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【新規事業開発のDONT’s】顧客の潜在ニーズなど、探しに行くな 2.

 

「4 分の 1 インチ電動ドリル」 を使って顧客の片づけたいジョブ

経営学の偉い先生が、ニーズとウォンツの相違について説明する講義を聞いたことがあります。

ハーバードビジネスレビュー誌に寄稿した論文“Marketing Myopia”/マーケティングマイオピア

いまだにマーケティング理論のバイブルとして称揚されている、レヴィット教授の言葉として有名な、

4 分の 1 インチ電動ドリル

の譬えで、以下のように解説くださいました。

 

事象英語のカテゴリ日本語のカテゴリ説明※
ヒルティ製4分の1インチ電動ドリルGood(s)物品ただのモノ
電動ドリルWants / Productウォンツ/プロダクト顧客の捉え方で変化する、ニーズを
満たすための特定のプロダクト
Needs(潜在)ニーズ本当に顧客が欲しいもの
生き残るために必要な大事なもの
ウォンツとニーズの違い

※に関しては、下記の記事も参考にしています。
Needs, Wants, and Demands: The three basic concepts in marketing (with Examples)

しかし、ニーズの説明、これは上掲のサイトの説明

The essential things for us to survive

を翻訳してみたのですが、なんかこう、情念がドロドロしていて、

家族を皆殺しにして、唯一の生き残り根津子も鬼にしてしまった
鬼舞辻無惨、地の果てまでもおいかけて倒してやる!

的な、鬼気迫る迫力がありませんか。

しかしね、確かに私の名前もウ冠の富岡ですけどね、

ニーズの呼吸

とか使ってすごまれても、

現実には役に立たない

のですよ……。

上掲の表には、もちろん、大きな欠損があるからです。

 

事象英語のカテゴリ日本語のカテゴリ説明
ヒルティ製4分の1インチ電動ドリルGood(s)物品ただのモノ
電動ドリルWants / Productウォンツ/プロダクト顧客の捉え方で変化する、ニーズを
満たすための特定のプロダクト
Needs(潜在)ニーズ本当に顧客が欲しいもの
生き残るために必要な大事なもの
DIYで犬小屋を造るjob to be doneジョブ顧客が片づけるべき用事
ウォンツとニーズとジョブの違い

犬小屋を造るときには大げさすぎるでしょうが、木工継手を使えば、簡単に板の接合はできます。

IT media news 木材の「ほぞ組み継手」を自動設計 東大「Tsugite」開発

で、こんなことを顧客がしてしまえば、そもそも、ビスもネジも、釘すらもいらないので、

穴をあける必要がなくなる

のは言うまでもないことです。

コリコ町の町長さんのジョブ/His job to be done

宮崎駿監督作品「魔女宅」には、原作があることをご存じですが。

角野栄子氏の描写は、とても簡単な表現で構成されているのにビビッドで、

宮崎監督がほれ込んだのもむべなるかなです。特に比喩がとてもうまい。

この第1巻の後半のお話は、映画と大きく異なります。

キキが魔法の能力を失って悪戦苦闘する、映画が最も盛り上がるくだりは出てきません。

原作1巻目の白眉は、以下のシーンでしょう。

独り立ちして住み着いたコリコの町で、キキは年の瀬を迎えます。

この町では長く続いてきた慣習として、

元旦0:00を町の大時計が知らせた瞬間に、街路に出て準備していた町民の皆さんがマラソンを走り始める

という、習慣があります。

よりによって、12月31日になって、肝心の大時計が壊れたことに町長は気づきます。

自分の代で、長く続いてきた、この伝統の習慣を中断させるわけにはいかない。

町の時計屋を呼んで、修理させようとしますが、

で、でも……替えの歯車が……(この町のどこにも)な、なかったんでした

さあ、大変です。

町長さんは、街で最近話題の魔女の宅急便屋さんを呼び、

シークレットミッション

を課そうとします。

すなわち、大きな声では言えませんが、隣町の同型の大時計から、肝心の歯車を大晦日だけ

しっけい

してきてほしいというわけです。

町民が走り始めたら、すぐに返しに行けばよろしい。

キキは頭がよく、すぐに、ジョブベースの代替策を2つ提出します。

キキ「鐘だけならせばいいんじゃないの?」
× 時計屋「針が12時のところに来ないと鳴らない構造なんです、すみません」

キキ「12時になったら、町長さんが『よーいドン』って手をたたけば?」
× 町長「長い間の習慣というのはそう簡単に変えていいものではない」

 

事象英語のカテゴリ日本語のカテゴリ説明
大時計の歯車Good(s)物品ただのモノ
大時計の修理Wants / Productウォンツ/プロダクト顧客の捉え方で変化する、ニーズを
満たすための特定のプロダクト
長い間の町の習慣の維持Needs(潜在)ニーズ本当に顧客が欲しいもの
生き残るために必要な大事なもの
町民が一斉に走り出す
きっかけを与える
job to be doneジョブ顧客が片づけるべき用事
ウォンツとニーズとジョブの違い
(しょうがない人)

キキはむっと口をつぐみます。

全くもって、「しょうがない人」です、この町長。

日本の大企業にも珍しくないですね。

「大時計を修理すること」=「プロダクトを出すこと」

をいつの間にか目的化してしまい、

みたいなね。

キキは結局どうしたと皆さん思いますか?

大晦日も大詰めを迎えた時刻に、ほうきにまたがったキキは、

何を思ったか街はずれまで一気に行き、すばやく回れ右をするやいなや、

時計台に突進していって、長い針をぐっと両手でつかむと、

勢いに乗って文字盤の周りを回り始め、

瞬く間に、二つの針を12時のところで重ね合わせたのです。

ぼん、ぼん、ぼん

町全体に足音を響かせて、マラソンが始まりました!

お見事、ジョブ理論の勝利(?)ですね。

ここでポイントは、

要するに「町民が一斉に走り出すきっかけを与え」るというだけの単純なジョブを遂行したい

のだと、ジョブベースで考えたから、キキは速やかに解決策をしかも複数編み出せたが、

長い間の町の習慣の維持とかいう、漠然とした「ニーズ」

では(これは顕在ニーズといっていいでしょう、キキが会話で顧客である町長から引き出したわけですから)、

何をどうしたらいいのか思いつくのがめっちゃムズくね?

ということです。

さてさて、潜在ニーズに対する批判は、今度は実務レベルで続きます。

顧客の潜在ニーズなど、探しに行くな 3.