるインサイトの幅と時間効率のバランスを考慮して決定します。インタビューの目的やリソースに合わせて適切な人数を見極めることが必要です。新規事業開発初期に、顧客のかかえる問題を発見するために実施する問題発見インタビューの場合、最低でも30人のインタビューイに聞き取り調査を行うことが必要となります。なぜなら統計的にも経験的にも、母集団としてその程度の数を集めない限り、有効なインサイトは得られないことが判っているからです。

[出所] 阿佐見綾香 著, 「電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 : あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術」, PHP研究所刊

手順3. 事前準備を行う

効果的なユーザーインタビューを行うためには、事前準備が欠かせません。事前準備を通じて、インタビューの目的や質問内容を明確にし、スムーズな進行を確保しましょう。

質問票を作成する

質問票の作成はユーザーインタビューの成功に直結する重要なステップです。まず、インタビューの目的に基づいて、知りたい情報を明確にしましょう。次に、その情報を引き出すための質問をリストアップします。オープン・エンド型の質問を中心に組み立てることで、回答者の自由な意見や考えを引き出しやすくなります。

具体的な質問例としては、「この製品を使って良かった点は何ですか?」や「サービスの改善点を教えてください」といったものがあります。また、質問の順序も重要です。初めは回答しやすい質問から始め、徐々に深掘りするような形式にすると、インタビューがスムーズに進みます。

さらに、質問項目をピックアウトした後は、同僚や関係者にレビューしてもらいましょう。第三者の視点からのフィードバックを受けることで、質問のリストアップの漏れや不明確な表現を修正できます。最終的には、質問の数が多すぎないように調整し、インタビュー時間内に収まるようにしましょう。

手順4. ユーザーインタビューを実施する

ユーザーインタビューを実施する際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。まず、インタビューの場を準備し、参加者がリラックスできる環境を整えましょう。静かで、インタビューに集中できる場所を選ぶことが大切です。

インタビューの初めに自己紹介を行い、インタビューの目的やその重要性について簡潔に説明します。また、参加者のプライバシー保護についても触れ、録音の許可を取ることを忘れずに行いましょう。

インタビュー中は、オープン・エンド型の質問を中心に投げかけることで、参加者の本音や考えを引き出しやすくなります。具体的な状況や経験に関する質問をすると、詳細でリアルなフィードバックを得られることが多いです。例えば、「そのとき、どのように感じましたか?」や「具体的にはどのような手順を踏みましたか?」といった質問が有効です。

インタビューが終わったら、参加者へ感謝の意を伝え、改めてフィードバックが今後の改善に直結することを伝えます。最後に、インタビュー結果をメモや録音などで記録しておき、後の分析や改善策の検討に活用できるように準備しましょう。

手順5. 結果を分析し、改善につなげる

ユーザーインタビューを実施した後、得られた結果を分析することが重要です。まず、インタビューから収集したデータを整理し、重要なポイントを抽出します。この時、回答内容をカテゴリー別に分けてグループ化することで、共通点やパターンを見つけやすくなります。たとえば、多くのユーザーが特定の機能について不満を述べている場合、その問題点を重点的に改善する必要があります。

次に、抽出した情報をもとに具体的なアクションプランを立てます。ユーザーのフィードバックをどのように製品やサービスに反映させるかを計画することで、改善策を導き出します。また、改善のためのリソースやスケジュールも確認しておくとスムーズに進行できます。

最終的には、改善点を明確にし、チーム全体で共有することが大切です。関連部署と連携しながら、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて軌道修正を行うことが成功の鍵です。ユーザーインタビューの結果を活用することで、ユーザーの真のニーズに応えられる製品やサービスを提供でき、企業の競争力向上に繋がります。

ユーザーインタビューの成功のコツ

ユーザーインタビューを成功させるためには、いくつかのコツがあります。以下では、その具体的な方法をご紹介します。

質問はオープン・エンド型で行う

ユーザーインタビューで効果的な情報を引き出すためには、質問の形式が重要です。特にオープン・エンド型の質問をすることが推奨されます。オープン・エンド型の質問とは、回答者が自由に意見や感想を述べることができる形の質問です。例えば、「その製品を使ってどう感じましたか?」といった質問がこれに当たります。閉じられた質問である「その製品は好きですか?」では「はい」や「いいえ」の一言で終わってしまうことがありますが、オープン・エンド型の質問であれば、回答者の詳細な意見や背景が分かります。こうすることで、ユーザーの真のニーズや感情を深掘りし、より具体的な改善点を見つけ出すことができるのです。

回答を誘導しない

ユーザーインタビューの際に気を付けるべきことは、回答を誘導しないことです。誘導的な質問は、回答者が本音を言いづらくなる原因となるためです。例えば、「この機能は便利ですよね?」といった質問をすると、回答者は「はい」と答えることで無意識に迎合してしまう可能性があります。これを避けるためには、「この機能についてどう思いますか?」といった中立的な質問を心掛けることが大切です。また、質問の中に答えが含まれないように注意しましょう。これにより、ユーザーからより本音に近い意見や感想を引き出すことができ、正確なフィードバックを得ることが可能になります。

回答者の本音を引き出す

ユーザーインタビューの目的は、回答者の本音を引き出すことにあります。それには、回答者が話しやすい環境を整えることが重要です。インタビューの最初にリラックスできる雰囲気を作り、アイスブレイクの質問を用意すると良いでしょう。さらに、回答者の発言をしっかりと聞き、適度に相槌を打つことで、彼らが安心して話せる状況を作り出します。また、沈黙を恐れず、回答者が考える時間を確保することも大切です。その際、追加の質問をする際には、過去の回答を踏まえて具体的なエピソードを尋ねると、より深い洞察が得られるでしょう。これにより、回答者の本音を自然と引き出すことができ、ユーザーの真のニーズや課題を把握できます。

ユーザーインタビューの結果を活用する方法

ユーザーインタビューの結果を効果的に活用することで、貴重なフィードバックを具体的なアクションに結びつけることができます。このセクションでは、その具体的な方法について紹介します。

企業戦略に反映させる

ユーザーインタビューの結果を企業戦略に反映させるためには、第一に得られたフィードバックを分析し、共通する課題やニーズを抽出することが重要です。例えば、複数のユーザーから製品の使いにくさについて同様の指摘があった場合、それは重要な改善ポイントとして優先的に対応する必要があります。次に、抽出した結果をもとに具体的な戦略を立てます。この際、全体のビジネス戦略や目標とも整合性を保ちながら計画を策定することが大事です。最後に、戦略を社内に浸透させ、各部門が一体となって動けるようにすることが成功の鍵です。これにより、ユーザーの声を企業活動に直接反映させることができます。

具体的な改善点に変える方法

ユーザーインタビューから得たフィードバックを具体的な改善点に変えるためには、まずヒアリング内容を詳細に分析することが必要です。ポイントは、単なる意見の羅列に終わらせず、各フィードバックが持つ背景や文脈を深掘りすることです。例えば、「アプリが使いづらい」という意見があった場合、その具体的な箇所や原因を特定します。次に、特定した改善点をもとに優先順位をつけ、リソースの割り当てを行います。これには、影響力の大きさや改善の容易さなどの基準を設定します。さらに、改善策を具体的なアクションプランに落とし込み、進捗状況を定期的に確認・調整することで、継続的な改善が可能になります。

結果を関係者に共有する方法

ユーザーインタビューの結果を関係者に共有する際には、情報を適切にまとめ、理解しやすい形式で提供することが重要です。まず、インタビューの要点や主要なフィードバックを簡潔にまとめた報告書を作成します。この報告書には、具体的な事例や引用も含めることで、フィードバックの信憑性と緊急性を伝えやすくします。次に、報告書を社内の関係者全員に配布し、共有します。この際、ミーティングを開いて直接説明することで、重要なポイントがしっかりと伝わるようにします。また、デジタルツールを利用して、ビジュアルを多用したプレゼンテーションを行うことも効果的です。定期的に進捗状況を共有し、フィードバックを求めることで、全員がインタビュー結果に対して主体的に関与できる環境を作ります。

まとめ:ユーザーインタビューの実施で得られるメリット

ユーザーインタビューを実施することで得られるメリットは非常に多岐にわたります。まず、ユーザーのニーズや要求を直接把握することができるため、製品やサービスの改善点を的確に見つけることが可能です。これにより、ユーザーエクスペリエンスの向上が期待でき、顧客満足度も高まります。

さらに、ユーザーインタビューを通じて得られたフィードバックは、企業戦略にも活用できます。具体的なデータを元にした意思決定が可能になり、より効果的なマーケティング戦略の立案にも役立ちます。チーム内で共有することで、全員の理解を深め、一致団結してプロダクトの改善に取り組むことができます。

最後に、ユーザーインタビューは長期的な関係性の構築にも寄与します。ユーザーとのコミュニケーションを通じて信頼関係が深まり、リピーターやブランドロイヤルティの強化につながります。これらのメリットを最大限に活用するために、事前準備や適切なフィードバックの分析が不可欠です。

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