イノベーションとは?その事例やそれを起こすための手法

イノベーションとは?その事例やそれを起こすための手法

イノベーションとは

イノベーションとは、革新的なビジネスモデルの中の要素あるいはビジネスモデルそのものにより、

今までは全く市場に存在しなかったような新しい顧客価値を創造することを指します。

オーストラリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターにより、イノベーションは、

新結合

という言葉として、著書の中で定義されました。

シュンペーター経済発展の理論

「新しい結合(イノベーション)の「新しい」 とは「新種」を意味する。
(中略)経済の静態的な状態(既存事業による製品/サービスが社会に提供されている状態)で
通常作られていないものが作られることである」

ググってでてくるほかの記事では

この後にシュンペーターによるイノベーションのタイプが説明されることが多いようなのですが、

当記事ではこの記事で説明した、より現代での実践に即した

クリステンセン教授によるイノベーションのタイプを以下に挙げておきます。

  1. ポテンシャル・プロダクト/potential products
  2. 持続的イノベーション/sustaining innovation
  3. 破壊的イノベーション/ディスラプション/disruption
    ローエンド破壊型
    新市場創出型
  4. 効率性イノベーション/efficiency innovation

 

プロダクトイノベーション
/ビジネスプロセスイノベーションとは

一般に

プロダクトイノベーション

と呼ばれるものは、クリステンセン教授による上記の分類のうち、

①-③を指します。逆に、

ビジネスプロセスイノベーション

といったら、一般には④を指します。

プロセスイノベーションは提供する商品・サービス自体は変わりませんが、

プロダクトイノベーションの場合はシュンペーターのいう

経済の静態的な状態で通常作られていないもの

が創出されるという相違があります。

そしてこのブログが、プロダクトか/プロセスか というこの単純な分類をとらず、

クリステンセン教授のそれに依拠する理由は、この単純な部類だと、

顧客価値を全く生み出さない事例もイノベーションと呼ぶことができるから

です。

プロダクトイノベーションの事例

いわゆるプロダクトイノベーションとやらによって生み出された製品を解説して、

「プロダクトイノベーション」という言葉自体の持つ

不毛さ、無効性を、例によって意地悪く指摘していきます。

ここでは、「どこでもつながる携帯電話」「全く新しい移動手段」という、

アイデア誕生時は少なくても社会的に巨大な大きな影響を与えると持ち上げられた

プロダクトイノベーションの成功事例(???)をご紹介します。

衛星電話イリジウム

1990年代のアメリカでは、大都市においても、都心から少しでも離れると、

たちまち繋がらなくなる悲惨な状態を呈していました。

若い人には想像しにくいでしょうが、ちょうど自動改札の企画が持ち上がり、

無数にあるJRのすべての駅の改札がこれに置き換わるなど夢物語だ、

と思われていた当時にそっくりの状況で、広大なアメリカ大陸全土に

携帯電話基地局を配置していくなど何人にも不可能と思われていました。

そんなときに、画期的な衛星通信技術で携帯をつなげようとしたのが

モトローラ社の新規事業「イリジウム」でした。

モトローラは10年の歳月と途方もない投資をかけて技術的には完璧な

プロダクトイノベーション

を生み出しました。

66個の衛星が、あなたがアラスカにいようが南極をそりで走っていようが、

鉄壁の着信と人間の耳には聞き取れない圧倒的低遅延を実現したのです。

しかしこの衛星携帯電話は全く売れず、

アメリカ経済史上三位のチャプター11を申請して破産します

セグウェイ

2004年にセグウェイが世に出たとき、

人間の移動手段の革命だ

と全米はおろか世界中で大騒ぎになりました。

スティーブ・ジョブズ氏は「パソコン並みに重要な発明」と絶賛、

Appleを造ったもう一人のスティーブ、

スティーブ・ウォズニアック氏は、多数のセグウェイを買って

友人たちとポロに興じました。

世界中でセグウェイは、誕生時は全く新しいプロダクト、画期的な

プロダクトイノベーション

とされました。

しかし、こうしたイノベーターたちの熱狂ぶりをさしおいて、

セグウェイは、実際には全く売れませんでした。

2006年に、セグウェイCEO ディーン・カーメン氏が事業としての失敗を語っています。

「これまでなかった市場の成長は、ある程度緩やかなカーブを描いて需要が拡大します。
そして、ある一定の点に到達してから飛躍的に普及し始めるのが一般的です。
この市場の特性を創業者たちが十分に理解していなかったところに、
予想と現実の乖離が生じたのだと思います。」

プロダクトイノベーションという概念の弊害

ここまでの説明で、

プロダクトイノベーション

がクリステンセン教授の分類①、②、③のいずれにも属さないことがありうる

ことに気づかれたかと思います。それはなぜでしょうか?

新しいものを出せば儲かるという錯覚

プロダクトイノベーションには、定義的に、

とにかく新しいものを出せばそれでイノベーションたりえる

という、一見滑稽ですが、

結果は致命的すぎて企業の衰退に直結する誤解がついてまわります。

管理人はよく

こんな全く新しいものを発明してしまったのですが、
どのようなビジネスをこれで起こせばいいでしょうか?

と、話が本末転倒した相談を承ります。

Yコンビネーターはこれを

Solution In Search of a Problem 解決すべき問題を探し回る解決策

と呼んで、タブーの一つにしています。

技術的にはすごいイノベーションを起こしておいて、

事業は無残に失敗するパターンはここからきます。

イノベーションを起こすことが目的化する

まずい、競合他社が同じ事業領域でイノベーションを起こしちゃったから
うちらもおこさなきゃ(そわそわ)

というのが、イノベーションをまず間違いなく起こせない

必敗パターン

です。

イーロン・マスク氏はイノベーションを起こそうと思ってRordsterを造ったわけでも、

他社がEVで成功したからテスラに最初の投資をつけたわけでもありません。

自分の大きなビジョンを実現する上で、イノベーションを起こし続けただけなのです。

イノベーションを起こすためのアプローチ手法

どうすればイノベーションを起こせるのか?という問いに応えるため、

世の中に流布しているアプローチを3つのカテゴリに分けて検証していきましょう。

シーズ先行型

シーズ先行型とは、ディープテックなどでよく俎上に上る、

今までにない高度な技術で全く新しい製品を開発することで

プロダクトイノベーションを起こそうとする手法で、

上でさんざん批判した通り、成果が目に見えて分かりやすいため、

儲かっても儲からなくてもとにかく投資を付けてもらってモノを先に造ってしまい、

後になって売れないためうろたえ、

営業に責任を転嫁することで事業開発者が責任逃れをすることになりかねない

最もやってはいけない型です。

ニーズ先行型

ニーズ先行型とは、

顧客ニーズ・市場ニーズから遡り製品開発を行ってイノベーションを起こ

そうとすることだそうですが、

顧客が持つニーズをつかみ取る方法が
誰にでもどんな場合でも可能な形にまで一般化されていない

ため、商品開発を行おうとしても、事業開発者は立ち往生することになります。

この記事でとりあげたIKEA社の事例は

ニーズ先行型プロダクトイノベーション

とやらではむろんなく、

IKEAが顧客の特定のジョブの推進を助けることに徹底的にこだわった結果生じた、

一人勝ちの成功事例です。

これらのジョブ理論の記事で取り上げた通り、

ジョブでなくニーズに着眼しているうちは、

この種のイノベーションも、システマティックに起こすことはまず不可能です。

すなわち「やりたいけどできない型」とでもいうべき型です。

類似品型

類似品型とは、他社がすでに世に出している製品のコンセプトをコピーしようとする型です。

ここで留意すべき最大のポイントは、

この型は、シュンペーターによるイノベーションの定義にもとっている

ということです。

なぜなら、

コピーしようと思う製品がある時点で、そのコンセプトは真新しいとはいえない

からです。

にもかかわらず日本においては、

このタイプの「イノベーション」の型が最も人気があります。

なぜかというと、すでにあるアイデアの調査を行うことによって、

全く新しい事業アイデアのねん出のため苦労しなくて済むからです。

しかし残念ながら、アイディエーション段階の知的怠慢はのちのちまでたたります。

理由は簡単で、市場に大成功例のあるケースで

二匹目のどじょうが大魚であることは、全くといっていいほどないからです。

しかし歴史上には、この型で画期的イノベーションを

起こした事例が少ないけれど存在します。

ある条件を満たせば、それはイノベーティブ足り得るからです。

その条件とは:

  1. 同種の製品の中に、いまだ大きな市場を独占/寡占している成功例がない
  2. 自社の技術で既存の製品の長所を10倍以上ぶっちぎれる可能性が高い

皆さんは、Googleでサーチをかけると必ず出てくる検索に要した時間、

あれを見て、

どうしてこんな数値をGoogleはわざわざ表示するのか?

といぶかしく思ったことはないでしょうか?

あれはGoogle創業時に市場に存在した検索エンジンのライバルたち、

AltaVistaやExciteのような競合他社製品に比べて、

どうですかGoogleのURLをベースにしたアルゴリズムは、超早いでしょ?

とアピールするための仕掛けの名残なのです。

おわりに

イノベーションを起こすのは難しいが、この方法なら起こせないことはない

と議論することは、本末転倒した不毛な議論です。

本来は、企業がビジョンに向かって邁進しながら

新規事業が顧客価値を最大化してProduct/Market Fitを達成するときに、

何らかの形でイノベーションを必然的に絡んでくる、という順番ではないでしょうか?

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