と尋ねました。私は赤ちゃんが大好きですが、それ以上に、自分の息子を褒められると喜ばない親はいないと思ったのです。案の定、クライアントのお客様は、実に快く顧客インタビューを引き受けてくださいました。
この私のお声掛けは、日本語では何と呼べばいいでしょうか?少なくとも、私の語彙では、
と呼ばざるを得ません。しかし、このように表現すると、不思議なことに、私は倫理(なんの?)に反し、女性読者のあなたがこの記事から離れていくリスクを冒すしていることに日本では何故かなるのです。
源部長はなぜ、事件とは一見関係ないことばかり話し続けたのか?
400万部のベストセラー警察漫画「ハコヅメ」のメインキャラの一人、取り調べの天才、源巡査部長
私は時々、顧客インタビューを、クライアントのお客さんに対してデモすることがあるのですが、その際に、モノが我々の行うそれとは全く違う、という評価を受けることが多いです。
その中でも一番私が嬉しかった評価は、東邦ガス様のKマネージャーの
という一言です。
そのような高評価を受ける私の顧客インタビューの基礎をなしているのが、
という技術です。
そしてこの瞬間ラポールこそ、冒頭に引用したインタビューで、私がいきなり赤ちゃんの話題から入った理由なのです。
この節では、漫画の一エピソードを切り取って、ラポールの意味について考えていただこうと思います。
源の勤務する警察署は、あるとき、違法な薬物の売買に携わったと目される男を逮捕します。
その男の内縁の妻ユカリを、源は取り調べることになります。
源はどういうわけか、「違法な薬の取引について知っていることを喋れ」という意味の質問を全くしないまま、取り留めもない身の上話ばかり、ユカリに喋らせます。
源の補助についていた主人公、交番勤務の川合は、源の相手の心に入り込んでいく圧倒的なスキルに感服し、
と、舌を巻きます。
しかし、身上調書ばかり分厚く積み上げて、一向に本質に迫らない源に、上司は苛立ちを募らせます。
ついに拘留期限は今日、というぎりぎりのタイミングになって、
と川合はいよいよユカリに詰め寄ります。
ところが源は、仰天することに、
と開き直ったようなことを言い出します。
どうせユカリは好きな男の犯罪についてなんてしゃべれない、事件のことなんか本人を落として訊き出せば良い、
とやさしく彼は言います。そして何を思ったか、川合に源は今日の日付を確認します。
それを聞いたユカリはいきなり顔をゆがめ、犯行の詳細を知る人物の名前を挙げ、全てを白状します。
その日はユカリの母親の誕生日だったのです。
私はこのエピソードは、最高にうまくいった顧客インタビューそのものだと思っています。
[出所] 泰三子 著, 「ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 2巻」, 講談社刊
事業開発の必須スキルナ〇パ
バルセロナに住む私の10年来の友人である、かつてRSAという世界最大のセキュリティ関連のイベントに毎年登壇していた、その分野の超エキスパートPete Herzog氏は、かつて私に向かってこう言いました。
このPUA(Pick-up Artist)こそ、日本語では
としか表現できない人物です。
このように海外では、いわゆるナ〇パのスキルは、頭の良い人物が身に付けているスキルとしてリスペクトされています。ニューヨークのバーなどでは、ナ〇パ行為が行われていない店を見つけるのがむしろ困難です。
そして考えれば、シリコンバレーがスタートアップの集積地として機能する最大の理由は、創業者たちが集まるカフェで、赤の他人同士、いろいろな情報交換をいきなり始めるという文化があるからです。これは決して偶然ではないと思います。
アメリカでモテない人が彼をゲットするまで指導するというナ〇パ師であるストラウスが執筆したナ〇パマニュアル “The Rules of the Game”の中には、あなたが非常識と感じるような練習が入っています。それは電話帳に載っている任意の家庭の固定電話にいきなり電話をかけ、出た赤の他人と会話するという練習です。
私はナ〇パを学び始めたとき、このマニュアルを読んでみたのですが、この記述にぶつかったとき、どこかで見た練習だと思いました。
すぐに思い当たりました。リーンスタートアップの基盤の1つである顧客開発メソッドのフレームワーク化に成功したスティーブ・ブランクの著作、いまだに私が事業開発の羅針盤として使用している
Steve Blank, “The Four Steps to the Epiphany: Successful Strategies for Products that Win”, Lulu Enterprises刊
の中に、そっくりそのままの表現が登場するのです。
それは、顧客になるかもしれない任意の企業に電話してみて、
と持ち掛けるという練習ものでした。いささか滑稽ですが、スティーブ・ブランク氏は、こう述懐します:
私は知らない人に電話するのが大の苦手だった。
すなわち、事業開発とナ〇パの間には切っても切れない関係があるということです。
日本でナ〇パがさげすまれる理由
しかし、ナ〇パを学び始めてすぐ私はこの行為が日本において著しく低く見られている理由に気づきました。
あるコミュニティで知り合った若者が、杖をついて歩いている若い女性に声をかけたといったので、即座に私はその人物をブロックしました。
こんな迷惑防止条例に真っ向から反する行為をするから、ナ〇パが日本で蔑視されるのです。
すぐに、私は事業開発における声掛けに直接インパクトがある、もう一つの原因を突き止めました。
私は当時勤務していた渋谷のストリートをウロウロしている、私と同じ世代のナ〇パ師をナ〇パするところから(めちゃくちゃですね…)ナ〇パを学び始めたのですが、当然のことながら、ほとんどのナ〇パ師にはつれなく断わられました。
ところがどういうわけか、ある人物が私のアプローチを受容してくれました。蓋を開けたらこの人物はネットでも非常に有名なナ〇パを教えている人物でした。
ぞっとするほどむさ苦しい光景ですが、初対面の2人のおっさん同士、カフェで話しました。
開口一番、彼は私のコーデをぶった切りました。
私は速攻で切り返しました。
その時まで私の話を仏頂面で聞いていた、そのナ〇パ師はこれを聞いてニヤリと笑いました。
彼に私は、1からコーデの作り方を教えてもらいました。
その結果、信じがたいほど状況が変わりました。
当時のオフィスにはたくさんの若い女性社員がいたのですが、どういうわけか、彼女たちと心理的プレッシャーなしに仲良くおしゃべりができるようになったのです。
この時初めて、女性の心の中では、おしゃれに気をつかわない男性とその女性との間に、三途の川のようなものが流れていることを知りました。日本のナ〇パ師が嫌われるのは、この基本の基がなっていないから最初から女性のout of 眼中になるのです。
人は見た目が9割という本があり、それはある心理学の実験の論文をろくろく読まずに曲解して書かれた書物ですが、要は同じ事です。
顧客インタビューに臨む時、特に女性が相手の場合は、まず最初の段階で服装に清潔感がなければインタビューアは
という恐ろしい実情を私は知ったのです。
ナ〇パを勉強して得られた成果
妻にちゃんと断りを入れ、初対面の女性とLINEを交換したら、それで成功カウントし、それ以上は女性と接触しないという基準で、私はこのナ〇パ師にスパルタ式にナ〇パを教わりました。
真夏の銀座で女性に声をかけまくっていたら、悲鳴をあげて、握られたことがあって、それは辛いという以上に、その女性に申し訳なくて、夜もよく眠れなかったことをよく覚えています。この場を借りてその女性には陳謝申し上げたい。
そういった苦労あって、私は初対面の人間に、いきなり話しかけることが苦も無くできるようになりました。
その暁には、画像解析を使ったプロジェクトの市場調査を有効に進めることができましたし、それから、同じ会社に勤めていたときに、上長からスマート保育園を作ってくれというミッションを与えられそのビジネスプランを引っ提げて60名以上の保育士さんにインタビューしまくり、結果をレポートにして上司に突き付けて、そのビジネスプランを企画段階で葬り去ることもできました。
まとめ
一連の話で私が申し上げたい裏テーマは、
ということです。決して綺麗事だけでは進めることができないということです。
明治政府の重要なポジションを占めたのが薩長だったというのは、決して偶然ではありません。薩摩藩は薩英戦争で、長州藩は下関戦争で、それぞれ列強と対峙して痛撃を受けています。彼らがこうしてオフィスの外に出たからこそ、やみくもなパワー攘夷が無効であるということ、列強の技術を逆に取り入れ幕府を倒してでもまずは日本全体をまとめる必要があるということを骨身にしみて悟ったのです。