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ライドシェアの事業の再生を行うには

斬新な新規事業「赤の他人が運転する車にピックアップしてもらって移動する」というサービスを始めた会社は?

さて、ここでいきなり問題です。

史上初、赤の他人が運転する車にピックアップしてもらって移動するというサービスを始めた会社は?
Uber、と答えたくなるじゃないですか。
ところが、Uberは、タクシー業の延長線上でビジネスを始めたのです。
正解は、
Lyft/リフト
です。
何、そんなの知らないって?
まあ、そうでしょうな(笑)
Y-combinator/Yコンビネーター出身で、ユニコーンから破格の時価総額を行った、フードデリバリーサービスの嚆矢
DOORDASH/ドアダッシュ

ですら、つい去年、仙台に入ってきたばかりですものね。

日本ではおろか、北米大陸以外のエリアで営業していない Lyft を知らないのも仕方ないです。

タクシー業の延長線上でビジネスを始めたUberの、前社長トラビス・カラニック氏は、
この Lyft 社に猛烈な敵愾心を持っていて、
よると触ると強烈に Lyft をつぶしにかかりました。
ポッドキャストで聞き拾った情報なんで嘘かほんとか知りませんけど、
なんでも、Lyft でたくさん「空ヘイル」自動車を呼ぶ嘘の発注を何度もやって、ハラスメントしたとか。
それくらいですから、Lyft が赤の他人が運転する車にピックアップしてもらって移動するというサービスを開始した直後に
全く同じサービスをランチしたわけです。

事業再生を語る前に:Lyft と Uber って同じ業種かしら?

アメリカのマスコミでは、この両者/両社、誠によく比較されます。

しかし管理人は

LyftとUberとは事業構想段階から決定的に違う

と思っています。

Lyft創業のビジョンは、

都市部の交通渋滞の根本原因は、一台1.x人しか乗車していない非常に疎な乗車率にある

という問題の解消。

UberCar(創業者がUberを起業したときの社名)のビジョンは、創業者がブラックカーの価値が意外に知られていないところに着眼して

ブラックカーをタクシー業界の仕組みを根本的にかえて使い倒す

というもの。

史上初打ち出したのはLyftであり、Uberはそれに追随したのは上に書きました。

Lyftが運ぶのは人であり、エリアもアメリカとカナダの数都市に集中しています。

一方でUberは、同社の立役者のカラニックが雇われCEOとして後から参加したということがあり、

できあがったプラットフォームを、どのように多角化して使い倒していくか?

というところにずっと力点を置いてきました。

その証拠の一つが、成功して、スピンアウトした

Uber Freight

です。

運送業を支えるプラットフォームですね。

事業再生の方向性を探るために:Lyft と Uber の比較

両社が焦点においているKPIも相違しており、

Lyft は売上/乗客を、Uberはプラットフォームの使用率の伸びを重要視しています。

また、プラットフォーム戦略も異なっており、

LyftがAWSオンリーで運用しているのに対して、
Uberは古典的なクラウドオンプレのハイブリッドであり、複数のクラウドを併用

しているようです(出典:ZDNet)。

COVID-19の悪影響もあって、今回のLyftの第二四半期の業績は、

Uberよりも先に収益化のめどが立った

と「勝報」として報じられているのですが、

国の財政で言うなら、

プライマリーバランスははるか先だが、今年度はぎりぎり赤字国債は発行しなかった

程度ではないかと思います。

下記に、LyftとUberのFCFが2016年—2020年の分、あります。

Lyft: https://www.macrotrends.net/stocks/charts/LYFT/lyft/free-cash-flow
Uber: https://www.macrotrends.net/stocks/charts/UBER/uber-technologies/free-cash-flow

2020年度、Lyftは$-1,442Bの最大のショート、
Uberは、2019年度から持ち直したとはいえ、$-3.358Bものショート

です。

膨大なOPEXのせいでキャッシュ面でいつも火の車である航空業のJALの2020年のFCFですら

総額で-1,916億円

だったことを鑑みるに、途方もない赤字ですね。

では、彼らはどこにお金を使っているのでしょうか?

LyftはARPUを高めるため、

例えばLyftの車をライダーが瞬時に識別するための機器を大量生産→配布したり、といったところに、

Uberはその大胆だが急激すぎる多角化のために、

多額のキャッシュをCAPEXとして使い続けてきているということのようです。

そして、使いまくってきたのに、その額が一向に減らない。

事業拡大のための買収には銀行からの借金を用い、
先が見通しにくい自社の新規事業R&Dには、自らの豊富なCFCからリスクマネーをあてがう

といった、熟慮された投資戦略を展開してきた Amazon.com とは、決定的にここが違う。

(ベゾス氏のいわゆる

RoR/Return on Risk
の考え方に関しては、この記事で触れました。)

モルガンスタンレーを含めた

Uber EatsがCOVID-19下で好調だからUberには期待できる

といった見方を、したがって管理人は、あまりに単純すぎると考えます。

そういえば、Uberは先日、自動運転で事実上 Tesla に白幡を掲げていましたね。

莫大な投資が無駄になっていると思います。

Lyftは、

現在の事業が、COVID-19以降の世界でも果たしてサステイナブルか?

という根本問題にもう一度立ち返り、もっと儲かる形へのサービスの深化を狙うか、

もしくは、DOORDASHがまずは仙台のみに参入してきたように、

英語圏の特定の市場でUberの評判の悪い地域に、

Lyft Business

を差し込んでみるといった実験をしてみて事業拡大を狙うべきだと、管理人は思います。

一方でUberは、散財に近い投資を控え、

まずは自社内を再整理、カットできるコストをすべて削ってスリム化に力点を置くべきでしょう。

(Lyftという会社、日本ではびっくりするほど知られていないですし、

Uberもその実態が実はあまり把握されていないので、おいおいこの記事には追記をしていきます。)